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アールシーコアCORPORATE RESEARCH(10/16):比較優位より本質的価値「好き」になってもらうアプローチ
*18:54JST アールシーコアCORPORATE RESEARCH(10/16):比較優位より本質的価値「好き」になってもらうアプローチ
■KEYWORDS 2 : 感性マーケティング
◆BESS事業における最重要キーワード
「感性マーケティング」は、BESS事業における最重要のキーワードである。前段で詳述した消費者目線に立っての様々なシステムや仕組みがBESS急成長への方法論(手段)であったとすれば、感性マーケティングはその根底を成す戦略であり、基本思想とも位置づけてよいものである。当然ながら、単なる手段というものは、いつかどこかで競合他社に追いかれ、場合によっては逆に先行を許してしまう可能性がある。しかし、BESSのブランドイメージに直結する「感性マーケティング」は他社の模倣を許さない。その結果、先の手段をより効果的に機能させる相乗効果を生み出すことに成功している。
◆比較優位よりも本質的価値へ。消費者に「好き」になってもらうアプローチ
そもそもアールシーコア<7837>は住宅に対し、時代とともに劣化するかもしれない細かな機能や「住む」だけの住宅ではなく、変わらない本質的な価値を重視し、「そこで時間や空間を楽しむ」機能を強調してきた。そこで、この趣旨に賛同してもらえる消費者をターゲットに設定し、彼らの「感性」に訴えることで数あるハウスメーカーの中で特色ある立ち位置を獲得していこうというのが「感性マーケティング」である。こういった需要の取り込み方を、同社経営陣は「本質的絶対価値の追求」と表現する。一般に、これだけモノが溢れ、消費者に多くの選択肢が提供される時代においては、「~よりも良い」や「現時点での最高機能(品質)」という比較の概念ではいつか陳腐化が避けられない。今や品質の良さはむしろ当たり前であり、逆に品質の悪い商品を提供すれば、市場から総反発を食らいかねないリスクすらある。その結果、どの企業も「高品質」を謳い文句に挙げており、消費者には実感のないやたら細部の性能を競い合っていることも多々あるのが現実である。既に「品質」「性能」という枠組みにおいては消費者への差別化すら難しい状況にあると言ってよいだろう。
◆BESS成約者の62%は「他のハウスメーカーと比較検討は行っていない」
しかし、「好き、嫌い」といった個々人の感性に基づいた価値判断は絶対的で色褪せることがない。個性住宅を標榜するアールシーコアは、そういった感性に訴えかけることで、「~よりも良い」ではなく、シンプルに「好き」だから消費者に選んでもらうスタイルを目指すというのである。そして現実に、消費者はBESSを好みで評価し、購入している傾向が確かにうかがえる。アールシーコアの調べによると、BESS商品の購入を決めた消費者のうち、62%は「他のハウスメーカーと比較検討は行っていない」と回答しているという。価格が数千万円にも上る大きな買い物となるだけに、消費者はより慎重に値段を吟味するのが通常であろう。価格交渉を考えても、他社との比較検討を持ち出すことは消費者にとってメリットがあるはずである。にもかかわらず、過半が他社との比較検討を行っていない。これは、既に「好き」なので他社商品は消費者の対象となっていない、という状況であろうと想像できる。この感性に訴えるスタイルが同社の成長を後押ししてきた要因であることは間違いない。
◆BESS契約者の64%は、展示場来場時点では「具体的な住宅購入計画なし」あるいは「未検討」だが・・・
同じくアールシーコアの調査によると、BESS契約者の61%は、BESS展示場を訪問した時点では、住宅購入の具体的な計画がなかった、あるいは未検討の状態であったと回答している。通常、住宅購入希望者はある程度の具体的な計画(予算や時期など)を持って住宅展示場を訪れるケースが多いと思われる。つまり、消費者には目的が明確に設定されており、ハウスメーカーも消費者がそういった「前向き」であることを前提に営業活動を行っていると言える。そういった意味では、住宅展示場はかなり効率的なマッチングの場と位置づけてよい。これに対し、BESSの場合は個性住宅をふと見て「おもしろそう」と感じる消費者が、住宅購入計画もないままに、まずはひやかし半分で展示場を訪問している様子がうかがえるのである。
◆・・・「好き」という感性をテコに年間成約効率は全国平均を大きく上回る
これは、企業ができるだけ短期間で最大の売上を指向する立場にあることを考えれば、一般的にあまり有難い状況ではない。ひやかし客への対応などは、単純に考えても、営業効率の大幅な低下を招きかねないためである。しかし、実態は大きく異なる。KEYWORDS1で指摘した通り、アールシーコアの営業員一人当たりの年間成約棟数は全国平均を大きく上回っているうえ、成約率(年間成約件数を展示場への新規訪問組数で除したもの)も平均よりかなり高い実績を誇っている。この矛盾するかのように見える結果こそが、「好き」という感性に支えられたマーケティングの成果なのである。
