コロナ第2波でベトナム市場は?【フィスコ・コラム】

2020年8月9日 09:00

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記事提供元:フィスコ


*09:00JST コロナ第2波でベトナム市場は?【フィスコ・コラム】
新型コロナウイルス抑止の成功国として世界的に注目されるベトナムで、ついに死者が確認されました。犠牲者はその後も増加し、国内外に衝撃を与えています。政府の厳しい制限措置も再び実施され、経済の正常化は逆戻りせざるを得ない状況です。


ベトナム中部のダナンで3カ月ぶりに新型コロナの新規感染者が確認された、と報じられたのは7月24日のことでした。市内にある工場などですでにまん延しており、428人目の感染者となった70歳の男性が同31日、最初の犠牲者となりました。それから数日間で8人が相次いで亡くなり、8月6日時点で死者は9人。地元紙などによると、さらに10人以上が重症化しています。


ベトナムでは1月23日に最初に感染者が確認されて以来、約2カ月で270人台に増加しましたが、政府の厳しい制限措置で新規感染者をゼロに抑え込みます。フック政権は感染症の専門家を入閣させた経緯もあり、重症急性呼吸器症候群(SARS)の教訓として迅速な措置を打ち出したことが効果を発揮。4月にはハノイ-ホーチミン間の旅客輸送が増便されるなど、経済活動も徐々に正常化しつつありました。


海外から帰国したベトナム人の感染例は報告されても1月末以降の新規感染はなく、新型コロナの封じ込めに成功した国として、世界から高く評価されてきました。それまで死者ゼロを誇っていただけに、足元の状況は衝撃的です。世界での感染者数は1800万人、死者は70万人に接近。日本でも大都市を中心に被害が再拡大しており、ベトナムのケースは第2波として警戒を強めざるを得ません。


アジアの経済にとっても大きな痛手です。ベトナムの国内総生産(GDP)は昨年10-12月期が+6.9%でしたが、今年は1-3月期が+3.8%、4-6月は+0.3%と、過去35年で最低水準に落ち込んでいます。それでも新型コロナ抑止により経済は早期正常化に向かっているとして、世界銀行は2020年のベトナムの成長率を+2.8%とし、世界5位につけると予測。21年は+6%台の回復と見込んでいます。


ただ、世銀の調査には7月末以降のコロナ再拡大は加味されていません。今後の被害状況によっては、目先はマイナス成長もありうるでしょう。気になるのは、最初の死者は院内感染の可能性があることです。ベトナムが厳しい制限措置や隔離などで予防を徹底しているのは、医療がぜい弱なせいだといわれます。ベトナム経済にとって、医療崩壊は経済の崩壊にもつながりかねません。


もっとも、株式市場は冷静です。代表的な株価指数VNは3月のコロナ危機で650ptまで下げますが、経済活動の再開に合わせ徐々に回復し、一時900pt付近まで戻していました。このところ材料難でやや軟調地合いが続いていたなかで、コロナ死に直面。投資家心理を圧迫して大幅安は避けられないとみていたのですが、8月に入ってからは意外にも強気なムードとなっています。


フック政権は感染再拡大を受け、金融機関に対し産業界への資金供給を鈍らせないよう指示を出すなど迅速に対策を打っています。政権へのそうした信頼感が金融市場の安定に表れているようです。

※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。


(吉池 威)《YN》

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