理研、シロアリが腸内の微生物によってエネルギーを獲得する仕組みを明らかに

2015年5月14日 20:56

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今回の研究で明らかになった細胞内共生細菌の役割を示す図(理化学研究所の発表資料より)

今回の研究で明らかになった細胞内共生細菌の役割を示す図(理化学研究所の発表資料より)[写真拡大]

 理化学研究所の大熊盛也室長らの研究チームは、シロアリの腸内に共生するセルロースを分解する原生生物の細胞内共生細菌の多重の機能を解明し、シロアリが腸内微生物によって高効率にエネルギーと栄養を獲得する仕組みを明らかにした。

 シロアリは、木材家屋などに被害をもたらす害虫であると考えられているが、生態学上は森林の枯れ木の分解者として重要な生物に位置づけられている。シロアリが木質主成分であるセルロースを強力に分解できるのは、主に腸内に共生する微生物群によるもので、その詳細は明らかになっていなかった。

 今回の研究では、オオシロアリの腸内でセルロースの分解に最も重要な働きをする大型の原生生物(Eucomonympha属)を取り出し、還元的酢酸生成と窒素固定の2つの機能について調べた。その結果、どちらの機能も高い活性がみられ、腸内微生物群全体の活性の、還元的酢酸生成は約6割、窒素固定ではほぼ全ての活性に相当するものであることが分かった。

 また、Eucomonympha属の原生生物には、スピロヘータという細菌が1細胞に1万以上も生息し、腸内の細菌種のなかでも最も数の多い細菌であることが明らかになった。さらに、ゲノム解読を行ったところ、細胞内共生細菌は還元的酢酸生成に加えてセルロース分解・代謝の中間物質である糖も同時に利用することで、窒素固定に必要なエネルギーを補っていることも明らかになった。

 今後は、シロアリ腸内における高効率の共生システムをさらに解明していくことで、セルロース資源の効率的な利用が期待できると考えられている。

 なお、この内容は「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America」に掲載された。論文タイトルは、「Acetogenesis from H2 plus CO2 and nitrogen fixation by an endosymbiotic spirochete of a termite-gut cellulolytic protist」。

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