ユニリタ Research Memo(1):クラウドソリューションを軸とした中期経営計画を公表

2018年6月15日 15:51

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記事提供元:フィスコ


*15:51JST ユニリタ Research Memo(1):クラウドソリューションを軸とした中期経営計画を公表
■要約

1. 会社概要
ユニリタ<3800>は、金融や製造を始め、幅広い業種向けにITシステムの運用管理を行うパッケージソフトウェアの開発・販売・サポートのほか、データ活用ソリューションの提供を手掛けている。2015年4月に連結子会社の(株)ビーコン インフォメーション テクノロジー(以下、ビーコンIT)を吸収合併するとともに、社名を株式会社ビーエスピー(BSP)から株式会社ユニリタに変更。成長領域であるデータ活用分野に強みを持つビーコンITとの経営資源の統合を図ることで、環境変化に対応するための事業構造変革を進めてきた。ITの役割が「守り」(業務効率化やコスト削減等)から「攻め」(ビジネスの競争優位性を実現する手段)へ変化するなか、「システム運用」と「データ活用」領域における強みを生かし、デジタル変革に取り組む企業の業務課題を直接解決するソリューション提供力の強化に取り組んでいる。

2. 2018年3月期決算の概要
2018年3月期の業績は、売上高が前期比1.7%増の7,056百万円、営業利益が同7.5%減の1,347百万円と微増収ながら減益となり、期初予想を下回る結果となった。売上高は「クラウド事業」が大きく伸びたほか、「プロダクト事業」も増収を確保したものの、「ソリューション事業」及び「メインフレーム事業」の縮小により微増収にとどまった。期初予想を下回ったのは、「プロダクト事業」の上期未達分をカバーできなかったことと、それに伴う製品導入のための技術支援サービスの受注不足により「ソリューション事業」が落ち込んだことが理由である。特に、営業とセールスエンジニアが一体となったソリューション提案活動を展開したものの、成果に至るまでに時間を要したことが上期業績の未達要因となった。もっとも、下期には活動の成果が出てきたことやパートナー企業とのアライアンスなどが奏功し、業績は上向きで推移している。一方、損益面では、特別なコスト要因はなかったものの、前期にあった大型案件の反動減や先行投資的な費用の増加などの影響により営業利益率は19.1%(前期は21.0%)に低下した。

3. 新中期経営計画
同社は、2021年3月期を最終年度とする新たな中期経営計画を公表した。企業を取り巻くIT環境が急速に変化するなかで、顧客のビジネス成長に貢献する「戦略的ITパートナー」として事業拡大を目指す方針である。最終年度の目標として、売上高110億円(3年間の平均成長率16.0%増)、営業利益20億円(営業利益率18.2%)、ROE 10.7%を掲げている。市場が縮小傾向にある「メインフレーム事業」を除いて、すべての事業が伸長する計画となっているが、とりわけ需要が拡大している「クラウド事業」を成長分野と位置付けており、独自のクラウド基盤の提供やクラウドソリューションの強化、業界SaaS事業への新たな取り組みが戦略の目玉となっている。

4. 2019年3月期の業績見通し
新中期経営計画の初年度となる2019年3月期の業績予想について同社は、売上高を前期比31.8%増の9,300百万円、営業利益を同3.9%増の1,400百万円と増収増益を見込んでいる。売上高が大きく拡大するのは、(株)無限の連結化により「システムインテグレーション事業」が新たに追加されるためである(1,550百万円の上乗せ要因)。ただ、その分を除いても、注力する「クラウド事業」や「プロダクト事業」の伸びなどにより前期比9.8%増の増収を実現する想定となっている。一方、損益面では、増収により増益を確保するものの、無限の連結化による影響(利益率の低下要因)のほか、人材投資(ベースアップ等)や既存及び新規事業への投資に伴う販管費の増加により、営業利益率は15.1%(前期は19.1%)に低下する見通しである。

5.株主還元方針
同社は、安定かつ持続的な増配の実施を目的として、これまでの連結配当性向基準から株主資本配当率(DOE)を基準とした配当方針に変更した。2019年3月期の配当については、前期比8円増配の年間54円(中間27円、期末27円)を予想している。また、新中期経営計画によれば、2021年3月期のDOEを4.5%(2018年3月期実績は3.5%)に引き上げ、1株当たりの配当金を年間71円に増加させる計画となっている。

弊社では、需要が拡大している「クラウド事業」のラインナップ(ソリューション化)が充実してきたことや、前期業績の出遅れの原因となったソリューション提案活動が軌道に乗ってきたこと、無限の連結化により上流からワンストップで提案できるグループエコシステムがさらに強化されたことなどから、2019年3月期の業績予想の達成は十分に可能であるとみている。また、中期経営計画の実現に向けては、ポテンシャルの大きな業界SaaS事業の進展に注目している。いかに先行者利益を獲得するかが成功のカギを握ると判断しており、その展開スピードと収益化への道筋をフォローしたい。

■Key Points
・2018年3月期は上期出遅れ分をカバーできずに微増収ながら減益(ただし、下期業績は上向きで推移)
・顧客のデジタル変革ニーズに対応するクラウドソリューションを軸とした新中期経営計画を公表
・特定業界に特化したSaaS事業への取り組み等により成長を加速する方針
・安定かつ持続的な増配の実施を目的として、株主資本配当率(DOE)を基準とした配当方針に変更

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)《NB》

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