三栄コーポ Research Memo(1):2020年3月期は営業増益。2021年3月期第1四半期はコロナで大幅減益

2020年9月25日 15:51

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記事提供元:フィスコ


*15:51JST 三栄コーポ Research Memo(1):2020年3月期は営業増益。2021年3月期第1四半期はコロナで大幅減益
■要約

三栄コーポレーション<8119>は、70年以上の歴史を持ち高付加価値品を主に取り扱う多機能な商社である。生活用品全般を扱い、製造・輸出入・卸・小売までのサプライチェーンを幅広く手掛ける。海外には18ヶ所の拠点、国内直営小売店には約80店舗を持つ。欧州の差別化されたブランドの日本導入や、良品計画<7453>に代表されるこだわりある商品のOEM調達など、付加価値の高い商品を取り扱う点で個性が明確である。ビジネスモデル面ではOEMが売上高の約7割を占める。事業セグメント別では家具家庭用品事業(2020年3月期売上高の44.9%)、服飾雑貨事業(同35.2%)、家電事業(同14.6%)の3事業が柱である。

1. 業績動向
(1) 2020年3月期通期の連結業績(実績)
2020年3月期通期の連結業績は、売上高が41,217百万円(前期比3.0%減)、営業利益が1,315百万円(同74.9%増)、経常利益が1,342百万円(同62.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益が191百万円(同2.0%減)となった。売上高は微減となったものの営業増益を達成した。売上高はOEM事業において、服飾雑貨事業で増収となったが、家具家庭用品事業売上が大幅に減少したため事業全体では減収となった。また、ブランド事業において、服飾雑貨事業で減収となったが、家具家庭用品事業及び家電事業の売上増加を主因に、事業全体では増収となった。このため売上高は微減となった。営業利益に関しては、売上総利益が増加したことに加え、販管費削減が進んだことにより増益となった。なお、親会社株主に帰属する当期純利益が減益となったのは、特別損失289百万円が主な要因である。コロナ禍による事業環境の悪化などを踏まえ将来の回収可能性を検討した結果、採算悪化が予想される小売店舗の固定資産について追加で減損処理を行った。弊社では、同社が将来のリスクをいち早く織り込み、信頼性の高いバランスシートを堅持した取り組みを評価している。

(2) 2021年3月期第1四半期の連結業績(実績)
2021年3月期第1四半期の連結業績は、売上高が6,625百万円(前年同期比33.1%減)、営業損失が479百万円(前年同期は83百万円の利益)、経常損失が440百万円(同119百万円の利益)、親会社株主に帰属する四半期純損失が512百万円(同70百万円の利益)となった。売上高に関しては、OEM事業においてコロナ禍による世界的な需要減少の影響を受けた。また、ブランド事業で自粛要請及び自粛ムードが高まるなかで出店している商業施設の閉鎖や時短営業に従うよう実店舗の運営を強いられたことで減収となった。営業利益に関しては、販管費の抑制を進めているものの(前年同期比8.4%減)、減収による売上総利益の減少が上回り(同28.5%減)、損失を計上した。

(3) 2021年3月期通期の連結業績(予想)
2021年3月期通期の連結業績は、売上高が前期比24.8%減の31,000百万円、営業損失が1,500百万円、経常損失が1,500百万円、親会社株主に帰属する当期純損失が1,600百万円と減収減益を見込む。売上高予想に関しては、2020年6月までの実績値に7月前半の受注状況や販売状況を踏まえ、前期比20%以上の減少としている。未だ消費者の購買意欲上昇は見られないことから、大幅な減収の予想となった。通期予想に対する第1四半期進捗率は、21.4%(前期は24.0%)となっており、第1四半期の若干の遅れを残り3四半期で挽回することを見込んでいる。利益面では、サプライチェーンの高度化、Eコマースの強化、一貫したブランディングの実践、ローコストオペレーションの推進などの重点施策に取り組んでいく。しかし、売上高減少のインパクトが上回り、各利益で大幅減益の予想となった。上期の営業損失予想が900百万円、下期単独(2020年10月~2021年3月)の営業損失予想が600百万円と、緩やかだが回復するとしている。

2. トピック
同社では、経営ビジョンで「環境」を大きなテーマとしており、その一環として推進するのが「Our EARTH Project」である。同社はこれまで、環境負荷を低減できる部材の供給、それらを使った商品の製造、またはサステナブルブランドの消費者への販売などを行ってきた。2020年6月、このプロジェクトに新たに3つのブランドを加え、本格的な販売を開始した。車のエアバッグをアップサイクルしたドイツ発のバッグブランド「AIRPAQ」、海洋プラスチック(PET)をリサイクルしたドイツ発のバッグブランド「GOT BAG.」。そして、衣料品の製造工程ででる綿の端材をリサイクルして製品化したフィンランド発のアパレルブランド「Pure Waste」である。

■Key Points
・100年企業を念頭に、企業理念「随縁の思想」を据える。「健康と環境」をテーマに「くらしに、良いもの」を世界で製造・販売する多機能商社。家具家庭用品、服飾雑貨、家電の3事業が柱
・2020年3月期通期は顧客ポートフォリオの見直しが奏功し営業増益。新型コロナの将来的な影響も考慮し減損処理(特別損失)
・2021年3月期の売上高は前期比20%以上減少予想。巣ごもり需要の追い風が一部であるものの、withコロナの消費者の購買意欲回復まで時間がかかる見込み
・ビルケンシュトック及び他社ブランド品の修理事業の強化。サステナブル&エシカルな欧州3ブランドを取り扱い開始

(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)《EY》

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