開発中の乗用車プロトタイプはなぜ不思議な模様で包まれているのか?

2020年5月10日 17:35

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2019年に登場したレクサス・LC試作車のカモフラージュデザイン(画像: レクサスジャパン発表資料より)

2019年に登場したレクサス・LC試作車のカモフラージュデザイン(画像: レクサスジャパン発表資料より)[写真拡大]

 毎年、自動車メーカー各社は、さまざまな新型乗用車を開発している。そのたびに「プロトタイプ」としてニューモデルやフルモデルチェンジ版の開発車両がニュースに登場するのだが、そのほとんどはボディに渦巻や唐草など独特の模様をまとっている。普段から自動車のニュースに慣れ親しんでいても、こうした模様を不思議に思う人はいることだろう。

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 開発者のスクープに登場する車を包む模様は、デジタルカモフラージュと呼び、多くは黒地に白の渦巻など複雑なデザインに仕立てている。模様は他にも縞や唐草、幾何学などメーカーや車種により異なる。デジタルカモフラージュは、開発中の車両をめぐるビジュアルなどのネタバレを防ぐ目的が多い。

 開発段階で黒一色のようにデザインが分かる見た目で車を公開すれば、ライバルメーカーがトレンドを悟り、簡単にコピーデザインを実現させる可能性もある。コピーデザインの登場による売上の影響を防ぐために、メーカーはデジタルカモフラージュを使う。

 中には窓の一部にまで施し、徹底して形状を悟らせないケースもある。場合によっては車のボディパネルの一部にカバーを貼り、形状や質感を隠している開発車両も見られる。

 デジタルカモフラージュの細かい模様を見ていると、目を惑わされて画像内の車を長く見られない人も多いだろう。人間の目は細かい模様が動くことで、画像認識能力がダウンするのだ。

 新車の特徴を多くの人に認識させない形でテスト走行や開発を進めるためには、人の目が正確に形をとらえてしまわないためのデジタルカモフラージュ柄によるデザインが、都合がよい。メディアからスクープという形で写真に収まっても、カモフラージュが車の正体を悟らせず、一定のネタバレ対策につながる。

 自動車メーカーが開発している乗用車が、デジタルカモフラージュをまとった姿でスクープを受ける、それはこれから新しい車が誕生するヒントであり、正体は初公開日までのお楽しみなのだ。

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