エラン Research Memo(4):入院患者と家族、病院、リネンサプライ業者にメリット

2018年5月15日 15:14

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記事提供元:フィスコ


*15:14JST エラン Research Memo(4):入院患者と家族、病院、リネンサプライ業者にメリット
■事業概要

4. 入院患者と家族、病院、リネンサプライ業者と「Win-Win-Win」の関係を構築
CSセットは、サービスを利用する入院患者・入所者及びその家族だけではなく、病院・介護老人保健施設等、さらにリネンサプライ業者等にとっても大きなメリットのあるサービスである。したがってCSセットのビジネスは、エラン<6099>が中心となって安心・快適な入院生活をサポートする「Win-Win-Win」の関係を構築している。

CSセットを利用する入院患者・入所者とその家族にとっては、入院・入所の際に身の回り品を準備しなくても「手ぶらで入院・入所」でき、さらに退院・退所の際にも「手ぶらで退院・退所」できるというメリットがある。短期間の入院・入所の場合には、必要な身の回り品を新たに買いそろえるよりも経済的メリットがあり、衣類・タオル類等の日々の交換・洗濯や日常生活用品の補充といった作業・手間を省くことができるという物理的・時間的・心理的メリットがある。

家族にとっては、日常生活用品の補充を主目的としたお見舞い訪問ではなく、本来のお見舞いや看病に専念できる。入院患者・入所者にとっては家族に日常生活用品を準備・補充させているという気兼ねがなくなるというメリットもある。

利用者の多くは高齢者であるが、若年層にもメリットは大きい。共働き世帯や単身世帯においては、入院生活時の日常生活用品の準備や補充を頼める家族がいないケースも多いが、1人でも安心である。このように「手ぶらで入院・退院(入所・退所)」を実現させるCSセットへの評価は高い。

病院・介護老人保健施設等においては、慢性的な看護師・介護士等の不足状況が続いているが、同社のCSセットを導入することで、入院患者・入所者の入院生活時の日常生活用品まわりの作業(物品の不足等が生じた場合の家族への連絡や、個人が持ち込んだ衣類・タオル類の交換・洗濯・消毒などにかかる作業等)を省いて、本来の看護・介護業務に専念することが可能になる。このため看護師・介護士等の業務効率化や労働環境改善につながるというメリットがある。

また、入院患者・入所者が独自で入院生活時の日常生活用品を持ち込む場合との比較において、使用後交換待ちの衣類・タオル類がベッド周りで保管されることもなくなり、ベッド周りがすっきりと片付くため、院内感染対策・衛生管理徹底というメリットにもつながっている。

さらに、保険適用外のサービスに関して、病院・介護老人保健施設等が自ら患者・入所者に利用料金を請求する場合、厚生労働省からの行政指導に従った厳格な対応が必要となるが、同社のCSセットは行政指導に適合した形態で提供しているため、行政指導リスクを低減できる。そして、同社からの業務委託手数料が保険適用外の収入となるため、病院・介護老人保健施設等にとって、新たな保険外収益の増加や収益機会の創出につながるというメリットがある。

なお、病院・介護老人保健施設等におけるCSセット導入ニーズとしては、大都市圏では収入・収益機会の増加、中都市圏では看護師・介護士等の労働環境改善、地方都市圏では入院患者・入所者へのサービス向上といった要望が強いようだ。

リネンサプライ業者等は、病院・介護老人保健施設等と契約して、医療保険・介護保険の対象となる寝具類(布団、包布、シーツ、枕、枕カバー)の納入や洗濯業務を受託している。同社のCSセット導入によって、これまでリネンサプライ業者等が扱っていなかった衣類・タオル類の洗濯業務や、日常生活用品の販売といった新たな収益機会を得るというメリットがある。

また同社は自らがリネンサプライ業に参入することを考えておらず、CSセットの提案に当たっては、対象となる病院・介護老人保健施設等と既に契約・取引している各地域のリネンサプライ業者等に、リネン品の洗濯業務を委託することを基本方針としている。リネンサプライ業者にとっての脅威は、自社が寝具類の供給・洗濯などを行っている病院等に他の同業者が関与することであり、同社のこの基本方針によって、リネンサプライ業者等の多くは同社との連携にメリットを感じている。

同社のCSセットは、サービスを利用する入院患者・入所者とその家族、病院・介護老人保健施設等、リネンサプライ業者等のいずれにとってもメリットがあり、同社を中心に安心・快適な入院生活をサポートする「Win-Win-Win」の関係を構築している。

5. 高い参入障壁
入院セットビジネスは一見すると参入障壁が低いように考えられるが、採算ラインの見極め、行政指導に適合したサービス運営、看護・介護現場への説明・運用及び請求・回収業務などの面において、ノウハウの蓄積は容易ではなく、実は想定以上に参入障壁が高いとしている。


CSセットの契約施設数及び月間利用者数は増加基調
6. 契約施設数及び月間利用者数は増加基調
CSセットの契約施設(病院・介護老人保健施設等)数、及び月間利用者数は増加基調である。

契約施設数は2017年12月期末時点で992施設となり、2016年12月期末との比較で228施設増加(同社単体が853施設で89施設増加、及び子会社化したエルタスク139施設が純増)した。2009年12月期末の120施設を起点にすると、エルタスクの子会社化も寄与して年率30.2%の増加率となる。契約施設のストックが大幅に積み上がっている。

月間利用者数は2017年12月(単月)時点で168,410人となり、2016年12月時点との比較で48,384人増加(同社単体が149,470人で29,444人増加、及び子会社化したエルタスク18,940人が純増)した。2009年12月の13,878人を起点にすると、大型急性期病院との契約増加、エルタスクの子会社化も寄与して年率36.6%の増加率となる。利用者数も大幅に積み上がっている。


契約施設数の増加でサービス利用料が増加するストック型収益モデル
7. ストック型収益モデル
契約施設数の積み上げに伴ってサービス利用者数が増加するというストック型収益モデルであることも特徴だ。

入院セットサービスの認知度向上に伴って他業者と競合するケースが増加しているため、契約施設(病院・介護老人保健施設等)解約率は、2017年12月期に年率3.0%に上昇したが、依然として低水準だ。新規契約獲得と低水準の解約率で、契約施設数及びサービス利用者数とも順調に積み上がっている。

なお1施設当たりサービス利用率や1利用者当たり利用単価については非開示だが、入院患者の回転が少ない療養型施設でサービス利用率が上昇すれば、売上増加とともに施設当たり業務コスト比率が低下するメリットが発生しやすくなる。一方で入院患者の回転が速い大型急性期病院では、利用者数増加が売上増加につながるが、同時に請求関連業務のコストが増加しやすくなるデメリットもある。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田 雅展)《HN》

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