◆感性マーケティングで「都市型スローライフ」を強調
では、何故そういったことが可能となるのか。その解を予想させる逸話がある。ある時、BESS展示場において新規来訪客に対して営業員がモデルハウス内で様々な解説や説明を加えようとしていたところ、同社経営陣が「顧客の邪魔をするな」と注意したというのである。営業員は驚いたであろう。顧客のために解説をすることが「顧客の邪魔」とされたのだから。経営陣の真意は、潜在顧客に対して「『好き』になってもらうには、ゆっくりとした時間と空間をその場で顧客自身に堪能してもらう必要があり」、「うかつに声をかけて顧客がのめり込もうとする雰囲気を阻害してはならない」ということにある。これには、機能や性能などの説明に多くの言葉を費やして理性に訴えるよりも、理屈抜きに雰囲気(空気)を楽しんでもらいまずは感性に訴える方が、結果的により強い支持を顧客から受けるという大きな自信がその背景にある(もちろん、雰囲気を感じてもらった後は営業員のフォローがあると思われる)。実際、こういった方針が少なくない数の展示場来訪客の感性に合致した結果、その自信は高い営業効率の実現によって証明されているのである。
◆具体的な住宅計画を持たない展示場来訪客に、住宅の絶対的な第一候補としての刷り込みを狙う
換言すれば、具体的な住宅計画を持たない展示場来訪客は、むしろアールシーコアにとっては大歓迎とさえ言える。先入観がなければ、住宅への評価は感性による「好きか嫌いか」がまず判断基準となるはず。そこで「好き」と判断されれば、(もちろん、「好き」の度合いにも依るが)購入する住宅の絶対的な第一候補として来訪客に刷り込まれることになる。当然、「好き」にすらなっていない他のハウスメーカーが対抗候補として浮上する可能性はかなり限定的となろう。一見すると非効率に見える営業スタイルだが、感性の共有できる潜在顧客を囲い込むことで、逆に高効率の営業を実現している。
もう一つ興味深いデータがある。これもアールシーコア自身による調査ではあるが、BESS契約者の52%が薪ストーブを購入時に設置しているというのである。薪ストーブは炎のゆらぎを見ることができ、雰囲気のある設備だが、高価であるうえ、燃料やメンテナンスなどに手間がかかる。過半のBESS契約者が薪ストーブを採用しているという事実は、契約者が利便性や金額よりも生活スタイルやこだわりに重点を置く傾向が高いことを端的に示している。こういった層が生活空間である住居を選ぶ基準は、機能性よりも感性にあることは想像に難くない。同社は感性マーケティングによって、こういった感性を持つ消費者をうまく掬い上げることができていると言うことができよう。
◆弱点は成約までに時間がかかること
ただし、このスタイルには「成約まで時間がかかる」という弱点もある。そもそも住宅購入計画のない(あるいは希薄な)顧客が対象である。資金面などを含め、契約にはどうしてもある程度の時間がかかることは不可避であるといえよう。アールシーコアの調査では、20%の顧客が展示場への初回来訪から成約まで2年以上を要しており、1年超(2年以内)を要したケースも13%あるとしている。一般的には成約が展示場来訪からおよそ半年以内とされることと比較すると、この期間は如何にも長い。同社経営陣もこの弱点を認めており、だからこそ、成約見込みが途切れないように展示場への新規来訪客(潜在的顧客の)拡大を非常に重要視している。足元の好調さに慢心して新規客の拡大を疎かにした場合、1~2年後にそのツケを支払う羽目になることは、前述の通り、リーマンショック前の苦い経験からも明らかである。
◆弱点を逆手に取り、むしろ時間をかけてBESSを「好き」になってもらうアプローチを指向
それでも、じっくりと「好き」になってもらうことに力点を置く経営陣の姿勢に揺れはない。成約期間が長くなる弱点は、途切れない新規来場者数対策でカバーするなどして対応。むしろ、時間をかけることこそがBESSの営業スタイルであると積極的に設定。種蒔きから熟成、収穫まで細心の注意を払う「農耕型営業」と銘打ち、これら弱点を強みに変える試みを始めている。同社によると、種蒔きは潜在顧客との「共感」するステップであり(「住宅を買うなら『いつかはBESS』がいいな」と思ってもらう段階)、熟成は展示場へのリピーターとBESSが「共振」するステップ(「住宅を買うなら『たぶんBESS』になるだろうな」と思ってもらう段階)、そして、BESSを「信頼」してもらって成約に至るのが収穫のステップ(「住宅を買うなら『やっぱりBESS』だな」と思ってもらう段階)と分析。それに伴い、営業はいわゆる「営業マン」ではなく「ホーム・ナビゲーター」であると定義し、感性としてBESSの良さを理解してもらうという役目を担う。前段における経営陣に注意された営業員の逸話は、まさにこの「ホーム・ナビゲーション」の考え方を指摘されたものだと言うことができよう。
株式会社エヌ・ジー・アイ・コンサルティング
長井 亨《FA》
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