「金曜日の後場高」後の相場分岐点では高ボラティリティのJQG銘柄に的を絞って遅乗り・遅抜け投資=浅妻昭治

2014年6月16日 09:53

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

<マーケットセンサー>

  またまた「金曜日の後場高」である。金曜日の後場は、本来なら週末を控えてポジション調整の手仕舞い売りが先行するはずなのに、買いが優勢となった。この「金曜日の後場高」は、だから兜町では昔から先行きの株高を示唆する強気シグナルと捉えられてきた。この前週末13日の「金曜日の後場高」は、さらに終値が、ほぼこの日の高値で引ける「引けピン」となり、さらに喜ばしい吉兆になったにもかかわらず、証券会社や証券ジャーナリズムからはカンカンの強気観測や超楽観的な日経平均株価の上値目標などが聞こえてこないのは、どうしたことだろうか?

  確かに「金曜日の後場高」を牽引した安倍首相の法人税実効税率減税発言は、肝心の財源確保については、年末の来年度税制改革まで先送りされた。また海外では、イラク情勢の緊迫化、原油価格高騰懸念などの地政学的なリスク、さらには6月17~18日開催のFOMC(公開市場委員会)やその後、発表相次ぐ経済指標のイベント動向を待って、米国景気の方向性を見極めたいなどという事情もあるようである。

  しかし詳細にみると、内情はそれだけにはとどまらないようだ。アベノミクスの成長戦略は、法人税減税だけでなくGPIF(年金積立金管理運用独立法人)の運用方針の見直し前倒しなど株高対策として加速する可能性もある。ということは、もしかして前週末の「金曜日の後場高」をキッカケに、外国人投資家が、これを先取りして再度、「バイ・マイ・アベノミクス」のアドバイス通りに、大挙した日本株買いに舵を切ることも想定される。となれば、銘柄物色の中心も逆行高していた新興市場株から主力株にシフトすることにもなる。

  これは、ボラティリティの高い新興市場株にヒット・アンド・ウエー、早乗り・早抜け投資の回転商いを仕掛けてきた個人投資家には、深刻な問題になるのは間違いない。新興市場株は、ミクシィ <2121> (東マ)の急騰を起爆剤に、ゲーム関連株、ロボット関連株、LINE関連株、再生エネルギー関連株と次々とストップ高する銘柄が続出し、買えば上がる、上がれば買うの高回転商いが、少なくとも個人投資家の銘柄物色の中心であった。それが、物色の中心が、新興市場株から主力株にシフトするようにでもなれば、新興市場株の高回転が止まり、買い付いた新興市場株の高値でハシゴを外され、ババをつかまされる恐怖が募ってくるからである。今週の少なくとも週初は、この市場をリードする投資主体や物色銘柄の変化を見極める分岐点となるとすれば、それほどカンカンの強気シナリオを観測するわけにはいかないことになる。

  諸株高騰の全面高や、外国人投資家好みの主力株と個人投資家が買い付いた新興市場株が共存する二極化相場が展開するなら、とくにポートフォリオの変更は必要はないが、仮に新興市場株から主力株への乗り換えが加速するようなことがあれば、回転売買が続いてきた新興市場株は、それこそ早抜け競争の逆回転相場が続くことになる。「行くも地獄、引くも地獄」で悩ましい1週間になることになる。

  そこで今週の相場対応には一工夫をしてみたい。ボラティリティの高い新興市場株を選好しながらも、もし物色の変化が起こっても、高値で粘り切れる新興市場株に注目しようというのである。

  高ボラティリティの究極の新興市場株は、ジャスダック市場のグロース銘柄(JQG)である。JQG銘柄の上場は、わずか48銘柄と、同じジャスダック市場のスタンダード銘柄(JQS)の約6%にとどまるが、それでもこのところストップ高銘柄の一角や年初来高値銘柄、全市場の値上がり率ランキングの上位に急浮上するなど存在感を主張し始めている。このJQG銘柄に投資ターゲットを絞るのである。もちろん、JQG銘柄に無差別に飛び付き買いをして、銘柄シフトに見舞われたら、「はい、それま~でよ」とばかり、少なくとも日柄で半年、値幅で往って来い程度の日柄・値幅調整を覚悟しなくてはならない。JQG銘柄をターゲットとするとしても、銘柄の厳選をするのである。

  そこで浮上するのが、JQG銘柄の低PER・PBR株である。この銘柄なら仮に高値で取り残されても、塩漬けには耐えられそうである。ただしである。この銘柄は現在、値動き優先で高回転している高ボラティリティ銘柄とは無縁の値ごろも低位の地味な銘柄が多い。しかも、新興市場株の常として、株価が上がり始めれば、「理屈はあとから貨車でやってくる」となる可能性があり、逆境、逆風を乗り切れるかもしれない。(執筆者:浅妻昭治 株式評論家・日本インタビュ新聞 編集長)

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