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ラクオリア創薬 Research Memo(11):16/12期にははじめてのロイヤリティ収入の計上を予定
*16:39JST ラクオリア創薬 Research Memo(11):16/12期にははじめてのロイヤリティ収入の計上を予定
■中期経営計画と収益見通し
(3)収益計画の詳細
中計の収益計画のうち、最も重要な収入について、2014年が300百万円、2015年が600百万円、2016年が1,200百万円と計画している。伸び率は2014年から2016年にかけて倍々ゲームで伸びていく予想となっているが、絶対的な水準が低いので、これ自体は驚くには当たらない。収入の内容を見ると、時間の経過に伴い、内訳が大きく変化していくシナリオとなっていることがわかる。注目すべきは2016年に初のロイヤリティ収入の計上が計画されていることだ。こうしたロイヤリティの計上は経営の安定化にも最も期待が大きいものであり、2017年以降の損益黒字化実現への期待を大きく膨らませるものである。
他方、事業費用については、大きく減少することが期待されている。減少分のほとんどは、拠点を現在の旧ファイザー中央研究所施設から名古屋大学キャンパス内に移転することの効果である。施設関連費は2013年12月期で641百万円であったが、2014年12月期から段階的に削減が進み、2015年12月期に移転完了した後は、事業年度ベースで約100百万円にまで減少する見通しである。最も重要な研究開発部門の人員については、現在の65人体制を2016年の中計最終年度まで維持する前提となっている。
費用については、人員や研究開発費を現状の横ばいと想定していることをどう評価するかは議論が分かれるかもしれない。あえて横ばいで想定しておいて、将来の削減余地を確保してあると見るべきか、あるいは、少数精鋭の現在の規模からは、今後の削減余地はほとんどないと見るべきか、判断が難しいポイントではある。同社<4579>がイオンチャネル創薬という開発途上の創薬技術の領域で事業を行っていることなどを考えれば、研究開発の人員や予算にはこれ以上の削減余地は乏しいと考えておくほうが、堅実な考え方と言えよう。
以上のような収入及び費用の前提をもとに、同社は前述のように損益計画を立てている。営業損失、経常損失ともに2012年12月期を底に、改善が進むと計画している。当期損失は、2014年12月期については有価証券売却益の計上で大きく圧縮されるが、2015年12月期は一時的に膨らむとみている。2016年12月期には収入が大きく伸長するため、営業損失以下の各段階で損失が大きく圧縮されるという計画となっている。
今回の中計目標作成に当たり、同社経営陣が最も重要視したポイントは、「蓋然性の高い事業計画の作成」という点だ。過去には、想定し得るベストシナリオをもとに業績見通しを作成し、結果的に市場参加者の失望を買ったことがあった。現経営陣はそうした教訓を踏まえて、かなり慎重に中期3ヶ年の業績予想を作成したとしている。収入項目別の内訳ではライセンスアウト済みプログラムの進捗に伴う収入の構成が中核を占めている。また、ライセンスアウト候補プログラムのうち実際のライセンスアウトを織り込んでいる部分については、既にライセンスアウト済みのアシッドポンプ拮抗薬(RQ-4)や5-HT4部分作動薬(RQ-10)の他地域向けの新規ライセンスアウトや、前臨床開発が順調に進んでいるモチリン受容体作動薬、5-HT2B拮抗薬などの新規ライセンスアウトが織り込まれている。
収入計画の詳細と個々の創薬プログラムを突き合わせた分析からは、今中計の業績目標が保守的に作成されたという会社側の主張には説得力があると言える。例えば、2015年12月期に契約一時金を見込んでいるアシッドポンプ拮抗薬(RQ-4)については、国内及び欧米地域を対象としたライセンスアウトを想定している。ライセンスアウトが本当に決まるかどうという点にリスクがあるのは事実であるが、300百万円という契約一時金は開発の進捗ステージや、製品の潜在的市場規模などから考えて過小な印象だ。また、2016年12月期に初のロイヤリティ収入が業績目標に織り込まれているが、通常のロイヤリティの割合から逆算すると、Aratana社による新薬の売上高は1,000百万円に満たないことになってしまい、この点でも控えめな印象を受ける。また、共同研究についても、研究協力金の推移を見ると、新たな共同研究契約は今中計の3年間には締結されないという前提となっていることが読み取れる。
以上のように、今中計の業績目標には、今後上方修正される余地が残されているという印象が強い。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)《FA》
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