Pウォーター Research Memo(1):2020年3月期通期は売上高430億円、営業利益12億円を予想

2019年7月16日 15:11

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記事提供元:フィスコ


*15:11JST Pウォーター Research Memo(1):2020年3月期通期は売上高430億円、営業利益12億円を予想
■要約

プレミアムウォーターホールディングス<2588>は、天然水製造が強みの株式会社ウォーターダイレクトと営業力が強みの株式会社エフエルシーが経営統合して生まれた企業グループである。率いるのは、エフエルシーを起業しプロモーション営業力で国内トップクラスに引き上げた実績を持つ萩尾陽平(はぎおようへい)代表取締役社長。ブランドを「プレミアムウォーター」に統一し再スタートを切った。強力な営業組織と販売ノウハウを武器に急成長し、保有顧客数を841千件(2019年5月末時点)まで増やし、宅配水業界で売上高トップを走る。

1. ビジネスの特長
同社の強みの根源は、圧倒的な顧客獲得力による「顧客純増」である。この強みがあることにより、水源分散化や物流効率化、無駄のない工場設備投資などが可能となり、好循環が生まれている。顧客獲得方法は様々であるが、同社は大型商業施設や大手量販店、ホームセンターなどでのデモンストレーション販売で約6割の顧客を獲得している。営業ノウハウやその教育もさることながら、従業員の育成とモチベーションを考慮して作り込まれた従業員評価制度があり、能力を引き出す仕組みが充実している。

水源に関しては、これまで富士吉田(山梨県)、南阿蘇(熊本県)、金城(島根県)の3ヶ所の水源(工場)から全国の消費者に配送していたが、2018年10月からは朝来(兵庫県)、2019年1月からは北アルプス(長野県)の工場が稼働開始し、全国5ヶ所となった。水源を増やすのは、顧客の増加に対応する安定供給能力の確保はもちろん、配送費の抑制の狙いもある。一定以上の顧客が確保できなければ、工場の稼働率は上がらず製造コストが高くなってしまうが、同社は保有顧客を増加させることができるため、水源の開拓にも弾みが付いている。

事業特性は「投資回収型ストックビジネスモデル」であり、ウォーターサーバーの原価やデモンストレーション販売の費用(1顧客当たり約3万円、フィスコ試算)を会社側が最初に負担し、天然水の売上げで徐々に回収していく。定期配送契約を結ぶため、ストック利益(毎月の水代などから得られる収入から顧客維持コストや提供サービスの原価などを除いた利益分のこと)は安定して継続する。新規顧客を一気に増やす時期は赤字になるが、その後回収が進んでくると大きく黒字に転換するという事業特性である。2019年3月期に損益分岐を超え、一気に黒字転換を果たしている。

2. 業績動向
2019年3月期通期の売上高は37,732百万円(前期比36.1%増)、営業利益715百万円(前期は1,179百万円の損失)、経常利益259百万円(前期は1,559百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純利益528百万円(前期は1,493百万円の損失)となり、公約どおり大幅な増収増益を達成した。売上高に関しては、新規顧客獲得が前期同様堅調に推移し、それに伴い保有顧客数が順調に積み上がった。2019年3月期通期の新規顧客契約件数は平均23,964件/月(前期は24,370件/月)、2019年3月末の保有顧客数は810,360件(前期末は650,676件)となっている。1契約当たりの年間売上高が51.1千円(前期は49.0千円)と向上したことも増収に寄与した。これは顧客開拓の段階で、クレジットカード顧客を中心にしたことなどが奏功したと考えられる。利益に関しては、中期経営計画及び通期計画で公約していたとおり、前期の大幅営業赤字(1,179百万円の損失)から一転して黒字となった。期初の営業利益予想(10百万円)から大幅に向上したのは、1)想定を上回る増収を達成したこと、2)物流体制の見直しや主要運送業者との間の交渉等により物流費の上昇が想定以上に抑えられたことが主な要因である。

3. 業績見通し
2020年3月期通期の連結業績は、売上高で前期比14.0%増の43,000百万円、営業利益は同67.8%増の1,200百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は同13.6%増の600百万円と、売上高を安定成長させるとともに、営業利益を大幅に増加させる計画だ。売上高の成長率が14.0%予想と前期(前期実績は36.1%)と比較するとやや低下するように見えるが、これは2018年1月に、物流費の高騰に起因した製品の価格改定を行い(新規申込は2017年11月から)、それが前期の売上高に寄与していたためで、保有契約件数の増加と共に順調な成長を見込む。利益面では、収益性がさらに高まる年となる予想だ。売上高営業利益率では2.8%(前期は1.9%)になる。同社のビジネスモデルは、保有顧客数が積み上げり、そこからの継続的な収益が営業活動に伴う費用を上回ると急激に利益が増加するというものだ。前期に損益分岐点を超えたため、収益性が一気に高まるフェーズに入った。収益性に影響する解約率に関しては、現状1.4~1.5%に抑制できており(フィスコ試算)、営業活動からアフターサービスまでの全プロセスの品質がさらに向上すれば、一段の解約率低下も期待できる。物流費の更なる値上がりのリスクはあるが、地産地消化やスケール拡大による輸送稼働率の向上などで対策も立てられており、外部環境に影響されにくい体質になっていると言えるだろう。

4. 成長戦略、トピック
同社は、2020年3月期に始まり、2024年3月期を最終年度とする5ヶ年の新中期経営計画を2019年5月9日に発表した。最終年の2024年3月期の売上高は64,000百万円であり、5年間の年平均成長率は11.1%と安定成長を予想。一方で営業利益は5年後に5,100百万円、5年間の年平均成長率は49.3%と飛躍的な利益成長が特徴だ。売上高営業利益率は2019年3月期の1.9%から5年後に8.0%まで押し上げる考えだ。同社のビジネスモデルである「投資回収型ストックビジネスモデル」において、黒字転換後は黒字が漸増するステージに入るため、計画にはリアリティが増している。旧中期経営計画(2018年5月10日発表、2023年3月を最終年度とする5ヶ年計画)からの変更点としては、保有顧客数が下方修正され、売上高及び営業利益が上方修正されたことである。2023年3月期(新中期経営計画4年目)で比較すると、保有顧客数計画は16万件引き下げられたが、売上高は50億円、営業利益で11億円引き上げられた。水やその他の商材の購入の相対的に多い優良な顧客を獲得でき、物流費高騰への対策においても一定の目途が立ったという自信の表れと推察する。

■Key Points
・宅配水業界No.1の規模と成長力。天然水の製販一体経営に特長
・「顧客純増」の強みを生かし「水源開拓」「物流効率化」「設備投資による原価低減」などを優位に展開
・2019年3月期通期は大幅増収、利益は公約通り通期黒字化を達成
・2020年3月期通期は売上高430億円、営業利益12億円を予想。損益分岐を超え、収益性が一気に高まるフェーズへ
・新中期経営計画発表。5年後の2024年3月期に売上高640億円、営業利益51億円を目指す

(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)《ST》

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