日経平均は小幅反発、コロナ懸念も「売り一辺倒」ではない/ランチタイムコメント

2020年7月17日 12:29

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記事提供元:フィスコ


*12:29JST 日経平均は小幅反発、コロナ懸念も「売り一辺倒」ではない
 日経平均は小幅反発。3.59円高の22773.95円(出来高概算5億株)で前場の取引を終えている。

 16日の米株式市場でNYダウは5日ぶりに反落し、135ドル安となった。中国株が大幅に下落したことに加え、先週分の新規失業保険申請件数が市場予想を上回り、労働市場の回復の遅さも嫌気された。反面、日用品のジョンソン・エンド・ジョンソンは新型コロナウイルスワクチンの臨床試験を始めると発表して上昇。半導体大手の台湾積体電路製造(TSMC)が設備投資計画を引き上げたことなども好感され、本日の日経平均は37円高からスタートすると、寄り付き直後に一時22857.82円(87.46円高)まで上昇した。ただ、国内外での新型コロナ拡大や米中対立への懸念は根強く、一転して22713.06円(57.30円安)まで下落する場面もあった。

 個別では、ソフトバンクG<9984>やトヨタ自<7203>が堅調。日立<6501>は4%の上昇となっている。半導体関連では東エレク<8035>やレーザーテック<6920>が小高く、アドバンテス<6857>やSCREEN<7735>は2%近い上昇。中小型株では前日にストップ高比例配分となったベイカレント<6532>が商いを伴って大幅続伸し、外資系証券の強気の投資判断が観測されたIRJ−HD<6035>、上期業績を上方修正したISID<4812>などとともに東証1部上昇率上位に顔を出している。一方、ファーストリテ<9983>、任天堂<7974>、ソニー<6758>などが軟調。前日まで急なリバウンドを見せていた日産自<7201>も本日は小安い。今期赤字見通しを発表したアダストリア<2685>は売りがかさみ、ヨシムラフード<2884>などが東証1部下落率上位に顔を出した。

 セクターでは、電気・ガス業、医薬品、情報・通信業などが上昇率上位。半面、空運業、不動産業、鉄鋼などが下落率上位だった。東証1部の値上がり銘柄は全体の41%、対して値下がり銘柄は54%となっている。

 本日の日経平均は新型コロナワクチン開発への期待継続、TSMCの好決算や強気の設備投資計画を背景に反発スタートしたが、上値の重い展開となっている。16日は東京都の新型コロナ新規感染者数が286人と過去最多だった。また、米国でも感染者数が過去最多になったと伝わっている。米雇用回復が予想より鈍り、国内では旅行需要喚起策「Go Toキャンペーン」から東京発着が除外される見通しとなるなど、新型コロナ再拡大は経済活動にも影響し始めた。株価の上値が重くなるのも無理はないだろう。東証1部全体としては値下がり銘柄の方が多く、ここまでの東証1部売買代金が9000億円程度にとどまっていることからも買い見送りムードが窺える。

 反面、値がさのソフトバンクGや時価総額トップのトヨタ自が堅調。さらに半導体関連もおおむね小じっかりで、日経平均や東証株価指数(TOPIX)は小幅ながらプラスとなっている。業種別騰落率にはディフェンシブセクターへの資金逃避も見られる。新興市場ではマザーズ指数が続落。米株式市場と同様に新興ハイテク株の売りが続いているが、中小型株全体を見渡すと東証1部でベイカレントやIRJ−HDといったところが賑わっている。売り一辺倒になっているわけではないと言えるだろう。

 日銀による上場投資信託(ETF)買い実施が期待できないことから売りが出る場面もあるだろうが、中国・上海総合指数が反発していることは一定の安心感につながる。後場の日経平均も方向感に乏しい展開になると見込むが、本日の東京都の新型コロナ新規感染者数を注視しておきたい。

 さて、日経平均は週半ばに23000円に接近する場面もあったが、その後上値が重い。とはいえ、本日も日足チャート上で22700円台に位置する5日移動平均線水準をキープしており、新型コロナ再拡大や米中対立への懸念が強まるなかでも大きく値を崩していない。前日の外資系証券の先物手口を見ると、日経平均先物を売り越す一方、TOPI先物を買い越していた。直近のバリュー(割安)株優位、グロース(成長)株劣位の流れを意識したものだろう。本日はその反動的な動きも見られるが、つまり日替わりでの循環的な物色が続いており、前述のとおり売り一辺倒とはなっていないわけだ。

 また、15日に日証金<8511>が日経レバETF<1570>の自己取引を含む新規売りに伴う貸株申し込み停止などの規制(売り禁)の実施を発表したことも話題となっている。かねて指摘しているとおり、ここまで個人投資家や海外投資家は売り持ち高を増やしてきた。株式相場全体の底堅さは売り方にとって厳しい状況で、買い戻し主導での「意外高」の可能性はなお残る。(小林大純)《AK》

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