【特報】岩盤規制を打破し、ビジネスチャンスを掴め!

2014年11月25日 18:03

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記事提供元:さくらフィナンシャルニュース

【11月25日、さくらフィナンシャルニュース=東京】

■国家戦略特区を利用すべし


 11月21日に衆議院解散という政治の急変が起こる前、新しいビジネスの種を見つける人たちのためのセミナーが粛々と行われていた。内容は、国家戦略特区ワーキンググループ委員の原英史氏(政策工房代表取締役社長)をはじめ数名の関係者が、投資家や経営者に向けて国家戦略特区の現状から今後の展開までを解説するというものだ。

 誰よりも先に新規ビジネスに参入したい経営者や、投資先を探している人にとっては欠かせない情報が随所に織り込まれ、充実したセミナーだったのではないか。ここでは、多くのビジネスパーソンに向けて、ビジネスにつながるエッセンスだけでもご紹介させていただく。

 国家戦略特区のメリットは、今春指定された6カ所(東京圏・関西圏・新潟市・養父市・福岡市・沖縄県)で、非常にビジネスがしやすくなるということだ。通常の制度以上に規制が緩和される。それも1つの規制だけではなく現在(2014年11月19日時点)15〜16個あり、年明けの通常国会では、倍増しようとしている。

 この規制緩和のメニューを、指定された地域の人たちは使うことができるため、事業環境が他の地域よりも良くなるので大きなメリットにつながる。当然そこでは投資が進む。

 また、この6つ地区では構造改革特区や総合特区の規制改革メニューも使えるので、相当多くの特例措置を活用することができる。かなりいい環境で仕事ができるポテンシャルがあり、ビジネスチャンスが生じるのではないか。

■国家戦略特区の最大の魅力は制度設計参画


 構造改革特区(小泉政権時)、総合特区(民主党政権時)と国家戦略特区との最も大きな違いは、構造改革特区や総合特区では地方自治体が手を挙げてからスタートしたが、国家戦略特区では国が主導するということだ。さまざまな担当官庁を「置き去り」にして、特区担当大臣が自ら引っ張って行く。

 そして、特区担当大臣と地方自治体の首長、民間の代表者が、特区ごとに区域会議(ミニ独立政府)を開催し、さまざまな制度改正を企画する。

 この制度が画期的なのは、区域会議において国、自治体、民間の三者が対等になるということ。特区担当大臣と同じような制度設計が、首長や民間代表者でもできるようになる。

 さらに面白いのは、この区域会議でどんどん追加の提案ができ、新たな規制改革が処理できる。またできなければ、その上部組織である諮問会議に諮ることができ、総理の目の前で新たな規制改革の追加を行うことも可能だ。

 では、具体的に何がどう変わるのだろうか

 ・規制改革メニュー例〈その1〉雇用

 雇用については「雇用条件の明確化」が進められている。主に、解雇ルールの見直しを計るという。一般的な企業でもグローバル企業でも、解雇の問題は非常に重大でセンシティブである。労働の現場において解雇せざるを得ない経営側の理由があったとしても、後の裁判でひっくり返るというケースもある。

 こうした事態を事前に防げるようなガイドラインをつくり、特区で重点的に運用することが試される。正社員を雇用するのに二の足を踏む企業にとってだけでなく、雇われる労働者にとっても、雇用条件がガイドラインとして文書化されれば、お互いに尊重し合える職場になることが期待される。

 ・規制改革メニュー例〈その2〉医療

 医療では、国際医療拠点を推し進める中で外国人医師の業務解禁がある。さらに病床規制の問題として、病院を建設するときにベッド数が決まっていて、病床の新設や増床ができない状況になる中、特区については柔軟に上乗せできるようにした。

 内需が期待できない現状、メディカルツーリズムは外貨を得る手段になり得ることはもちろん、高齢化社会における福祉の充実の一つとしての増床は欠かせないだろう。

 ・規制改革メニュー例〈その3〉農業

 農業委員会という農家が選出した委員会組織の在り方を変えようという提案が出ている。農業委員会は、農家の農地の所有権や賃借権の移転を許可するところだが、「自分たちの所有物を自分たちで認可する」という仕組みは極めて不透明なので、それならば地方自治体や行政に権限を移したらどうだということだ。

 これで、真っ当な事業計画のもと、企業が農地を農業発展のために使用できる第一歩が整ったことになる。だが、残念なことに、約1700ある日本の地方自治体の中で、「やりたい」と言ったのは養父市だけだった。

