アウディ・日産の自動運転車は本当に実用化するのか

2015年3月12日 17:31

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日本国内での自動運転車の実用化は2020年までに実現するか?写真は、日産自動車が開発中の自動運転車。

日本国内での自動運転車の実用化は2020年までに実現するか?写真は、日産自動車が開発中の自動運転車。[写真拡大]

 今年に入り、アウディが米国で2017年に自動運転車を市販化すると発表した。日産も2020年をメドに、自動運転車を市場投入すると言われている。既に、市販車にはエマージェンシーブレーキが取り入れられ、人や標識・車線などを認識して危険を知らせる安全装置が実用化している中、特に驚くほどの出来事ではないのかもしれない。

 実は、自動運転の技術はもっと以前から実用化されていたのだ。いわゆる「ゆりかもめ」に代表される新都市交通システムなどがそれだ。ただ、このシステムは軌道(道路)側のインフラも整備されていることが前提で、国土交通省などが推進しているITS(高度道路交通システム)の考え方も、基本的には同様だ。これに対し、アウディや日産の技術は自動車のみで完結している。すなわち、現状の道路上で自動運転が可能というわけだ。

 このシステムを簡単に説明すれば、道路における様々な状況や変化を、人に代わってミリ波やカメラなどを使ったセンサーで察知し、その情報を高度なコンピュータ処理をして自動車に伝えることで、運転操作を行うというものである。今回のアウディの発表にあるように、この技術で公道900㎞を安全に走行したのであれば、実用化はそう遠くないと期待が膨らんでも不思議はない。

 しかし、これが「2017年」や「2020年」に日本で実用化するのかというと、クリアすべき課題が多すぎるのではないかといわれている。まず、「事故の責任」についてだ。

 基本的に交通事故は運転者に責任が帰結するが、自動運転の場合は誰が責任を負うかという問題が発生する。自動車保険制度や道路交通法なども絡み、複雑な調整が必要となってくるわけだ。さらに、ドライバーが運転操作をしなくなることで、自動車の移動手段としての「道具化」が進むことになり、ファンやマニアという嗜好需要を失う可能性が出てくる。言い換えれば、マーケットが縮小しかねないということだ。

 自動車の「安全性向上」は必要不可欠な問題だが、「おもしろくないクルマ」ばかりになってしまえば必要な人しか買わなくなる。それが大規模な業界再編につながってしまえば、自動車業界全体の浮沈にも関わりかねない。「安全」は大切な課題だが、「遊び心」にも注力する必要があるのではないだろうか。(記事:松平智敬・記事一覧を見る

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