デジタル人民元のテスト運用

2020年12月8日 13:24

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記事提供元:フィスコ


*13:24JST デジタル人民元のテスト運用
 

中国メディアSouth China Morning Postが報じたところによると、中国・蘇州市で、デジタル人民元(DCEP:Digital Currency Electronic Payment)の大規模テストが行われるという。深セン市に続く第二弾の試みとなり、深セン市での実験と同様に、抽選で選ばれた住民にデジタル人民元が配布される形になるようだ。

2020年10月、深セン市がデジタル人民元のテスト運用として、合計1,000万元(約1.5億円)に相当するデジタル人民元を配布した。デジタル人民元は深セン市内の決められた地域の商店や飲食店など約3400の店舗で利用することが出来たが、他人に譲渡したり、自分の銀行口座に振り込んだりすることはできない仕様であった。蘇州市の実験では、深セン市で使われていなかった新機能「DCEPウォレットのオフライン支払い機能」が有効になる。この機能は、近距離無線通信(NFC)を活用することによって、インターネットへの接続がなくても、スマートフォンなど2つの決済デバイスを相互にタッチするだけで取引を行うことを可能にするものである。

◆テスト運用の流れ
テスト運用は、深セン市と中国人民銀行が連携して行われたものであり、抽選で5万人を選び、一人あたり200元(日本円で約3,100円)を配布した。抽選申し込みには、政府のブロックチェーンアプリ「iShenzhen」に登録した市民であることが条件となる。当選者は専用アプリからe-ウォレットを開設し、デジタル人民元を受け取った。深セン市の発表によると、当選者の約95%にあたる47,573人がデジタル人民元を受け取り、合計62,788回の取引を行い、880万元(約1億4,000万円)を使用したとのことである。

デジタル人民元の配布は、日本でも馴染みのある「お年玉袋」に入って渡されるUI/UXになっている。中国ではクーポンなどがこのような意匠で表現されることが多いようである。また、「デジタル人民元」アプリは、背景のデザイン感を除けば、日本でも普及したQRコード決済のスマホアプリに近い。中国は、もともとQRコード決済が普及していることから、操作は同様のものと思われる。

◆デジタル人民元の受け取り方法
まず、デジタル人民元アプリを起動して、登録画面に入り、抽選に使った携帯番号を入力し、暗証番号を設定する。次の画面で「お年玉」200元(約3,100円)が表示され、「お年玉を受け取る」ボタンをクリックして、○○銀行デジタル人民元ウォレットを開設する。抽選に使った携帯番号と検証コードを入力し、支払いの暗証番号、個人ウォレットの名称を設定する。個人ウォレット登録完了後、「お年玉」をもらうことができる。すでに登録済み、そして銀行も設定済みのアカウントには、「お年玉」は自動的に配布される仕組みとなっている。

◆デジタル人民元の使い方
ユーザースキャンの場合、ユーザーはデジタル人民元アプリを起動して、個人デジタル人民元ウォレットをクリック、右上のスキャンボタンをクリックして、店舗の受け取りQRコードをスキャンして支払いをする。

店舗スキャンの場合、ユーザーはデジタル人民元アプリを起動して、個人デジタル人民元ウォレットをクリックして、「支払い」をクリックする。QRコードをはじめて使う際に、Small dense-free payment(パスワード不要の少額取引)を設定するが、Small dense-free paymentをONにする場合は、パスワード入力は不要でQRコードを使うことができる。Small dense-free paymentをOFFにする場合は、利用する都度パスワードを入力してQRコードを使う必要がある。

株式会社CAICA 孫 厳、鈴木伸
株式会社フィスコ 白幡玲美《RS》

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