1stコーポ Research Memo(3):21年5月期は増益確保を見込む

2021年2月12日 15:13

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記事提供元:フィスコ


*15:13JST 1stコーポ Research Memo(3):21年5月期は増益確保を見込む
■ファーストコーポレーション<1430>の業績動向

2021年1月8日に発表した2021年5月期上期の決算は、売上高が前年同期比13.2%増の7,670百万円、営業利益が同11.9%増の250百万円、経常利益は同0.7%増の224百万円、四半期純利益は同1.7%増の147百万円と増収増益となった。

売上高の伸び率に対して営業利益の伸び率がやや低くなったのは、着工時期のずれなどによって完成工事総利益率が前年同期の10.9%から10.2%に低下したほか、共同事業が大幅に減少したことが要因として挙げられる。特に共同事業は、販売を促進するモデルルームがコロナ禍のため機能が低下。2020年4月の第1回の緊急事態宣言発出により停止した後、10−11月に一時的に回復したものの、12月以降は購入予定者の出足が止まっているという。これが響いている。

第1回の時のような外出自粛制限こそないものの、2021年1月に発出した第2回の緊急事態宣言の影響は現時点ではどうなるか見通せない状況である。モデルルームを活用した商談が営業の基本となるほか、この機能低下は販売広告の打ち直しなどコストアップにつながってくるだけに、コロナ禍による人の動きの変化について注視したいところだ。

経常利益率が営業利益率に比べて低くなった理由は、有利子負債の増加による金利負担増が挙げられる。上半期末の短期借入金は前期末の3,200百万円から3,800百万円に、長期借入金は3,335百万円から4,495百万円にそれぞれ増加した。ただ、これは財務体質が悪化したわけではなく、不動産取得資金を一時的に調達したためで、決済資金の入金とともに圧縮する見込み。そのため、今期末には短期借入金はゼロに、長期借入金は4,005百万円まで減る予定で、金利負担は一時的なものとなる。

この結果、自己資本比率は、2020年5月期末の33.9%から2021年5月期上期末は28.9%まで低下するものの、2021年5月期末には40.5%まで改善する見通しだ。

一方、事業を遂行するうえで肝となる用地の確保は、依然として厳しい環境が続いている状況だ。マンション市況全般を見てもわかるように、利便性が高い好立地の案件に関しては取得競争が激しい。今後も、あくまで採算を無視して取得することはしないとしている。

東京オリンピック・パラリンピック特需と言われていた2~3年前まで、ホテルとの用地確保における競争において、ホテル業界が提示する利回り等の条件で、どうしてもマンションは優位に立てず、良質な用地がホテル建設にさらわれる状況が続いていた。こうした厳しい状況は一巡しながらも、都心部はこれまでと変わらず、郊外においてはテレワーク化も背景に好立地案件についての取得競争が激化しそうな状況で、今後も行方が注目される。

受注については、2021年5月期の計画は9件としているものの、上期の段階で既に6件を確保した。上期の受注額は13,357百万円で、うち、造注方式での受注額は1,926百万円。通期の受注計画は21,700百万円、うち造注方式によるものは8,000百万円を想定している。下半期で2件の造注方式の受注で6,000百万円ほど確定しているため、年間受注計画は達成できる見込みだ。

なお、収益をけん引する役割を果たす完成工事における造注方式の割合は、前期末が13.1%にとどまったのに対し、2021年5月期上期には14.4%に上昇している。2021年5月期末には36.9%までの上昇が想定され、収益力のアップにつながりそうだ。

2021年5月期の見通しについては、売上高が前期比9.9%減の21,100百万円、営業利益が同11.7%増の1,500百万円、経常利益が同9.5%増の1,420百万円、当期純利益は同9.5%増の955百万円と減収増益を見込んでいる。売上高の減少は、前期に不動産販売の大型案件があったことによる反動減が大きな理由だ。

コロナ禍による影響が懸念視されながらも、販売面においては引き続き好調に推移する見込みとなっている。さらには、造注方式による完成工事が増えることにより、利益率が改善する。さらに、課題になっていた群馬県前橋市の再開発案件が今期から稼働することも収益改善要因になりそうだ。

売上総利益は2,710百万円(前期比10.1%増)を予想。この結果、売上高総利益率は前期の10.5%から12.8%に、売上高営業利益率は5.7%から7.1%にそれぞれ改善が見込まれている。

受注高は21,700百万円(前期比51.5%増)を想定。これは前期に予定していた大型案件のずれ込みを含むため、決して無理な数字ではない。前述したように造注方式による受注を8,000百万円と想定しており、前期の4.3倍となる。受注高に占める割合は36.9%と急速に改善し、将来の利益率の向上につながりそうだ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 水野文也)《ST》

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