九大、半導体性カーボンナノチューブの高濃度分離を可能に

2014年10月6日 17:46

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可逆に形成される超分子型可溶化剤を用いた半導体性単層CNTの選択的抽出と、再生可能なプロセスサイクルを示す図(九州大学の発表資料より)

可逆に形成される超分子型可溶化剤を用いた半導体性単層CNTの選択的抽出と、再生可能なプロセスサイクルを示す図(九州大学の発表資料より)[写真拡大]

 九州大学の中嶋直敏教授・利光史行特任助教らによる研究グループは、半導体性カーボンナノチューブを高濃度で分離することのできる可溶化剤を開発した。

 カーボンナノチューブ(CNT)には半導体性CNTと金属製CNTがあり、家電やコンピューターの材料として使用する際には2種類のCNTを分離・精製する必要がある。これまでポリフルオレンなどの吸着可溶化分子を用いて半導体性CNTを抽出する方法は存在していたが、CNTを精製した後に吸着可溶化分子自体が不純物として残ってしまうという課題があった。

 今回の研究では、「結合生成—解離」が可逆的に制御できる超分子錯体に着目し、新たに超分子金属錯体型可溶化剤を開発した。この金属錯体型可溶化剤は、超分子錯体の形成がCNTの表面で逐次的に伸長される現象を利用しており、ポリフルオレンに比べて約10倍もの可溶化量を実現することに成功した。また、この金属錯体型可溶化剤は、酸を加えることで簡単に分解するため、体性単層CNTの表面から完全除去できることが分かった。

 今後は、別の金属イオンなどを使った研究もおこなうことで、高純度・高効率金属製CNTの分離や高純度半導体単層CNTの大量生産が可能になると期待されている。

 なお、この内容は10月3日に「Nature Communications」電子版オンライン速報誌で公開された。

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