【コラム 山口利昭】中国が独禁法違反で日本企業12社に制裁処分検討、国際カルテル事件が広がる懸念

2014年8月8日 14:52

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記事提供元:さくらフィナンシャルニュース

【8月8日、さくらフィナンシャルニュース=東京】

●日本企業は美味しいターゲット


 たしか6月10日のロイターニュースが第一報だったかと思いますが、いよいよ中国(国家発展改革委員会)が独禁法違反容疑で日本企業12社の調査を終え、今後制裁処分の検討に入る、ということが8月6日、各メディアで一斉に報じられています。これまで欧州裁判所による独禁法制裁の運用を研究してきた中国にとって、日本企業はたいへん美味しいターゲットです。

 中国では商業賄賂に関する摘発も検討されているところですから、日本企業も本腰を入れてコンプライアンス・プログラムの実践を法務担当任せではなく、経営者レベルで開始しなければならないと思われます。

 国際カルテル事件の摘発は、中国だけでなく、シンガポールやインド、そしてロシアでも検討されているので、今後はますます全世界レベルで日本企業がターゲットにされる可能性が高いと思われます。

 さらにおそろしいのはDOJ(米国司法省)の更なる日本企業叩きです。これから12月にかけて、これまで以上にショッキングな事例が複数報道されることが予想されます(米国のアンチトラスト法違反事件の最前線で活躍されている法律実務家の方は、すでにこういった事例と闘っておられるようです)。

 日本の「正義」ははたして諸外国で通用するのでしょうか、それとも諸外国には日本企業が想定できないような「別の正義」が横たわっているのでしょうか。

 ともかく平時のコンプライアンス・プログラムの実践、有事のリニエンシー、アムネスティプラスの実践、情報管理体制の確保というところが、重要な課題ですね。

 報道される国際カルテル事件の大きさに驚いて思考停止に陥るよりも、そういった摘発が自社にも及ぶのか、知恵を働かせて、その発生可能性を合理的に検討することが大切だと思います。使える知恵を養うことが肝要かと。【了】

 山口利昭(やまぐちとしあき)/山口利昭法律事務所代表弁護士。大阪府立三国丘高校、大阪大学法学部卒業。大阪弁護士会所属(平成2年登録 司法修習所42期)。現在、株式会社ニッセンホールディングス、大東建託株式会社の社外取締役を務める。著書に『法の世界からみた会計監査 弁護士と会計士のわかりあえないミソを考える』 (同文館出版)がある。ブログ「ビジネス法務の部屋」(http://yamaguchi-law-office.way-nifty.com/weblog/)より、本人の許可を経て転載。

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