電気自動車(EV)はバッテリーの進化で普及が促進するのか

2014年8月4日 23:41

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積水化学工業が開発した次世代リチウムイオン電池のサンプル。

積水化学工業が開発した次世代リチウムイオン電池のサンプル。[写真拡大]

 自治体や関連団体が各地で行ったアンケート調査で、「EVを知っていますか」という問いに90%以上の人が「Yes」と答え、「いずれ購入したいと思いますか」に肯定的な回答は5割程度あったという。この結果からみても、EVの潜在需要はかなり大きなものになってきていると考えられる。

 しかし、EVは4輪車両の保有台数に対して約0.07%(2012年)程度を占めるにすぎない。ハイブリッド車(HV)は約3.78%(同)あるから、いかに普及していないかが明白だといえよう。

 その理由は二つある。一つは車両の価格を含めた性能だ。ガソリン車より優れた点も多々あるが、価格差が200万円程度あるのに航続距離が半分程度と短いのは、いかんともしがたい。

 二つ目はガソリン車の燃料補給に当たる充電の問題だ。まず、充電スポットが十分整備されていない。たとえば、15分~30分程度で約80%充電可能な急速充電器は、全国で2000基に届かない(2014年初頭)のが現状だ。減少傾向にあるというガソリンスタンドでも約36,000軒(2013年3月)あるのだから、充足には程遠い数値といえよう。さらに、普通充電(200V)で満充電するためには、所要時間がおよそ7時間必要になる。これは自動車の燃料補給として、実用的な時間だとは言い難い。

 これらを解決するキーポイントはバッテリーである。積水化学がリチウム電池の容量を3倍にまで高めることに成功し、住友電工はナトリウム電池を開発した。さらに、日本マイクロニクスとグエラテクノロジーは共同で、新原理による二次電池「battenice」の量産化技術を確立している。もちろん、いずれも実用化には一定の時間が必要なのであろうが、そのメドはすでに立っているようだ。

 また、経済産業省所管の独立行政法人「新エネルギー・産業技術総合開発機構」が示した自動車用二次電池ロードマップでも、2020年頃にはエネルギー密度が5倍以上、コストは1/5以下のバッテリーが開発される見通しになっている。これらを考え合わせれば、あと5年程度でEVの普及が一挙に伸びることも夢ではないといえる。

 問題は石油業界の動きである。普及のネックの一つである充電スタンドの設置は、電力会社などが中心になって進めることもできるだろう。しかし、生活や産業に不可欠な石油製品の供給を担う石油業界が、この事態を歓迎するとは考えられない。ガソリンは原油から作られるが、連産品であるから灯油・重油などと同時に生産される。現在、石油製品の中で消費の多いガソリンの需要が落ち込めば、灯油や重油などの生産量が少なくなる可能性も否定できないのだ。

 さらに、ガソリン需要の低迷は、地元資本によって運営されているガソリンスタンドの淘汰を、ますます進めることになりかねない。結果として、地域の経済や雇用情勢に悪影響を及ぼすことも考えられる。これらの問題を包括的に解決させていかなければ、EVの普及は暗礁に乗り上げてしまうかもしれない。(記事:松平智敬・記事一覧を見る

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