タイヤメーカーが相次いで発売するオールシーズンタイヤは雪道で安全なのか

2020年10月29日 17:53

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 雪道や凍結路を安全に走行するためには、スタッドレスタイヤは必須だが、最近はオールシーズンタイヤを各タイヤメーカーが発売して注目を集めている。高速道路の冬用タイヤ規制にも、対応しているオールシーズンタイヤであれば走行可能なため、スタッドレスタイヤをわざわざ用意しなくても済むという手軽さが人気の秘密のようだ。

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 オールシーズンタイヤで雪道走行ができるかどうかは、タイヤサイドにM+S(マッドアンドスノー)表示があるかどうかで判断する。この表示は、欧州では冬用タイヤと認められた証であり、国内でもこの表示が付いていなければ冬用タイヤとしては認められない。

 実際に、M+Sマークのあるオールシーズンタイヤがどの程度の雪道性能があるのかというと、薄っすら降り積もった雪であれば、普通のドライバーは問題ないといえる。だがこれが圧雪路や新雪の道路、そして凍結路となれば話は変わってくる。

 もともと、スタッドレスタイヤが雪道でグリップするのは、柔らかくそして細かく刻まれたタイヤサイプが雪を掴み、グリップしているからだ。だがオールシーズンタイヤには、この柔らかいタイヤサイプが無い。ただ、氷点下でも固くなりにくいコンパウンドを使用しているため、寒い冬の道路でも夏タイヤより柔軟にコンパウンドが動いてグリップできるというわけだ。

 そのため、雪深い道路でのグリップ性能は、スタッドレスよりかなり悪くなり、細心の注意を払いながら運転しなければ信号機や止まれの標識の手前で停車できない恐れもある。

 この運転感覚は、かつてスタッドレスタイヤが世の中に出始めたころの性能に似ている。1991年以降、スパイクタイヤの販売が無くなり、冬用タイヤはスタッドレスタイヤに切り替わったが、当時は、スパイクの無いタイヤで本当に雪道やアイスバーンなど走行できるのか疑心暗鬼になる人が続出していた。

 その疑心暗鬼が功を奏してか、スタッドレスタイヤ装着では誰もが慎重に運転を心がけていたことを覚えている人もいるだろう。

 この当時のスタッドレスタイヤの慎重な運転ができるのであれば、オールシーズンタイヤは雪道でも使用することができる。だが最近のクルマの性能向上も手伝って、オールシーズンタイヤでの雪道走行を、乾いた路面と同じ感覚でいると、取り返しがつかないことになりうる。

 タイヤを履き替える手間が省けて便利なオールシーズンタイヤだが、運転する人の技量や、クルマの性能にも大きく左右されやすいタイヤであることを認識しておかなければならない。(記事:小泉嘉史・記事一覧を見る

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