日航・全日空、路線争奪戦が激化 

2014年8月7日 07:25

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記事提供元:エコノミックニュース

長きにわたりナショナルフラッグキャリアを自負してきた日航にとって、中南米路線への思い入れは特別だ。しかし、法人税を納めずに巨額の利益を計上している日航に対する向かい風は強い。

長きにわたりナショナルフラッグキャリアを自負してきた日航にとって、中南米路線への思い入れは特別だ。しかし、法人税を納めずに巨額の利益を計上している日航に対する向かい風は強い。[写真拡大]

 安倍晋三首相の中南米歴訪にあわせるかのように、日本航空<9201>と全日本空輸<9202>が中南米の路線獲得をめぐり火花を散らしている。ブラジル最大手のTAM航空が3月末、所属する国際航空連合を全日空と同じ「スターアライアンス」から日航の「ワンワールド」にくら替えしたのが発端だ。提携先の組み替えで成長市場の中南米の勢力図が塗り替わる可能性もあり、攻防が熱を帯びている。

 日航にとって中南米路線への思い入れは特別だ。2010年9月、会社更生手続き中の日航はサンパウロ―成田線(ニューヨーク経由)から撤退した。1978年に定期便が就航した同路線は、日本の航空会社が運行する路線としては最長路線。ナショナルフラッグキャリアを自負してきた日航にとって、多くの日系人が暮らすブラジルからの撤退は屈辱だった。日航の植木義晴社長は安倍首相の中南米歴訪に同行しているが、是が非でも存在感を示したいところだろう。

 政権を巻き込んだ日航と全日空の競争は周知の事実だ。民主党主導の日航復活を「過剰支援」とする全日空。そんな全日空と自民党の蜜月ぶりが表面化したのは13年10月に国土交通省が発表した羽田国際線発着枠だ。全日空11便に対して日航5便の配分。日航にとって羽田から新路線となる国の路線はすべて全日空が取得。日航にとってみれば、あまりに露骨な全日空贔屓と言いたくなるのも無理はない。しかし、世論は日航に味方しなかった。

 日航は14年3月期決算で連結売上高1兆3093億円、税引前利益1600億円を計上した。ところが、日航には巨額の税務上の繰越欠損金があり、法人税を納めていない。11年3月末現在で1兆2000億円を上回る繰越欠損金が存在していた。繰越欠損金は将来の課税所得から控除できる。日航は連結納税を行っているため、連結納税グループ全体の納税額を引き下げ、日航本体は利益を上げている関係会社からお金を受け取ることが出来る。

 日航の再生計画案が認可された後の11年12月税制改正では繰越欠損金の控除期間が7年から9年に延長された。しかも、通常の大会社では課税所得の8割までしか控除できないが、日航は会社更生法の適用会社であるため、7年間は全額控除できる。

 日航の会計処理は勿論合法だ。しかし、多くの株主が破綻で損失を被った。日航の業績は急回復し、巨額の利益を計上しながら法人税を払っていない現状に違和感を感じる人は多い。本来であれば、日航の中南米路線の復活を願う人はたくさんいるだろう。しかし、単純に喜ぶことはできない複雑な心境だ。(編集担当:久保田雄城)

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