九州大、高分子半導体中に光が当たると電荷が生成されるメカニズムを明らかに

2015年2月18日 21:14

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P3HT分子の集合状態と電荷生成の模式図(九州大学の発表資料より)

P3HT分子の集合状態と電荷生成の模式図(九州大学の発表資料より)[写真拡大]

 九州大学の田中敬二教授・川口大輔准教授らによる研究グループは、高分子半導体中で電荷が生成されるメカニズムを明らかにした。

 近年、有機薄膜太陽電池や有機電界効果トランジスタなど、有機・高分子エレクトロニクスデバイスが注目を集めている。その構成成分である高分子半導体の中でも、P3HT(ポリ3-ヘキシルチオフェン)は電気を流す能力が高く、溶剤に溶かして塗布することもできる。しかし、これまで、P3HTが光を吸収すると電荷を生成するメカニズムは解明されていなかった。

 今回の研究では、P3HTに光を照射して、正電荷と負電荷のペアが生成された後、それらが自ら自由電荷に分離することを実験的に示した。さらに、電荷の生成は室温付近(約27℃)で早くなること、そしてP3HT中のチオフェン環のねじれ運動は、室温付近を境に低温では凍結され高温では解放されることを見出した。この結果は、チオフェン環のねじれ運動が電荷形成に関与する重要な因子であることを示している。

 今後は、P3HTをはじめとする高分子半導体の分子設計や有機・高分子エレクトロニクスデバイスの材料設計、そしてより薄いディスプレイの開発やペンキのように塗るだけで簡単に作れる太陽電池の開発に繋がると期待されている。

 なお、この内容は2月13日に「Scientific Reports」に掲載された。

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