ノーベル文学賞、オルガ・トカルチュク氏とペーター・ハントケ氏が受賞

2019年10月12日 20:38

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記事提供元:スラド

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 スウェーデンアカデミーは10日、2019年のノーベル文学賞受賞者とともに、授賞が延期されていた2018年のノーベル文学賞受賞者を発表した。2018年のノーベル文学賞は作家のオルガ・トカルチュク氏が受賞し、2019年のノーベル文学賞は作家のペーター・ハントケ氏が受賞した。

 トカルチュク氏の授賞理由は、隅々までとらえようとする情熱とともに、生活の形としての越境を象徴する物語的な想像力(略歴)。

 トカルチュク氏は1962年、ポーランドに生まれる。ワルシャワ大学で心理学を学んだ後、1993年に発表したデビュー小説「Podróz ludzi Księgi」(本の人々の旅)でポーランドの出版社による新人賞を受賞。第3作「Prawiek i inne czasy」(古代とそのほかの時代)は強い象徴的印象を持つ架空の場所を舞台にしつつ、現実的で生き生きとした細部で満たされた作品で、1989年以降の新ポーランド文学を代表する作品となっている。「Dom dzienny、dom nocny」(邦訳: 昼の家、夜の家)などの作品では神話と現実が密接に結びつけられており、「Bieguni」(邦訳: 逃亡派)などの作品ではユング心理学の元型が取り込まれている。最高傑作とも呼べる2014年の「Księgi Jakubowe」(ヤコブの書)は18世紀にユダヤ教の宗派を率いたヤコブ・フランクを主人公とする時代小説で、数年におよぶ研究を経た執筆は作家としてのモードとジャンルを変更した。

 ハントケ氏の授賞理由は、言語的な創意とともに、人間の体験の周辺と特異性を掘り下げる影響力の大きな作品(略歴)。

 ハントケ氏は1942年、オーストリアに生まれる。グラーツ大学で法律を学んでいたが、1966年にデビュー小説「Die Hornissen」(雀蜂)が出版されたのに伴い中退。作品は主人公が読者の知らない小説の断片を集めていくという二重フィクションの形をとる実験的なもので、1969年の戯曲「Publikumsbeschimpfung」(観客罵倒)とともに、文学シーンに彼の名を刻んだ。ハントケ氏の作品は小説から随筆、戯曲、映画原作・脚本など幅広く、第二次世界大戦以降の欧州で最も大きな影響を与えた作家の一人となっている。1990年以降はフランス在住。邦訳に「左ききの女」「空爆下のユーゴスラビアで」「幸せではないが、もういい」「こどもの物語」「反復」(以上同学社)、「私たちがたがいをなにも知らなかった時」「アランフエスの麗しき日々」(以上、論創社)、「ドン・フアン (本人が語る)」(三修社)など。「アランフエスの麗しき日々」など映像化作品も多い。

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