深海でセメントはどのように劣化するか 世界初の論文発表 宇部興産ら

2021年1月22日 08:22

小

中

大

印刷

深海底での試験体の暴露試験の様子(画像: 宇部興産・海洋研究開発機構)

深海底での試験体の暴露試験の様子(画像: 宇部興産・海洋研究開発機構)[写真拡大]

写真の拡大

 深海は人類最後のフロンティアとも呼ばれており、様々な海洋資源の発見や開発が進められている。将来的には深海における建設が必要になってくるが、深海は水圧が非常に高く材料の激しい劣化が発生することが予想されてきた。宇部興産と港湾空港技術研究所の共同研究グループは20日、セメント系材料の活用に向けて、深海における劣化機構の調査を実施し、その研究成果を世界で初めて国際学術誌に公開すると発表した。

【こちらも】小笠原海溝の底の超深海水を成分分析、JAMSTECが新鋭船「かいめい」で

 深海中は大気圧のおよそ数百倍となる水圧がかかり、さらには海水中のイオンによる腐食も起こる非常に過酷な環境である。そのような環境でセメントがどのように変化するかを把握することが今回の研究の目的である。

 2015年12月にセメントモルタル試験体を海底1680メートルに設置し、608日後の2017年5月に試験体を回収。設置環境は水圧が約17メガパスカル、水温が約4度と非常に過酷な環境であった。

 回収された試験体の表層部は激しく変化しており、手で触ると剥がれ落ちるほど強度が低下していた。著しい強度の低下は圧縮強さ試験によっても確認された。

 化学的な分析を行ったところ、セメントモルタルの主成分であるカルシウムが、通常では考えられないほど激しく溶出していることが判明。また、海水に由来すると思われる炭酸イオンや硫酸イオン、マグネシウムイオンなどの成分も検出された。

 つまり、海水中の成分が試験体に浸入して脆弱な水和物を形成したことで、強度の低下がもたらされたと考えられる。ただし高水圧の影響については明らかでない部分もあり、さらに詳しい検証が行われる予定である。

 今回の研究成果を皮切りとして、深海中でのセメント系材料の応用に向けた研究開発が進むことが期待される。材料設計や施工方法、構造物の設計など課題や山積している状況であるため、国内外の様々な研究機関が連携して技術確立を進めていく必要がある。特に日本は海洋資源が豊富であることから、技術開発が進めばより資源の有効利用が可能になる。

 今回の研究の成果は、科学誌「Cement and Concrete Research」に15日付で掲載されている。

関連記事

広告