アクセル Research Memo(2):グラフィックスLSIで市場シェア6割を占めるトップメーカー

2013年11月28日 18:13

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記事提供元:フィスコ


*18:13JST アクセル Research Memo(2):グラフィックスLSIで市場シェア6割を占めるトップメーカー

■事業概要

アクセル<6730>は遊技機器(パチンコ、パチスロ)に搭載される液晶ディスプレイの画像を創り出すグラフィックスLSIで市場シェア6割を占めるトップメーカー。製造は外部に委託するファブレス企業で、研究開発・販売戦略に特化している。全体の売上高に占める遊技機器向けグラフィックスLSIの比率は期によって変動があるものの、過半以上で推移。また、利益に関しては、大半を同LSIで稼ぎ出す格好となっている。その他の製品では、遊技機器向けのLEDドライバやメモリモジュール、建設機械や医療機器など産業機器分野で搭載されるグラフィックスLSIなどがある。また、顧客の開発支援用ソフトウェアや評価用基板のほか、子会社のニューゾーンで新規分野での製品開発・マーケティングを行っている。市場別の売上高でみると、全体の9割以上は遊技機器向けで占められている。そのため、引き続き遊技機器市場で安定的な収益を確保していくことに加え、遊技機器向け以外の市場開拓も重要課題といえる。


○遊技機器向けグラフィックスLSIは3~4年で世代交代
収益の柱である遊技機器向けグラフィックスLSIをパチンコ向けとパチスロ向けで分けると、約65%がパチンコ、35%がパチスロという構成となっている。また、製品は3~4年で機能の向上を図りながら世代交代を続けている。第1世代品は1998年に販売を開始した「AG1」で、2002年に「AG2」、2006年に「AG301」、2008年に「AG333」、2011年に「AG4」といった具合で市場に投入されている。これまで製品の世代交代とともに高性能、多機能化を図り、販売単価も上昇傾向をたどってきた。現在販売されている遊技機器向けグラフィックスLSIは「AG4」が中心となっている。

遊技機器用グラフィックスLSIと一般の液晶テレビなどに搭載されるグラフィックスLSIの違いについて簡単に説明すると、パチンコ用のディスプレイではゲーム性を高めるため、多彩な演出を実現するためのエフェクト技術が盛り込まれているほか、最適な高速描画技術やデータの圧縮伸長技術などが採用されている点にある。このように特定用途に特化した技術が必要となるほか、近年の設計プロセスの微細化・回路規模の大型化により研究開発費が増大していることもあって、参入障壁は高くなっていると思われる。大手パチンコメーカーの三洋物産はグラフィックスLSIを自社開発(自社専用LSIとして外部に委託生産)しているため、それを除けば同社の市場シェアは非常に高い状況となっている。


○リユース市場が変動要因に
なお、遊技機器向けグラフィックスLSI市場では、リユース品の市場が2010年以降確立されてきたことには注意する必要がある。これは遊技機器に搭載される部材の耐性が複数回の繰返し使用をしても問題ないレベルにあることに加えて、遊技機器メーカーがコスト削減のためにリユース品を使う動きにあることなどが背景にある。遊技機器メーカーは図に見られる通り、リサイクル業者を介して、又は直接パチンコホールなどから部材を回収して、再利用をしている。

グラフを見てもわかる通り、2012年3月期はリユース品の需要(主に「AG3」)が約100万個と同年度に機器メーカーが調達したアクセル製グラフィックLSIの5割弱を占めたと同社では試算している。これに対して、2013年3月期は、「AG4」への切り替えが本格化したことで、リユース品の需要が50万個に半減している。リユース品も含めた同社製グラフィックスLSIの市場シェア(対遊技機器の販売台数)で見れば、約6割と横ばい水準を維持する格好となっている。このため、主力のグラフィックスLSIに関しては、新製品への世代交代局面において、リユース品の需要が増加し、収益面でマイナスの影響を及ぼすリスクがあるという点は留意しておく必要があろう。実際、2011年3月期~2012年3月期に業績が低迷した要因としては、当時の主力製品であった「AG3」の市場シェアが非常に高かったことがリユース品の需要を拡大し、収益面でマイナスの影響を及ぼしている。

リユース品への対応として、同社では最近の新製品開発テーマとして、「高性能化」とともに「コスト低減効果」にも重点を置いた開発を行っている。具体的には、外部使用メモリ量を低減できるデータ圧縮技術の向上や周辺機能の統合化などがある。現在、パチンコの新機種では外部メモリとして64Gbitクラスの高速メモリを搭載することもあり、価格も高価であるだけに、メモリ使用量を減らせるLSIの開発ができれば採用ニーズは大きいとみられる(実際はメモリ容量を小さくするのではなく、より映像を豪華にするためにより多くのデータを格納すると思われる)。同社では次世代品となる「AG5」で画像データの圧縮伸長技術の更なる向上を図り、外部メモリ使用量の低減を実現するほか、新たにCPU機能も取り込む多機能型のチップ開発を進めている。同社では試作品を2014年3月までに完成させ、順調にいけば2015年3月期第3四半期以降の量産化を予定している。


○仕入先及び販売先
同社はファブレスメーカーのため、半導体の製造に関してはすべて外部に委託している。現在はルネサスエレクトロニクス<6723>をはじめとした国内大手半導体メーカーをメインに製造委託しており、半導体商社を通じて仕入れる格好となっている。次世代品となる「AG5」に関しても委託先は変わらない見通しだ。

一方、販売先はエレクトロニクス専門商社である緑屋電気が全体の90%以上を占めている。アクセルの遊技機器向け製品に関する販売は主に緑屋電気が引き受けているためだ。アクセルが遊技機器向け製品の販売先を同社に集中しているのは、技術系商社としての顧客サポート力と遊技機器市場に向けたサービスの均一化を図るためとしている。


○研究開発費率は10%以上を継続
研究開発型のファブレスメーカーであるため、売上高に占める研究開発費率もここ数年は10%以上で推移している。実額ベースでも2011年3月期以降は拡大が続いており、開発体制を強化していることがわかる。開発テーマは、主力のグラフィックスLSIや遊技機器に向けたその他LSIのほか、新規分野となる無線通信用LSI、画像伝送圧縮LSIなどの開発も含まれている。また、同社の従業員数は2013年3月末で75名だが、うち46名が研究開発人員で占められている。


(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤譲)《FA》

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