三栄コーポ Research Memo(4):2020年3月期通期は顧客ポートフォリオの見直しが奏功し営業増益

2020年9月25日 15:54

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記事提供元:フィスコ


*15:54JST 三栄コーポ Research Memo(4):2020年3月期通期は顧客ポートフォリオの見直しが奏功し営業増益
■業績動向

1. 2020年3月期通期の業績概要
三栄コーポレーション<8119>の2020年3月期通期の連結業績は、売上高が41,217百万円(前期比3.0%減)、営業利益が1,315百万円(同74.9%増)、経常利益が1,342百万円(同62.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益が191百万円(同2.0%減)となった。売上高は微減となったものの営業増益を達成した。

売上高は、前期比3.0%微減となった。OEM事業においては、服飾雑貨事業で増収となったが、家具家庭用品事業において欧米向け家庭用品の売上が大幅に減少したため事業全体で減収となった。また、ブランド事業においては、服飾雑貨事業でビルケンシュトックやキプリングなどが減収となったが、家具家庭用品事業及び家電事業の売上増加を主因に、事業全体で増収となった。一方で、成長著しい事業もある。「MINT」ブランドで展開する家具・インテリアのネットショップや家電事業の中のブランド品を取り扱う理美容家電・調理家電などは伸長した。コロナ禍の影響は2月ごろより見られたが、本格的な影響は2021年3月期からである。

営業利益は、顧客ポートフォリオの見直しにともない、売上総利益率が前期比で1.2ポイント向上した。これにより、売上総利益が増加したことに加え、販管費削減が進み、増益となった。事業セグメント別では家具家庭用品事業の増益幅が大きかった。なお、親会社株主に帰属する当期純利益が減益となったのは、特別損失289百万円が主な要因である。コロナ禍にともなう事業環境の悪化などを踏まえ将来の回収可能性を検討した結果、採算悪化が予想される小売店舗の固定資産について追加で減損処理を行った。弊社では、同社が将来のリスクをいち早く織り込み、信頼性の高いバランスシートを堅持した取り組みを評価している。


2021年3月期第1四半期は新型コロナの影響で大幅減益。巣ごもり需要により家具・インテリアネットショップや理美容家電など一部商材は好調
2. 2021年3月期第1四半期の業績概要
2021年3月期第1四半期の連結業績は、売上高が6,625百万円(前年同期比33.1%減)、営業損失が479百万円(前年同期は83百万円の利益)、経常損失が440百万円(同119百万円の利益)、親会社株主に帰属する四半期純損失が512百万円(同70百万円の利益)となり、主にコロナ禍の影響により減収減益を余儀なくされた。

売上高に関しては、OEM事業においてコロナ禍による世界的な需要減少の影響を受けた。また、ブランド事業でも実店舗においては自粛要請及び自粛ムードが高まる中で出店している商業施設の閉鎖や時短営業に従うよう運営を強いられたことで減収となった。セグメント別では、家具家庭用品事業では、巣ごもり需要により家具・インテリアのネットショップ「MINT」が倍増の勢いで伸長したが、コロナ禍の影響でOEM事業の国内外向けの出荷が減速した。このため、全体として前年同期比27.8%の減少となった。服飾雑貨事業では、OEM事業でトラベル商材等が落ち込み、ビルケンシュトックなどの店舗を運営するブランド事業も大きな影響を受けた。このため、同43.4%減少した。家電事業では、理美容家電・調理家電が好調であったが、OEM事業での出荷減が響き、全体として同36.1%減となった。

営業利益に関しては、販管費の抑制を進めているものの(前年同期比8.4%減)、減収による売上総利益の減少が上回り(同28.5%減)、損失を計上した。第1四半期(4月~6月)は年間スケジュールにおいて新生活商材や春夏商材などシーズン性が高く、コロナ禍の影響で売上高消失により厳しいスタートとなった。


自己資本比率52.9%。逆風下でも財務の健全性を維持
3. 財務状況と経営指標
2021年3月期第1四半期末の総資産は1,556百万円減(前期末比)の20,637百万円となった。うち流動資産は1,853百万円減の14,707百万円となった。主な要因は、受取手形及び売掛金の減少1,370百万円及び現金及び預金の減少1,072百万円である。固定資産は296百万円増の5,929百万円であり、主な要因は投資その他の資産の増加246百万円である。

負債合計は1,159百万円減の9,616百万円となった。そのうち流動負債は1,313百万円減であり、主な要因は、支払手形及び買掛金1,236百万円減である。固定負債に大きな変化はない。有利子負債は5,520百万円であり、有利子負債比率で50.6%とコントロールされている。純資産合計は397百万円減の11,020百万円となった。これは、その他有価証券評価差額金が195百万円増加した一方、利益剰余金が512百万円減少したことが主な要因である。

2021年3月期第1四半期末の経営指標では、流動比率が262.7%、自己資本比率が52.9%と、財務の安全性が高い。コロナ禍の影響で事業環境は逆風であるが、過去からの資本が蓄積されており、財務の健全性を維持している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)《EY》

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