 ※ここで取り上げたのは「雇用」「医療」「農業」それぞれのごく一部であり、また、その他にも「都市再生・まちづくり」「歴史的建築物の活用」などについても規制改革メニューはある。詳細は、首相官邸のホームページ「国家戦略特区特集ページ」(http://www.kantei.go.jp/jp/headline/kokkasenryaku_tokku2013.html)を参照されたし。

■新たな規制改革メニューを押さえて新規ビジネスを考える


 さらに、今臨時国会で審議される予定だった規制改革の一部は以下になる。

 ・追加メニュー例〈その1〉ビジネス環境の改善
  東京圏、大阪圏、福岡市で、登記、税務、年金といった開業に必要なさまざまな手続きをワンストップで可能にする「起業ワンストップセンター」を設置する。

 そこに行けば行政窓口があるといったことを初めて特区で実現する。煩雑だったこれまでの仕組みを一気に簡略化する。

 ・追加メニュー例〈その2〉持続可能な社会保障制度の構築

 もう1つは、医療法人の理事長要件の見直しだ。基本的に医療法人の理事長は医師でなければならない(現状、医師以外の理事長はごく一部で認められているが、医療法人約5万件のうちの400件程度で、1%にも満たない)。

 しかし、医療法人の経営に富んだ人物は医師以外にもいることは確実であり、その門戸を広げようという試みである。

 もう1つは、「地域限定保育士」の創設。待機児童問題は保育士不足と同レベルの喫緊の課題だ。保育士試験は、都道府県が実施する試験制度で年に1度しか受験機会がない。また合格率も低く、「もっと受験機会を増やして欲しい」という声が多かった。しかし回数を増やしても各自治体がコストを負担するため、例えばA県でコストをかけて2回試験を行っても、全国から集まってきた受験者が合格後、地元に帰ってしまい、A県の保育士不足は解消しなかった。

 そこで「地域限定保育士」の制度では、試験を開催したA県で3年勤めてもらい、その後は全国に通用する保育士資格になるよう変更した。

 この他にも「公的インフラ等の民間解放」として公設民営学校の解禁や官民の垣根を越えた人材流動化、「新たな地方創成モデルの構築」としてNPO法人の設立手続きの迅速化や国有林野の民間貸付・使用拡大などが追加メニューとして閣議決定されている(詳細は前掲の「国家戦略特区特集ページ」を参照)。

■今後、アベノミクス(成長戦略)は期待してよいのか?


 現状では、方向性はいいがやっていないことがまだたくさんあると記者は思う。

 「方向性がいい」という評価は、稀にみることで、過去につくられた成長戦略は(成長戦略は第一次安倍内閣以後、継続してつくられている)一言でいうならばすべて失敗してきた。

 理由は、成長産業と言われてきた農業、医療、介護、教育、環境等は、まさに岩盤規制のある領域として手をつけられなかった。岩盤規制に手を入れることなく単に「成長する産業だ」と言ったところで成功するはずなどない。

 今回の第二次安倍内閣では、この根本課題であった岩盤規制の改革を成長戦略の根幹に据えており、ビジネスをやる人たちがいかにビジネスがやりやすい環境をつくるかというところに最大の力点を置いている。

 その部分で、これまでの成長戦略とは大きく異なる。安倍総理自身が「岩盤規制改革を2年でやる」(2014年1月のダボス会議での発言)と公言していることからも、さらなる加速化が期待できるだろう。

 また、現在6地域が指定されているが、必ずしもそれで終わりではないだろう。

 「農業改革の拠点は養父市と新潟市だけでいいのか、もっと他の場所で実験をしてもいいのでは」

 「福岡市がスタートアップ企業、創業企業を増やそうとしているが、他に数カ所あってもいい」

 という、新たな規制改革メニューとともに特区の追加をするという議論が行われると考えられる。

 一方、未だ本当の意味での岩盤規制改革が行われておらず、根本的な規制を改革しないまま企業が参入してきても成長産業としても難しいのではないか。議論は国家戦略特区ワーキンググループで行われている最中で、大きな課題だ。

 今後さらに経済の活性化を進めるためには、民間から「こういう岩盤規制改革をやってくれるのであれば、こういう事業をやりますよ」ということを次々に打ち出してほしい。それが規制改革の推進力を上げ、ビジネスチャンスを掴む早道ではないか。【了】

 ※ 本稿は、「さくらファイナンシャルニュース×政策工房 共同セミナー『国家戦略特区(規制改革の突破口)について』の内容を一部まとめたものです。

 宇佐美智久(うさみ・ともひさ)/特区「BIZ」編集部
 熊本県八代市生まれ。中央大学法学部卒。各出版社を経て、2009年眞人堂株式会社を設立し、企業のPR・プロモーションを主として活動。

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※この記事はSakura Financial Newsより提供を受けて配信しています。

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