東大など、コバルト酸化物で「悪魔の階段」と呼ばれる磁気構造を解明

2015年6月7日 18:01

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様々な分数のピークが共存する「悪魔の階段」状態。(東京大学の発表資料より)

様々な分数のピークが共存する「悪魔の階段」状態。(東京大学の発表資料より)[写真拡大]

 東京大学の和達大樹准教授らの研究グループは、巨大磁気抵抗を示すコバルト酸化物にスピン配列の周期として理論的に考え得る全ての状態が存在し、それらが磁場をかけることにより変化する「悪魔の階段」と呼ばれる様子を捉えることに成功した。

 物質科学の分野では、電子のスピンの自由度を活かしたスピントロニクスが注目を集めている。コバルト酸化物SrCo6O11は、磁場をかけたときに、同じ方向と逆方向に揃ったスピンの比率が2対1になる状態が安定であると予測されているが、磁気構造は全く明らかになっていなかった。

 今回の研究では、0.20×0.20×0.05mm3程度の非常に小さな正六角形のコバルト酸化物を持ちって、ドイツの放射光施設BESSY IIで、共鳴軟X線回折実験を行った。その結果、各温度で測定されたX線回折パターンで、ほとんど全てのスピン配列の周期性に対応する分数値の回折ピークが観測され、各々の温度で様々な周期の磁気秩序が共存している様子を捉えることに成功した。

 これは、磁気的な相互作用の正負が距離によって変化するモデルを理論的に解くことで得られる「悪魔の階段」の状態が、実際の物質で実現している事を示している。コバルトを含む鉄やマンガンなどの遷移金属の物質のスピンでは初めての発見という。

 さらに、磁場をかけてこれらの分数のピークの振る舞いを観測し、磁化の測定で見られたステップを生み出す磁気構造の様子を完全に解明した。

 研究グループでは今後、「悪魔の階段」型の磁気構造をさらなる系統的な研究により他の物質にも見つけることを目標にしているという。また、電気抵抗や磁化が階段状に「とびとびの値」を取ることを活かした、新しいタイプのスピントロニクス材料の開発に繋げたいとしている。

 なお、この内容は「Physical Review Letters」に掲載された。論文タイトルは、「Observation of Devil's Staircase in the Novel Spin Valve System SrCo6O11」。

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