キハダマグロの完全養殖化に一歩前進、卵から幼魚までの飼育に成功―近大・澤田好史教授ら

2015年9月27日 20:18

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陸上水槽で人工孵化し育てられたキハダ稚魚が収穫されて海面生簀へ移される様子(近畿大学などの発表資料より)

陸上水槽で人工孵化し育てられたキハダ稚魚が収穫されて海面生簀へ移される様子(近畿大学などの発表資料より)[写真拡大]

  • パナマ・アチョチネス沖合の海面に設置されたキハダ稚魚・幼魚飼用生簀。生簀の直径は20m。中央に見えるのは配合飼料を給餌する自動給餌機の架台。(近畿大学などの発表資料より)
  • 生簀網の中を泳ぐ人工孵化キハダ稚魚。(近畿大学などの発表資料より)
  • 海面生簀での飼育が終わり、再び陸上水槽に運ばれて飼育されているキハダ幼魚。写真は水槽壁面に衝突死した個体。全長約30cm。(近畿大学などの発表資料より)

 近畿大学の研究グループは、人工孵化させ、陸上水槽で育てたキハダの稚魚を海面生簀で飼育することに成功した。

 近畿大学は2002年に世界で初めて太平洋クロマグロの完全養殖に成功している。その後、パナマの水産資源庁(ARAP)と全米熱帯マグロ類委員会(IATTC)からの要請を受けるとともに、将来の日本のマグロ供給への貢献を考慮して、資源枯渇が懸念されるキハダの完全養殖を目指していた。

 パナマのIATTCアチョチネス研究所の陸上水槽で飼育されていたキハダ親魚は、死亡が続き産卵が停止。さらにその後補充された親魚の年齢が若く、産卵再開後も卵質が悪く、孵化した仔魚の生残りが悪かったため、新たなキハダの仔稚魚の飼育研究や飼育技術開発ができず危機的な状況にあった。

 そこで、近畿大学専門家と相手国研究者が協力して、新たにキハダ野生親魚となる候補魚の捕獲を継続的に行うことで産卵再開を実現し、良質な受精卵が得られるようになった。その後、配合飼料やその給餌方法の工夫、波の荒い海域での生簀維持方法の工夫、生簀に生物が付着しないための努力など積み重ねることで、今回、受精卵から幼魚まで飼育することに成功した。

 今後は、さらに研究を進めることで、キハダの完全養殖を実現することが期待されている。

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