いちご Research Memo(1):2020年2月期は物件売却好調により過去最高益の営業利益を更新(1)

2020年5月28日 15:01

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記事提供元:フィスコ


*15:01JST いちご Research Memo(1):2020年2月期は物件売却好調により過去最高益の営業利益を更新(1)
■要約

いちご<2337>は、オフィス、ホテル、商業施設、レジデンスなど幅広いタイプの不動産を対象とし、不動産価値向上ノウハウを駆使し、投資・運用を行う心築(しんちく)を強みとする。不動産ファンド運営会社及び資産流動化などを行う会社を前身とし、2000年に事業をスタート。2002年には大証ナスダック・ジャパン市場(現東証JASDAQ市場)に上場し、私募不動産ファンドなどを通じて事業拡大を加速させた。リーマンショックを契機に、いちごトラストが大株主となり、資産運用ビジネスをコアとした事業の選択と集中を行った。その後、2008年に持株会社制に移行し、2011年にJ-REITの運用会社2社を子会社化し、J-REITへ参入。また、2012年にはクリーンエネルギー事業に参入した。2015年11月にはホテルリート、2016年12月にはインフラ投資法人を上場させ、現存不動産に新しい価値を創造する心築事業とともに、アセットマネジメント事業においても発展させている。2015年11月に東証1部に昇格、2016年8月にはJPX日経インデックス400の構成銘柄に選定され、その地位を4年連続で維持。現在は200位以内にランキングされている。不動産価値向上技術・ノウハウを軸にオフィス、ホテル、再生可能エネルギー発電施設の3つの投資法人と連携するユニークな企業グループである。ストック収益の比率が高く(約50%)、固定費の2.34倍をカバーしており、不動産業界屈指の盤石な収益モデルを誇る。

1. 事業概要
事業セグメントはアセットマネジメント事業、心築事業(旧不動産再生事業)、クリーンエネルギー事業の3つである。アセットマネジメント事業は、3つの上場投資法人(いちごオフィス、いちごホテル、いちごグリーン)に対して、投資対象資産の発掘及び供給、運営・マネジメントなどを行う。資産の入替などを含めた資産規模の拡大や賃料収入の増加、適正なコストコントロールなどにより、同社の運用フィーも成長している。心築事業は同社事業の柱であり、不動産価値向上ノウハウは同社のコアコンピタンスである。保有不動産の賃貸収益(ストック)と譲渡収益(フロー)がバランス良く成長しているのが同社の特徴となっている。賃貸収益(ストック)は自己保有資産242,321百万円(2020年2月末)から生み出され、2020年2月期の粗利ベース収益は11,940百万円(前期比927百万円減)だった。一方の譲渡収益(フロー)は2020年2月期も順調に伸び、粗利ベース収益で17,158百万円(前期比2,265百万円増※)となった。クリーンエネルギー事業は2012年に開始され、全国64ヶ所の太陽光、風力発電所プロジェクトをグループで開発及び運営するまでに成長した。2020年2月時点で同社が保有する発電所のうち売電開始済が45ヶ所、136.28MW(うち、いちごグリーンインフラ投資法人は15発電所、29.43MW)、開発中の発電所が18ヶ所、48.56MWである。2020年2月期は5発電所、23.21MWが稼働開始した。

※2019年2月決算説明資料の実績の差額で計算


2. 業績動向
2020年2月期通期は、売上高が前期比4.6%増の87,360百万円、営業利益が同5.5%増の27,721百万円、経常利益が同5.7%増の24,395百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同46.7%減の8,201百万円と営業・経常が過去最高益を達成する一方で、当期純利益は減益となった。過去最高の営業利益に大きく貢献したのは主力の心築事業である。内訳としては、不動産譲渡損益が17,158百万円(前期比15.2%増※、2,265百万円増)であり、高い利益率での物件売却ができたことが要因である。ストックとフローの両面でバランス良く稼げているのが同社の特長だ。当期純利益が減少した理由は、新型コロナウイルスの感染拡大による保有不動産の再評価をいち早く反映し、評価損を織り込んだためである。同社が保有するホテルや商業施設のなかで業況悪化が顕著な物件に関して、販売可能価額を検証し、帳簿価額を下回ったものにつき低価法を適用し、評価損7,487百万円を含む8,065百万円を特別損失に計上した。弊社では、2020年2月末の段階でバランスシートにおける将来のリスクをいち早く織り込み、信頼性の高いバランスシートを堅持した取り組みは、高く評価している。

※2019年2月決算説明資料の実績の差額で計算


2021年2月期通期の業績予想(連結)は、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大による不動産業界への影響が現時点において不透明であることから、レンジを設定した。営業利益で前期比77.6%減~53.5%減の6,200百万円~12,900百万円、経常利益で前期比86.1%減~57.4%減の3,400百万円~10,400百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で前期比75.6%減~2.5%減の2,000百万円~8,000百万円となった。新型コロナウイルスの影響拡大によりホテル宿泊需要の大幅な減少や商業施設の各種テナント企業の業績悪化が発生するなか、賃料収入の減少や不動産売買マーケットの停滞が予想される。これらの減少を未然に考慮し、保守的に見積もった業績が下限予想である。営業利益6,200百万円は、前期の約4分の1に相当する。フロー収益(主に心築事業における不動産譲渡益)が前期の約6分の1になる予想だ。一方で、上限シナリオでは、営業利益12,900百万円は前期の約2分の1になる予想だ。オフィスやレジデンスでは売買マーケットへの影響が少ないことや、新型コロナウイルスの影響が秋口くらいには落ち着くことなどが前提となる。弊社では、上限シナリオがより現実的だと考えている。同社は、循環的な景気後退がいつ来ても対応できる財務体質を以前から整備してきた。ストック収益で固定費をカバーできる同社にとって、市場が低迷している時期に安値での売却(フロー収益確保)を行う必要はない。ホテルや商業施設の事業環境が回復するまでじっくり待つ戦略を取れるのも、同社の強みと言えるだろう。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)《EY》

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