C&R社 Research Memo(3):クリエイティブ分野と医療分野で利益の大半を稼ぎ出す

2020年11月10日 15:03

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記事提供元:フィスコ


*15:03JST C&R社 Research Memo(3):クリエイティブ分野と医療分野で利益の大半を稼ぎ出す
■クリーク・アンド・リバー社<4763>の会社概要

3. 事業別・分野別構成比
2021年2月期第2四半期累計の事業別売上構成比は、プロデュース事業が33%、エージェンシー事業(派遣)が44%、エージェンシー事業(紹介)が15%、ライツマネジメント事業他が8%となっている。一方、売上総利益の構成比を見ると、エージェンシー事業(紹介)が39%と最も高く、次いでエージェンシー事業(派遣)が28%、プロデュース事業が24%、ライツマネジメント事業他が9%となっている。

また、分野別の売上構成比は、ゲームが23.5%、Webが18.4%、テレビ・映像が16.5%と主力3分野で全体の6割弱を占めており、次いで医療が12.4%、韓国事業が9.0%、電子書籍・版権が6.5%、会計が4.7%となっている。一方、分野別の営業利益構成比では、医療が45.8%と最も高く、次いでゲームが38.8%、Webが18.0%、テレビ・映像が12.4%となり、これら収益化事業で新規事業の先行投資を吸収する構造となっている。なお、医療分野については例年、春に医師の異動が多いことや、医学生・研修医向けに開催される「レジナビフェア」も第2四半期までに多く開催されることから、上期偏重型の収益構造になっており、通期で見ると営業利益の構成比は2018年2月期以降、30%台で推移している。


29.2万人超のプロフェッショナル人材ネットワークを構築し、3.8万社の顧客にサービス提供
4. 特徴と強み
同社の事業の特徴はプロフェッショナル分野に特化した請負・アウトソーシング、派遣・紹介サービスやライツマネジメント事業を展開していることにあり、一般的な人材サービス会社とは異なると弊社では考えている。

(1) プロフェッショナル分野を対象に事業を展開
同社が定義するプロフェッショナルとは、1)世界中で活躍できる職種、2)機械では代替できない職種、3)知的財産が蓄積される職種、の3条件を満たすものとなる。これら3条件を当てはめて展開しているのが、テレビ・映像、ゲーム、Web、出版等のクリエイティブ分野のほか医療、IT、法曹、会計、建築、ファッション、シェフ、研究(現コンピュータサイエンス)、舞台芸術、アスリート、CXO等の合計17分野となる。業績の安定性という観点から見ると、幅広いプロフェッショナル分野を事業対象にしているため、景気下降局面でも比較的悪影響を受けにくい収益構造になっていることが特徴と言える。

(2) 制作スタジオの設置によりグループ内にノウハウを蓄積
サービス提供によって人にノウハウが蓄積されていくだけでなく、そのノウハウを組織全体で共有化しながら深掘りし、他分野へ展開していくことで、クライアント企業に対してより良い提案やサービスの向上につなげている。具体的には、顧客企業で仕事を完了したプロフェッショナルが、就業先でのニーズなどを共有し、他の顧客企業から戻ってきたプロフェッショナルと次の企画提案を共同で練り、新規受注案件の獲得に生かしている。プロフェッショナルの思考の幅が広がり、1社だけの経験では得られないノウハウを蓄積、付加価値の高い提案が可能となり、競合他社との差別化要因となる。この好循環の仕組みによって、テレビやゲーム業界で多数のクライアント企業を獲得しているほか、ここ最近ではWeb制作においても官公庁等から大型案件を受注するケースが増えている。

主力のクリエイティブ分野では、東京(テレビ、ゲーム、Web、VR、YouTube)、名古屋(アミューズメント)、大阪(ゲーム)にスタジオを保有しており、合計約800名の体制で各業務に従事し、こうしたノウハウの蓄積・共有の場ともなっている。

(3) 大きなネットワーク
同社に登録しているプロフェッショナル人材のネットワークは、2020年4月時点で29.2万人に達している。主力のクリエイティブ分野では、クリエイター8.5万人、顧客数で1.5万社のネットワークを構築している。このうちテレビ分野では、同社ネットワークに参加するクリエイターが関与する番組が、全テレビ番組の45%を占めるなど圧倒的な存在感を示している。またゲーム分野では、自社開発タイトルの制作・運用のほか、大手プラットフォーム企業やパブリッシャー、中国企業等との共同開発案件も多数手掛けている。

医療分野では、国内の勤務医(研修医含む)約23万人のうち過半を占める約12.4万人が同社サービス(医師向け転職情報サイト「MediGate」、医学生・研修医向けの臨床研修支援サービス「レジナビ」等)に登録しており、顧客となる医療施設数は1.3万施設となっている。同社では医学生・研修医のための「レジナビフェア」(臨床研修指定病院合同説明会)を全国規模で開催しており、その際に医学生・研修医が「レジナビ」に登録するため、登録会員獲得のための広告宣伝費を抑制することができ、同事業の利益率の高さの一因にもつながっている。また、勤務医については平均3年で転職することから、毎年一定の需要が見込まれ収益の安定性も高い。

その他の分野についても、年々、人材ネットワークが拡大しており、IT分野ではSEを中心に4.2千人、法曹分野では弁護士や法務・知財部員等で1.32万人、会計分野では公認会計士・税理士他で4.8万人が同社ネットワークに登録している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)《NB》

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