自閉症スペクトラム障害者は、自分の動作を真似された時の脳活動が少ないことが明らかに

2014年7月11日 23:36

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左図:真似をされていないときに比べて真似をされたときに強く活動した領域を示す図。健常群ではEBA(黄色枠)の一部が活動したが(脳断面の青色の部分)、ASD群では活動が低下していた(脳断面の緑色の部分)。右図:その領域の活動量を棒グラフで表したもの。青色の健常群と赤色のASD群で、EBA領域の活動量に差があることが分かった。(生理学研究所の発表資料より)

左図:真似をされていないときに比べて真似をされたときに強く活動した領域を示す図。健常群ではEBA(黄色枠)の一部が活動したが(脳断面の青色の部分)、ASD群では活動が低下していた(脳断面の緑色の部分)。右図:その領域の活動量を棒グラフで表したもの。青色の健常群と赤色のASD群で、EBA領域の活動量に差があることが分かった。(生理学研究所の発表資料より)[写真拡大]

 生理学研究所は、自閉症スペクトラム障害者は、自分の動作を真似されている時の脳の活動が、健常者に比べて減少していることを明らかにした。

 自閉症スペクトラムは発達障害の一種で、この障害を持つ人は対人コミュニケーションを苦手とする。この障害を改善する方法として、他者の真似をし、真似されたことを理解する訓練が知られている。これについて、「他者の真似をする」時の脳の働きについては研究がおこなわれていたが、「自分の動作を真似される」時の脳の働きについては解明されていなかった。

 今回の研究では、自閉症スペクトラム障害者19名と健常者22名による実験をおこなった。その結果、健常者は自分の行動が真似された時に脳の視覚野にあるEBAと呼ばれる領域の活動が高くなったが、自閉症スペクトラム患者にはそのような傾向は見られなかった。この結果は自閉症スペクトラム患者のEBAが真似をされたときにうまく働いていないことを示している。

 近年、自閉症スペクトラムを軽減させるために行動を真似する訓練が有用であることが示されており、本研究成果は病態解明だけでなく訓練の効果を判定するのにも役立つと期待されている。

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