「森」を見て銘柄選択をすれば幅広く林業関連株ルネッサンスを先取り余地=浅妻昭治

2014年8月4日 09:53

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

<マーケットセンサー>

  相場の分岐点、膠着相場下では、投資銘柄を選択するうえで「森」を見るか「木」を見るか、強気派と弱気派が論争をすることがある。いまでいえば、3月期決算会社の第1四半期(4~6月期、1Q)決算発表をキッカケに業績相場のトレンドが鮮明化すれとして「森」を見る強気派と、どうも好決算を発表した銘柄が、単発人気で横に広がらない個別物色にとどまっていることを重視して「木」を見る弱気派に分かれることになる。

  この決算発表は、前週末に1回目のピークを過ぎたばかりであり、今後の業績発表では、どのようなポジティブ・サプライズ、ネガティブ・サプライズが飛び出さないとも限らず、まだ「森」派、「木」派のいずれに軍配が上がるかは不透明ではある。そうした相場の分岐点で、敢えてもう一つの「森」派に注目してみたい。「森」派は「森」派でも、業績相場の発進に期待するのではなく、「森林」関連の林業関連株にアプローチしたいのである。林業関連株は、ことによると全般の膠着相場を尻目に、独自人気で賑わっているロボット関連株や燃料電池車関連株、ゲーム関連株、LINE関連株などの一角に浮上する可能性があるからである。

  林業関連株が浮上するかもしれない周辺材料は豊富だ。このところテレビ、新聞で取り上げられて露出度が増し、関連する映画『WOOD JOB!~神去なあなあ日常~』が制作・公開され、同映画のヒロインとなった林業女子なども増加しており、ことによるとパラダイムシフト(規範遷移)、ルネッサンス(復興)が徐々に進行していることを示唆しているかもしれないのである。

  何がパラダイム・シフト、ルネッサンスかといえば、これまで輸入外材に押されていた国産材の価格競争力が回復したというのである。農林水産省が、7月4日に公表した木材の素材価格は、国産のすぎ中丸太が、1立方メートル当たり1万4000円と同径の米つが丸太の同2万5100円より44%も割安になった。円安・ドル高がこの要因で、「世界一安い」国産材の価格優位性を確立した。

  しかも、この国産材の供給量は、戦後に植林した人工材が収穫期・伐採期入りとなり、森林は「育てる」時代から「使う」時代に入ってきたといわれている。このため、この割安な国産材を使用する合板工場を新規に建設・稼働する動きが相次いだり、今年6月24日に閣議決定された「日本再興戦略」で林業の成長産業化、輸出の促進が打ち出され、林産物の輸出額は、2012年の123億円を2020年までに250億円に拡大する目標値が設定されている。

  もちろん林業産出額は、ピークの7割近くに減少し、林業就業者も同じく7割減となり高齢化率も上昇しているから人手不足は歴然で、この就業者数は、2003年度から実施した「緑の雇用」事業で底打ちし、さらにこの雇用拡大のために映画にも登場した林業女子の存在感も高まっているのである。この林業女子が活躍するためには、伐採や枝打ち、搬送などを自動化する高性能林業機械の導入ニーズが高まり、関連株のビジネスチャンスにつながることになる。こうした成長戦略が現実化すれば、まさに林業株ルネッサンスにつながるもので、「森」を見て投資銘柄を選択することができることになる。(執筆者:浅妻昭治 株式評論家・日本インタビュ新聞 編集長)

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