筑波大とデサント、ドルフィンキックの出力をアップする高機能水着を開発

2015年11月23日 11:41

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今回の研究で使用されたドルフィンキック動作分析システム(筑波大学の発表資料より)

今回の研究で使用されたドルフィンキック動作分析システム(筑波大学の発表資料より)[写真拡大]

  • 股関節の内転・内旋動作と内転筋群を示す図(筑波大学の発表資料より)
  • ドルフィンキック中の各筋肉群の活動状況を示す図。従来は大腿直筋と大腿二頭筋が主導筋と考えられていたが、実際には蹴りおろし時に内転筋群の筋活動も活発で、ドルフィンキックの泳速度を上げるためには、内転筋群の関与が重要であることが示唆された。(筑波大学の発表資料より)

 筑波大学の高木英樹教授らの研究グループは、デサントとの共同研究により、ドルフィンキックの出力をアップする“キックアシストシステム”を搭載した新たな高機能水着の開発に成功した。

 2008年の北京オリンピックを機に登場した高速水着は、世界新記録を連発する原動力となったが、国際水泳連盟は水着の優劣によって勝敗が決まってしまうことを懸念し、2010年に大幅なルール変更を行い、厳しい規制をかけた。これにより、水着開発の余地は大幅に狭められ、水着単体での機能向上は望めない状況となっていた。

 国際水泳連盟による水着規制が強化されて以降、水着開発の余地は限られていたため、本研究グループは、水着単体の機能向上を目指すのではなく、理想的な泳ぎを実現しやすい水着を開発するというコンセプトのもと、エリートスイマーの泳動作の分析に着手した。しかしながら、泳法にはクロール、背泳ぎ、平泳ぎ、バタフライと4つもスタイルがあり、さらに泳ぎ方は個人差が大きいため、何を持って理想的な泳ぎとするのかという、根源的な課題があった。

 今回の研究では、予備実験とディスカッションを重ね、動作がシンプルで、かつスタートやターン局面において、どのスイマーでも用いるドルフィンキックを分析対象とし、水中でのドルフィンキック動作を精度よく計測するために、高輝度の防水LEDを身体部分マーカーとして用い、さらに動作解析ソフトを用いて、ほぼ自動で解析できるシステムを構築した。

 その結果、エリートスイマーがドルフィンキックを行う際、蹴り降ろし時に 股関節を内転・内旋させ、足部が船舶のスクリューのような3次元的な回旋運動を行っていること、さらに蹴り降ろし時は、大腿の内側にある内転筋群が活発に活動していることが明らかになった。

 そこで研究グループは、水着にこの蹴り下ろし動作をアシストする機能を持たせるために、新たに開発した伸長応力の高い「ライトニングバンド」を新水着のウエストから内股に配置し、さらに、蹴り上げ時に重要な股関節伸展筋をサポートするため、大腿部の中央から臀部にも「ライトニングバンド」を配置し、蹴り下ろしと蹴り上げの両局面をサポートした“キックアシストシステム”を搭載した。そして、エリートスイマーからノンエリートスイマーを対象とした新水着の実着試験を行ったところ、ターン後のドルフィンキック泳速度において、従来水着に比べて平均2.4%の泳速度アップが実現された。

 今後は、さらに泳動作のアシスト機能を向上させ、より泳速度アップに資する水着を目指して、次世代水着開発に取り組む予定となっている。

 デサントは、今回開発した水着を同社の「アリーナ」ブランドから「アクアフォース ライトニング」として1月に発売する予定。

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