乃木坂46真夏の全国ツアーで見せた希望と課題とは

2019年7月5日 18:32

印刷

 昨年の全国ツアーでは、多くの楽曲のセンターとして大車輪の活躍を見せていた西野七瀬の姿はない。綺麗すぎる大黒柱として乃木坂を牽引してきた白石麻衣の姿もなく、期待の3期生大園桃子の姿もなかった。

【こちらも】元乃木坂46 川後陽菜の活躍に見るアイドルの新時代

 7月3日、愛知県名古屋ドームからスタートした、今年の乃木坂の全国ツアー。

 これまで表題曲のセンターを経験した生駒里奈、白石麻衣、西野七瀬、橋本奈々未、深川麻衣、そして大園桃子もいない(白石はスケジュールの都合、大園は体調不良)ステージは、しかし、これまでとほとんど見劣りすることなく、会場はファンの熱狂に包まれ、ライブとしてのクオリティの低下を感じさせない、最高の空間を作り上げていた。

 その立役者は、やはり齋藤飛鳥だろう。おそらく、3分の2近い曲でセンターをつとめ、得意のドラムで乃木坂バンド(乃木團ではない)として演奏も披露するなど、八面六臂の活躍。

 あの小さな体のどこにそんなバイタリティがあるのかと思うほど、最後まで目をぎらつかせてライブを盛り上げていたのは、彼女の成長を見守ってきたファンには感慨深いものがあっただろう。

 さらに、生田絵梨花、堀未央奈といったセンター経験者も、観客を存分に煽り、チームの牽引車としてライブを引っ張っていたが、何より頼もしかったのは、順調に経験を積み上げてきた3期生が、フレッシュな4期生をサポートするところまで成長し、堂々たる姿で主力戦力になっていたことだろう。

 特に部分休養から復活した山下美月と、久保史緒里の存在感は大きく、もはや風格すら感じられる立ち振る舞いでライブの中心となって活躍しているのを見ると、「〇〇がいない」などというネガティブ要素を吹き飛ばしたのは彼女たちの力によるところが大きかったのかもしれない。

 おそらく乃木坂は、抜けたメンバーの穴を埋めるのではなく、どんどん新しい道を切り拓いていく道を選択しているのだろう。どんなアイドルもその心意気はあるのだろうが、ほとんどのアイドルは抜けた穴にこだわるファンによって足をすくわれているのが現状だ。

 だが今回、記者が感じたのは、乃木坂の場合、抜けた穴は、抜けた本人が埋めているという新しい現象だった。直接話を聞けたのは20人ほどではあるが、今回のツアー、乃木坂ファンではないが、卒業生のファンという人たちが参戦しているのである。

 卒業後の舞台やドラマ出演で、深川麻衣や永島聖羅、生駒里奈のファンになり、彼女たちが在籍していた乃木坂を知った……という人たちがライブに来るという現象は、少なくとも私は初めて知った。

 西野七瀬のインスタを見て、齋藤飛鳥と高山一実のファンになって乃木坂を好きになったという人もいた。現役と卒業メンバーの壁が薄く、卒業後も交流が表に見えているというのは、こういう好循環も産むのである。

 本欄では、よく世代交代という概念で乃木坂をはじめアイドルを見てきたが、この「世代循環」とでもいうべき現象こそ、アイドルグループがグループとしての寿命を延ばすキーワードになるのかもしれない。

 一方で、課題となってくるのはファンの劣化だ。これまで、全国ツアーの名古屋は、比較的マナーのいい、そしてしっかりと盛り上げるところはノリのいいファンが多いという印象が記者にはあったのだが、今回は、路上をふさいでコールをしている厄介集団もいれば、ライブ後のゴミの散乱も酷かった。

 グループが世代循環に成功しても、ファンが厄介化したのでは意味がない。この悪い流れに、どれだけ自浄作用が働くのか、ファンの真価が試されている。(記事:潜水亭沈没・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事