NYの視点:今週の注目:米中貿易協議、英EU離脱、長短金利差

2019年3月25日 07:38

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記事提供元:フィスコ


*07:38JST NYの視点:今週の注目:米中貿易協議、英EU離脱、長短金利差
先週は、長短期の債券利回り逆転を受けて、米国経済が12カ月以内に景気後退に陥るとの懸念が強まった。3カ月物と10年物の利回り格差が2007年来で初めて逆転。今週も住宅着工件数、消費者信頼感指数、PCEコアや10-12月GDPの結果で、米国の経済動向を探り、債券動向を睨む展開となる。

さらに、英国の欧州連合(EU)離脱や米中貿易協定の行方に注目が集まる。米国のムニューシン財務長官やライトハイザーUSTR代表が中国を訪問、閣僚級貿易協議が再開する。関係筋によると速やかな合意成立の可能性は低いと見られている。万が一、協議が物別れに終わり米国が対中輸入品に賦課する追加関税を決定した場合、すでに弱い世界経済の成長にさらなる打撃となる。

また、欧州域内の景気鈍化が深刻化する中、欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁など中央銀行メンバーの発言に注目される。ECBは直近の定例理事会で、世界経済の弱さや貿易の不透明感にフォワードガイダンスを修正、年内の利上げの可能性を除外した。ただ、FRBのパウエル議長、ECBのドラギ総裁は「経済が景気後退に陥る可能性は低い」と見ている。

EUと英国は合意ない離脱の回避を目指し、従来の期日であった29日から延期を模索している。EUは21日のサミットで、合意ない離脱を回避すべく英国に2週間の猶予を与えた。もし、英国議会がメイ首相の合意離脱協定案を可決した場合、5月22日まで延期される。否決された場合、4月12日までに、合意なしで離脱するか、長期の延期をEUに要求するかの選択に迫られる。メイ首相は12日までの間に、EUに更なる延期を要請することも可能だと議会に伝えるなど、先行き不透明感が強い。

とりあえず、秩序のない速やかな離脱懸念は後退。しかし、下院議長がメイ英首相の案を巡る3度目の採決を承認する保証や。議会が可決する保証もなく、リスクは存続。EUは少なくとも年末までの延期を模索しているようだ。フランスのマクロン仏大統領は、メイ首相の案が議会で可決される確率は「5%」に過ぎないと悲観的。

景気後退への警戒感が強まる中、米商務省が発表する10-12月期の国内総生産(GDP)確定値がネガティブサプライズとなると、警戒感がさらに強まりドル売り圧力となる。特に12月の小売りが予想外に悪化しており、10-12月期の個人消費への影響が懸念される。また、FRBがインフレ指標として注視しているPCEコアの1月分は予想前年比+1.9%と、12月に続き目標を小幅下回る水準が維持される見込み。

■今週の主な注目イベント

●米国
24-25日:エバンス米シカゴ連銀総裁講演
25日:ハーカー米フィラデルフィア連銀総裁、
ローゼングレン・ボストン連銀総裁講演
26日:ハーカー米フィラデルフィア連銀総裁講演、
デイリー米サンフランシスコ連銀総裁がイベントでインフレの管理に関する討論

3月コンファレンスボード消費者信頼感指数:予想132.1(2月131.4)、
2月住宅着工件数:予想121.8万戸(1月123万戸)

27日:ジョージ米カンザスシティー地区連銀総裁講演、
1月貿易収支:予想-575憶ドル(12月—598憶ドル)

28日:ウィリアムズNY連銀総裁、ブラード・セントルイス連銀総裁、
ボスティック米アトランタ連銀総裁講演、
10-12月期GDP確定値:予想前期比年率+2.4%(改定値+2.6%)
10-12月期個人消費:予想前期比+2.6%(改定値+2.8%)

クオールズ米連邦準備理事会(FRB)副議長がECB開催の会合で基調演説、
ボウマンFRB理事講演ブラード・セントルイス連銀総裁

29日:カプラン米ダラス連銀総裁講演、
クオールズ米連邦準備理事会(FRB)副議長講演、
1月PCEコア:予想前年比+1.9%(12月1.9%)

●欧州

27日:ドラギECB総裁講演
29日:英国のEU離脱(延期の見通し)

●英国
29日:EU離脱(延期の見通し)、GDP

●地政学的リスク
ベネズエラ
北朝鮮:
イラン
ガザ紛争
イラク、イスラム過激派組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」
シリア
イエメン《CS》

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