マウスが物体の輪郭を認識する際の脳の働きを明らかに―九大・大木研一氏ら

2015年12月27日 21:00

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今回の研究では、外側膝状体の神経細胞にカルシウム感受性タンパク質(GCaMP6s)を発現させた。外側膝状体から視覚野に入力する軸索を、視覚刺激を与えながら2光子カルシウムイメージングすることにより方位選択性を調べた。(九州大学の発表資料より)

今回の研究では、外側膝状体の神経細胞にカルシウム感受性タンパク質(GCaMP6s)を発現させた。外側膝状体から視覚野に入力する軸索を、視覚刺激を与えながら2光子カルシウムイメージングすることにより方位選択性を調べた。(九州大学の発表資料より)[写真拡大]

 九州大学の大木研一教授・根東覚助教らの研究グループは、マウスの脳内で、物体の輪郭を認識するメカニズムの一端を明らかにした。

 視覚情報は、まず網膜によって捉えられ、外側膝状体を経て大脳視覚野へと伝えられ、視覚野や高次視覚野で情報が処理された結果、物体の形を認識できると考えられている。物体の形を 認識するのに重要な情報として「輪郭」があり、視覚野の神経細胞には特定の傾きの線に反応するものが存在し、この性質は「方位選択性」と呼ばれている。

 今回の研究では、マウスの脳内で外側膝状体の神経細胞に神経活動の上昇により明るさが変化するカルシウム感受性タンパク質(GCaMP6s)と呼ばれるセンサーを発現させ、2光子励起顕微鏡を用いて観察した。その結果、外側膝状体から視覚野に入力している軸索は、あまり方位選択性を持たないことを発見した。

 このことから、マウスの視覚野で外側膝状体からの入力を直接受け取る神経細胞の方位選択性は、高等哺乳類と同様に、大脳の神経回路によって形成されていることが示唆される。

 今後は、今研究成果が、視覚情報が大脳で処理される仕組みの解明や、より広く哺乳類に共通した大脳の神経回路による情報処理のメカニズムの理解にもつながることが期待される。

 なお、この内容は「Nature Neuroscience」に掲載された。

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