隙間産業にヒットあり!~好きが詰まっているニッチな博物館をぐるぐる~【Book】

2019年2月18日 17:15

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記事提供元:フィスコ


*17:15JST 隙間産業にヒットあり!~好きが詰まっているニッチな博物館をぐるぐる~【Book】
静岡県伊豆市に「地獄・極楽めぐり 伊豆極楽苑」という施設がある。なぜだか忘れたが地獄に興味を持っていた高校時代。購入してあげたばかりのスマートフォンで「地獄」と調べていた娘を両親はどう思っていたのだろう。そんな時に出会ったのがこの施設だった。

家族経営で古くから伝わる地獄や極楽の風景(主に地獄)をジオラマで再現していて、人が亡くなってからどのように地獄に行って地獄でなにが起きるのか。なかなか残酷なことをなかなかのリアルさで表現しているものだから、その施設を紹介しているサイトを見た日は自分が地獄に落ちている夢を見た。

と、語っている私だが、実際にこの施設に足を踏み入れたことは実はない。以前、家族と旅行中、たまたま前方に施設の看板代わりでもある大きな鬼の像が見えたときは、感動して「ここに行きたい!」と声を大にして言ったが、となりで運転していた父が小さな声で「え、秘宝館だぞ」と言った。「秘宝館とはなんぞや?」と当時純粋だった私も、なんだかいやな予感がしてネットで調べたら、一階は地獄を展示している施設なのだが、二階は秘宝館だった。私は必死に弁明したが、そのあとの気まずさと言ったらもう…。

そんなわけでそれからもなんとなく行けてない伊豆極楽苑だが、純粋ではなくなった今では秘宝館にもかなり興味があるので、今度セット券を購入して見学しようと思う。

秘宝館といえば、1980年ごろに全盛期を迎え、全国の温泉地にあったが、今では減少の一途をたどっている。大学生の時、友人と熱海の秘宝館にいったが、さびれた外観や内装とは裏腹に、なかなかの盛況具合だった。クジラの性器を触る為に並んだのは記憶に新しい。そしてなかなかの入館料だったのも忘れない。もっと激しいものを想像していたのだが、誰もがくすっと笑えるオープンな博物館だった。全盛期のころに秘宝館をめぐる旅をしてみたかった…!最近では若者たちの中でブームが再燃しているらしいので、今後に期待する。

歴史的な拷問器具のレプリカなどが展示されているのが有名な東京の明治大学資料館や、寄生虫の標本や資料がなかなか印象的で頭から離れない目黒寄生虫館など、少し変わった博物館は世の中に数多くある。

小説やエッセイを書く 三浦しをん さんが著作の『ぐるぐる♡博物館』では、様々な博物館が紹介されている。その中でも私が気になったのは、“風俗資料館”である。日本で唯一のSM・フェティシズム専門図書館なのだが、都心から離れた温泉街にある秘宝館とは違い、東京都内のJR飯田橋駅から徒歩4分のところにあるビルの中にあり、なんだか都会的だ。中は図書館のようになっていて、過去出版されたSM関係の雑誌などが並んでいる。この澄まし具合が気高くて逆に良い。ここは会員制ということもあり、秘宝館で友人と「きゃっきゃっ」とするのとは違い、ひとりでその時間を楽しむ、というところだろう。本物が集まる場所だ…。行ってみたい気持ちもあるが、そこに行けるまでまだ自分が成長できていない気がして踏み出せない。たまたま隣に居合わせたダンディなおじさまに専門用語で話しかけられてもうまく答えられず悔しい思いをするのは嫌なので、もう少し成長してからいこうと思う。

他にも、めがねミュージアムやボタンの博物館というかなりニッチな博物館も紹介されているのがおもしろい。そして、熱海の秘宝館もおまけとして紹介されているので、そちらもぜひ読んでみてほしい。

博物館は基本的にニッチなものだと思うのだが、時には「おいおいこれで経営できるのか?!」というレベルのものまである。どうかみんな自分の好きと思うものを恥じず、ニッチな博物館に足を運んでほしい。
私も次に伊豆極楽苑を通りかかったら、一緒にいるのが友人であろうと母であろうと父であろうと「行きたい!」と声を上げて訪問しようと思う。

(実業之日本社 コンテンツ・ライツ本部 鎌倉 楓)
『ぐるぐる♡博物館』 三浦しをん 著 1600円+税 実業之日本社《HH》

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