構造タンパク質素材でTシャツ発売 人工クモ糸事業が再始動 ゴールドウイン×スパイバー

2019年6月24日 16:47

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ブリュード・プロテインを使ったTシャツと、渡辺ゴールドウイン副社長(右)と関山スパイバー代表

ブリュード・プロテインを使ったTシャツと、渡辺ゴールドウイン副社長(右)と関山スパイバー代表[写真拡大]

 スポーツメーカーのゴールドウインと、構造タンパク質素材の産業化に取り組むベンチャー企業スパイバー(山形県鶴岡市)は、共同開発した新たな構造タンパク質素材「ブリュード・プロテイン」を採用したTシャツを、8月下旬から発売する。人気アウトドアブランド「ザ・ノース・フェイス」とのコラボレーションブランド「ザ・ノース・フェイスsp.(エスピードット)」を立ち上げ、製品を拡充させていく。

【2015年に提携】ゴールドウイン、人工合成クモ糸素材「Spiber」と提携

 スパイバーは、強じんなクモの糸の構造を再現した新素材を研究しており、軽量で強じんな特性に、大手のゴールドウインが着目、2015年に実用化に向けた共同研究開発を開始した。共同記者会見では、表地に人工クモ糸を使用したTNFのアウター「ムーン・パーカ」の試作品を披露。繊維・ファッション業界のみならず注目を集め、会見後にゴールドウインの株価は上昇した。

 当初はより早く商品化する予定だったが、間もなく課題が明らかになる。クモ糸は水に濡れると大幅に収縮する“超収縮”を起こすため、アウトドアウェアには致命的な欠陥となり得る。発売は延期され、両者は紡糸からガーメント制作までの工程でテストを繰り返した。改善の努力の結果、微生物を使った発酵プロセスにより生成した微生物由来のタンパク質で、超収縮を90%低減させることに成功。名称もブリュード・プロテインに一新した。

 第1号製品となるTシャツは「プラネタリー・エクイリブリアム ティー」(税抜2万5000円)。綿との混紡で、混率は綿82・5%、ブリュード・プロテイン17.5%。厚手の強じんな生地だが、ブリュード・プロテインの効果でしっとりした滑らかな肌触り。ゴールドウインの独自技術により、縫い目が肌にあたらない仕様で、滑らかな着心地をより実感できる。

 混率の数字は、地球のバイオマスバランス(植物82.5%、微生物17%、動物0.5%)における植物と微生物を象徴しているという。カラーはブラック、ユニセックスサイズ。250着の予約(6月20日~7月20日)限定販売とする。

 11月にはムーン・パーカを発売する計画で、8月に改めて発表を行う。また量産化に向け、タイでプラント建設に着手、21年の可動を目指す。都内でこのほど行われた会見で、ゴールドウインの渡辺貴生副社長は「さらに研究を進め、25年ごろまでにアウターやTシャツ、シューズなどへも拡大させていきたい」とコメント。スパイバーの関山和秀代表執行役は「新素材で脱プラスチック、脱アニマルを実現したい」と、世界的な潮流となっているサステナブル素材としてのブリュード・プロテインの展開に意欲を示した。

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