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ウォーターD CORPORATE RESEARCH(7):第2ステージに向けての橋頭堡へ始動
*19:12JST ウォーターD CORPORATE RESEARCH(7):第2ステージに向けての橋頭堡へ始動
■TOPICS 2
◆1月、第2ステージに向けての橋頭堡へ始動
2014年1月17日、ウォーターダイレクト<2588>は2つの重要事項を発表した。1つは、OA機器や通信回線、保険商品などの卸売販売業で定評のある光通信と合弁会社を設立すること。もう1つは、第三者割当増資及び新株予約権の発行(引受先はいずれも光通信)を行い、筆頭株主が光通信となること、である。これは、TOPICS 1で示した同社第2ステージへの展開を念頭に置いたかなり戦略的に動きであるように思われる。詳細は以下の通り。
(1)光通信と合弁会社設立
◆同社が51%の株式を保有する販売子会社を設立
光通信との合弁新会社は、社名を「アイディール・ライフ」とし、宅配水や通信機器の販売を手掛ける他、補償サービスなどを営む予定。新会社が販売する宅配水はウォーターダイレクトから出荷されることになり、一種の代理店のような役割を果たすことが期待されることになる。資本金は4,500万円、出資比率はウォーターダイレクトが51%、光通信が49%となり、ウォーターダイレクトの連結子会社となる模様。発足予定は2014年1月末。
◆光通信の販売力を活用し、競争条件の変化に対してより効果的な販売チャンネルを確保へ
この経営判断はかなり興味深い。ウォーターダイレクトにとってみると、光通信の強力な販売部隊、販売ノウハウの活用が可能という点で大きなメリットが期待できる。これまで挑戦者の立ち位置にあった同社は、前段(TOPICS 1)の通り、後発企業が資本力をバックに大規模な広告宣伝を展開したことなどを受け、攻勢を受けて立つ側に回ることとなっている。デモ販売といった斬新な手法で顧客を獲得してきた実績はあるものの、競争条件の変化に対してはもう一段の効果的な販売チャネルが求められる状況にあった。強力な販売部隊との連携には、この流れを断ち切るための一歩踏み込んだ決断であるように思われるのである。これにより、特に未開拓分野における潜在顧客層の掘り起こしなどが見込まれることとなろう。もちろん、自力で対応できればそれに越したことはないが、(1)営業人員の確保・育成に時間を要する、(2)既に多くの百貨店、家電量販店などの店頭においてデモ販売を実施しており、今後は徐々に効果が出難くなってくるリスクがある、(3)その間も、競合企業の攻勢は続く、といったことを勘案すれば、鷹揚に構えていられる状況にはあるまい。外部の企業とタッグを組み、時間を短縮して能力の相乗効果を狙うことは十分に合理的であると判断する。
一方、現在、光通信は日本各地での販売拠点には各地域の有力企業と合弁会社を設立し(光通信の持ち株比率は主として50%未満に設定)、販売部隊に徹する経営を展開している。そういった中、光通信にとっても商材の拡大は当然メリットとなるはず。また、この強力な販売力を考えた場合、ウォーターダイレクトが提携しなければ、光通信が競合他社と組んでしまうリスクもあった。そういった観点からもこの提携はより戦略的であると位置づけられよう。なお、光通信は既に様々な商材を手掛けており、それに新たに宅配水事業が加わっても、その販売力に翳り及ぼすほど大きな負担にはならないと推定している。
◆ただし、懸念は基本方針である製販一体化システムとの両立。子会社がうまく行けばいくほど、自社直販システムの存在意義が問われかねない
一方、これに伴う懸念は、この方式がウォーターダイレクトの基本方針であった製販一体化システムを揺るがす可能性を持つこと。対競合を考えると、この決断をうまく機能させて再攻勢への狼煙としたいところであることは確か。しかし、合弁販売会社がうまく行けばいくほど、それでは(製販一体化方針に基づく)自社販売よりも効率的な販売チャンネルを保有するということに繋がるはずである。合理性だけを見れば、それでは製販一体化にこだわるよりも、むしろ光通信の営業力をフルに活用した営業体制の方をより強化すべき、という選択肢が早晩俎上に上がってきてもおかしくないと考えられるのでる。これは最終的に、自社の販売チャネルの存在意義が問われることにもなりかねない劇薬でもあると言えよう。当然、ウォーターダイレクト経営陣は、今回の合弁会社設立がそういったリスクに繋がることは承知のうえであるはず。それでも敢えて再攻勢の狼煙を上げる決断を採択したことは、競争激化がそれだけ苛烈であることの証左でもあると推定する。
そもそも同社が製販一体化方針にあるのは、製品の品質確保と同レベルで顧客のニーズを把握し、価格決定権を自社で確保しておくため。販売を代理店や小売店に丸投げしてしまえば、消費者ニーズや顧客の志向トレンドを直接把握できなくなるため、自社での販売戦略・価格設定が難しくなり、販売業者の意向には反論できない状況すら招きかねない。生産と販売の二正面戦略は容易な選択ではなかったものの、将来に伸びる余地が大きいと考える宅配水市場であるからこそ、(創業当初は例外として)敢えて製販一体戦略を選択してきた経緯がある。今回の合弁会社設立は明らかに、これまでの経緯とはやや異なる経営判断となっていることがうかがえよう。
◆これに対するリスク軽減・抑制策も用意されている模様。株式持分51%を背景とした経営権の確保と・・・
なお、上記の懸念材料に対し、同社は現時点の2つのリスク軽減・抑制策を用意しているように思われる。1つは合弁会社の株式は51%を保有し、経営権を手中に収めていること。もちろん、合弁相手の営業力にも依存する形となる以上、その影響力は避けられないものの、販売戦略・価格設定の決定権が明確に保持できる意味は大きい。これはマイナー出資で展開力を広げる光通信の戦略にも合致した部分でもあり、そういった観点では両社間で思惑のすれ違いはないように思われる。
◆・・・別ブランドによる展開の可能性
もう1つは、合弁会社で販売する宅配水は別ブランドとなる可能性があること。現時点でウォーターダイレクトは、合弁会社で主力の「クリティア25*」ブランドのものを販売するとは全く言明しておらず、ニュースリリースでも「クリティア」ブランドに関しては一言も言及されていない。やや穿った見方かもしれないが、これは合弁会社では別ブランドによる展開を模索しているように思えるのである。このことは、独力で育成してきた主力ブランドに関してはやはり製販一体化を堅持し、合弁会社での拡販はこれとは切り離して考える意向にあると見ればつじつまが合う。とすれば、一種のOEM供給と同じ位置づけともなり、同社の基本方針とは明確に一線を画することも可能となろう。逆に言えば、「クリティア25*」ブランドでの販売となった場合、経営陣はより真剣に製販一体方針の転換を模索し始めていることを示すことになると考えられる。
(執筆:株式会社エヌ・ジー・アイ・コンサルティング リサーチアナリスト 長井 亨)《FA》
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