歴史が変わるかも? 40万年前の人類DNA解読で、定説見直しか

2013年12月6日 07:30

印刷

記事提供元:NewSphere

 スペイン北部の洞窟で発見された人類の大腿骨から、40万年前の人類のDNAの解読に成功したとの研究論文を、4日のネイチャー誌が掲載した。ドイツやスペインの研究チームが発表したもので、人類のDNAを解読した最古の例となる

 研究に参加したドイツのマックス・プランク研究所のスバンテ・ペーボ氏は、「この成果により、今や数十万年前の人類の祖先から採取したDNAさえも調査できることが証明された」「非常に興奮している」と語っている。

 1997年、ペーボ氏らが4万年前のネアンデルタール人の化石からDNAの断片を抽出。2006年、フランスとベルギーの研究チームが10万年前のネアンデルタール人のDNAの断片を抽出。これがこれまで最古の、人類のDNAの解読とされていた。

【解剖学と遺伝子学的証拠のミスマッチを「解明するのは非常に困難」】

 しかし、人類の進化で新たなミステリーが加わったとニューヨーク・タイムズ紙は報じた。

 今回発見された化石は、骨の外見はヨーロッパなどにいたネアンデルタール人に似ているが、DNAの特徴は2010年にシベリアで見つかった別の初期人類デニソワ人と類似するという。科学者らは、まだ発見されていない多くの絶滅した人間集団が存在する可能性に驚いているという。

 マックス・プランク研究所のマティアス・マイヤー氏は「解明するのは非常に困難」と語っている。

 マドリード大学のアルスアガ教授によると、解剖学に基づけば、20~30万年前から西アジア、ヨーロッパに住んでいたネアンデルタール人の祖先に属するという。ただ、「全体のストーリーを再考しなければならない」と述べている。

【ホモ・エレクトスか、ホモ・ハイデルベルゲンシスか、はたまたデニソワ人の早期分派か】

 今回発見されたDNAは、180万年前に登場してここ数十万年以内に絶滅した「ホモ・エレクトス」だったかもしれないとする、カリフォルニア大学の古代DNA専門家ベス・シャピロ氏の見解をニューヨーク・タイムズ紙は掲載した。同氏は「これらの化石から抽出したDNAを知れば知るほど、ストーリーは複雑になる」と語る。

 一方フィナンシャル・タイムズ紙は、ネアンデルタール人以前の「ホモ・ハイデルベルゲンシス」とする、ロンドンの自然史博物館のクリス・ストリンガー氏の見解を掲載した。

 ナショナル・ジオグラフィックは、可能性が多くある中で最も単純な解釈は、デニソワ人の早期分派だと報じた。ただ、ネアンデルタール人とデニソワ人は30万年前に分かれたとされているため、この解釈は矛盾するとした。

【スペインの洞窟は化石の保存状態のよい「非常に特別な場所」】

 アルスアガ教授は、スペイン北部の洞窟シマ・デ・ロス・ウエソスは「非常に特別な場所」と語る。同教授は、30年間の発掘調査で28体分のほぼ完全な化石を発見している。

 この場所は地下墓地に約30人が埋葬されており、40万年間、冷たく湿った状況で維持されていたため、これほど長い間、古代DNAが保存されていたとみられている。

 同研究チームはさらに遺伝子を採取して、解析を進めていくとしている。

■関連記事
世界を飛び回る、土偶ゆるキャラ「ペッカリー」 そのゆるくない活躍とは
“失われる日産魂” 海外紙がゴーンCEOの経営手法に懸念
羽田発着枠争い2連敗 痛恨のJALと会心のANA

※この記事はNewSphereより提供を受けて配信しています。

関連記事