『日向坂46』始動に見るメンバーのグループ愛

2019年2月12日 11:42

印刷

 11日、動画サイトSHOWROOM内で、けやき坂46のメンバーが、自身のシングルデビューの発表などを行う配信を行っていたのだが、その最後に、サプライズでグループ名が「ひらがなけやき」から「日向坂(ひなたざか)46」になることが発表された。

【こちらも】けやき坂46 ハッピーオーラの源泉は?

 その内容を知らされた瞬間、配信していたメンバー(佐々木久美、斎藤京子、加藤史帆、小坂菜緒、柿崎芽美、佐々木美玲)は驚愕の表情を浮かべた数秒後、大喜びで抱き合って、中には涙を流すメンバーもいた。

 彼女たちは、「欅坂46の2期生」として集められた1期生と、「けやき坂46」2期生から構成されたグループで、元々は欅坂46の1.5期生、長濱ねるをリーダーとして結成されたアンダーグループである。しかしながら、「全員選抜システム」を選択している欅坂46において、選抜への昇格は望むべくもないまま、3年近く活動する間、欅坂メンバーの体調不良から代打として武道館でのライブを経験し、冠番組を持ち、アルバムを発売し、単独ツアーを行い、そして3月にシングルデビューを果たすという快挙を成し遂げた。

 クールでダンサブルな欅坂に対し、「ハッピーオーラ」の掛け声の通り、観客を楽しませてくる彼女たちに「日向坂」という名前も、鮮やかでさわやかなブルーのチームカラーもぴったり似合う。

 それにしても、正直な話、シングルデビューの発表以上に、改名に喜んで涙を流したというのは、いつも楽しそうな彼女たちの、表に見せない葛藤が垣間見えたような気がする。あの笑顔の裏で、表題曲を歌わせてもらう可能性がないまま、自分たちにできることをやろうとしていた日々が、一気に報われたというのは大きなカタルシスであっただろう。

 また、このニュースには関係者はもちろん、欅坂、乃木坂、AKBGのメンバーも好意的なコメントを発しており、暖かなスタートになったというのも、彼女たちの頑張りが多くの人たちが認めていたということを証明するものだと思う。

 以前の記事で、「けやき坂のライブは佐々木久美を父に、井口眞緒をドジな母親になぞらえたホームパーティのようだ」と書いたが、葛藤を共有し、全員で克服していく姿は、見る者を感動させ、あるいは勇気を与え、感謝を産むという、好循環をもたらすものといえるだろう。

 記者は、本来ならこれこそが秋元康氏が目指したアイドルグループのあるべき姿だったのではないかと思っている。

 おニャン子クラブにおいて、メンバー間の仲が悪く(セミプロのメンバーと完全な素人メンバーの反目)、空中分解していた経験を活かし、AKBでは「劇場」という空間を用意し、同じ釜の飯を食うことで、チームにおける人間関係を重視したグループを作った。

 だが、その意図を理解し、グループを引っ張っていた高橋みなみや秋元才加の影響力が薄れ、さらに「総選挙」という個人重視のイベントが盛況になると、チーム単位を応援していた「箱押し」文化が廃れてしまい、しまいにはメンバーのファン同士が足の引っ張り合いという、理想とは正反対のことをしはじめてしまう……。

 内心忸怩たるものを、秋元氏は抱えているように思えてならないが、一方で売り上げ重視ならそれも容認しなければならないという矛盾を解決することはできないというのは、NGTの事件を見ても明らかだ。

 乃木坂、欅坂、そして日向坂の坂道シリーズは、後発で、AKBGの失敗を目の当たりにしているせいだろうか、この点のバランス感覚は非常に優れている。

 以前、この記事でも触れた、生田・生駒の「乃木坂ファースト」意識もそうだし、欅坂における平手の存在を全員で支えるメンバーたちの姿も、一部のアンチグループにとっては目障りかもしれないが、多くのファンが好ましく感じるグループ愛を強く感じさせるものだ。

 始動した第三(吉本坂は除く)の坂道グループは、これからどのような進化を見せていくのだろうか?グループの形としての新しい進化を、是非見せて欲しいと思っている。(記事:潜水亭沈没・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事