【経済分析】中国の製造業景況感が改善

2014年5月23日 22:58

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記事提供元:さくらフィナンシャルニュース

【5月23日、さくらフィナンシャルニュース=東京】昨日は日経平均が300円近く上昇しました。材料の一つとなったのが中国の景気指標の改善です。発表されたのは民間のHSBCが調査したPMIで、5月の速報値は49.7と市場予想の48.3を上回り、4月の48.1から2か月連続で改善しました。

中国のPMIにはもう一つ、中国政府(国家統計局)が発表している購買担当者景気指数があります。どちらも中国の製造業を対象に行っている企業の景況感調査です。

図1のグラフはこの2つのPMIの推移を比較したものです。概ね同じ方向に動いていますが、よく見るとボトムを打って上昇に転じるタイミングは購買担当者景気指数の方が早く、また、ピークをつけて下落に転じるタイミングはHSBCの方が早いことに気がつきます。これはおそらく、両者が調査している対象企業が違うことによるものではないかと思われます。

購買担当者景気指数は国有部門や大企業が多くを占めるのに対して、HSBCの方は主に中小企業を対象にしています。日本でもみられる傾向ですが、景気回復時にはまず大企業の景況感が改善に転じた後に遅れて中小企業の業況が改善するのが一般的です。一方、景気が悪くなるとまず先に中小企業の景況感が悪化し、遅れて大企業が悪くなっていきます。中小企業の方が景気の悪化に対する抵抗力が弱く脆弱であるためです。

足元では購買担当者景気指数はHSBCよりも1か月早く3月から改善に転じていますが、両者の関係にみられるこうした傾向を踏まえると、来月初めに発表される5月の購買担当者景気指数は3か月連続で改善する可能性が高いと予想されます。さらに、中国の景気の先行きを見る上で、HSBCの改善が続くかどうかを注意して見ていく必要がありそうです。

それでは中国の景気の先行きを見る場合のカギは何か、ということですが、図2のグラフは中国の購買担当者景気指数と米国のISM製造業景況指数を重ねてみたものです。ISMの方が購買担当者景気指数にやや先行して動いていることがわかります。中国の景気が世界経済に与える影響力は一昔前に比べればもちろん大きくなっていますが、それでもやはり世界経済の行方は米国次第であることを上のグラフは物語っているのではないかと思います。【了】

のだせいじ/埼玉県狭山市在住の在野エコノミスト
1982年に東北大学卒業後、埼玉銀行(現埼玉りそな銀行)入行。94年にあさひ投資顧問に出向し、チーフエコノミストとしてマクロ経済調査・予測を担当。04年から日興コーディアル証券FAを経て独立し、講演や執筆活動を行っている。専門は景気循環論。景気循環学会会員。著書に『複雑系で解く景気循環』(東洋経済新報社)『景気ウォッチャー投資法入門』(日本実業出版社)がある。著者のブログ『私の相場観』より、本人の許可を得て転載。

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