アールシーコアCORPORATE RESEARCH(5/16):販社部門は屋台骨を支える中核

2013年6月20日 17:41

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記事提供元:フィスコ

*17:41JST アールシーコアCORPORATE RESEARCH(5/16):販社部門は屋台骨を支える中核

■事業概要

◆販社部門:屋台骨を支える中核部門

販社部門は、売上貢献が全社の64%、利益貢献もセグメント中で圧倒的に大きく、同社の屋台骨といってよい中核セグメント。全国の地区販社とパートナーシップ契約を結び、BESS専門のフランチャイズ展開を行っている。この部門でアールシーコア<7837>は、地区販社へ部材のキットを販売。地区販社はそれを消費者に販売すると同時に、施工・工事まで手掛けるという構造(役割分担)にある。


◆地区販社と相互補完によるフランチャイズシステム

この部門のセグメント利益率は実に31%(2012年度実績)。利益率を見るだけでも、同社が販社によるフランチャイズ戦略に注力する理由がうかがえよう。ただし、販社のビジネスサポート向けが中心であるブランディングコストなどは全社費用(15億円)に内数として別勘定で計上されている。したがって、これらを加味した実質の利益率はここまで高くはないと推定される。それでも、事業規模や展開力を考えれば、同社が販社によるフランチャイズ戦略に注力する理由は大きい。もちろん、販社はこれだけの仕入れマージンやブランドロイヤリティをアールシーコアに支払ってもそれ以上のメリットを享受できる仕組みとなっている。販社のメリットは、BESSの商品とブランドをそのまま利用できることに加え、スクエア部門でアールシーコアが実際に得た(東京などでの)ノウハウを活用できることなど。地元密着の広告宣伝義務は負うが、施工・工事を請け負うことで自社の固定費をカバーすることが可能となる点も大きい。アールシーコアにとっても、販社フランチャイズシステムは、地元への密着度をテコとして営業活動・顧客開拓が加速されるのに加え、本体では本来の商品企画やブランディングに特化できるというメリットがある。アールシーコアと地区販社は相互補完の関係にあると言える。

現在、全国にある地区販社は18社。地域の建設会社や工務店がその役を担っている。また、販社という形態にはなっていないものの、準販社という位置づけの特約店が9店ある。これらを合わせ、BESS専門の展示場は全国に34拠点を数える(直営と子会社を含めると38拠点)。当然ながら、住宅販売である以上、自社商品のマーケティングには全国的なブランディングのみでは十分ではなく、展示場などで実際に消費者に住宅に触れてもらうプロセスが不可欠である。展示場の多寡はその後の売上動向を左右する重要な要素と位置づけられる。

ちなみに、全国にある合同住宅展示場(複数の住宅メーカーが展示)は217か所(住宅展示場協会)しかない。また、業界最大手の積水ハウスでも展示場は412か所(合同展示場、単独展示場の合計)しか抱えていないことなどを考えれば、BESS専門で38拠点というのはかなりの規模ということができる(BESS製品の持家・分譲住宅におけるシェアはわずか0.3%。木造に限っても0.4%。これに対し、最大手の積水ハウスのシェアが3%程度であることと比較すればわかりやすい)。それでも高いマージンを確保できている状況を考えれば、強固な販売力に加え、商品ブランドが浸透してきている状況がうかがえる。役割分担が奏功している一つの証左といえよう。


◆過去には連携不調の試練も

ただし、この連携がうまくいかなった時期もある。本来は、展示場の数は増えるにしたがってこの部門の売上も増えるはず。しかし、2008~2009年度においては、展示場が増えているにもかかわらず、売上はむしろ減少してしまった経験がある。この最大の要因はリーマンショックによる需要後退ではあったものの、受注ベースではリーマンショック前の2007年に既にピークアウトとなっており(図表15参照)、これが落ち込みに拍車をかけることとなった。これは、売上が急拡大していた2007年前後で、販社が広告宣伝コストを過剰に絞ってしまったため。それまで順調に拡販できていたことに加え、ブランド展開はアールシーコアが行っていることへの安心感もあり、住宅需要に陰りが見え始めた時に(経費削減から)一気に広告宣伝を抑制。消費者への露出減少を招いたのである。アールシーコアからすれば役割分担ということで各地区の広告宣伝を販社に任せていたのだが、結果としてこれが逆効果となり、売上(受注)は急減を余儀なくされた。以来、アールシーコアは販社との連携を強化。互いに独立した存在ではあるものの、フェアでオープンなノウハウの共有を進め、軌道修正を完了させている。


◆業績は改善基調。ただし、まだ過去最高の更新には至らず

なお、時系列で売上動向をみると、2008~2009年にリーマンショックや販社の宣伝不足などで売上は落ち込んだものの、2010年度からは反転。売上は回復基調に転じてきている。リーマンショック以降、通常モードの需要への回帰に加え、この間にも増加している展示場の拡大が寄与している模様である。

ただし、一展示場当たりの売上高はまだリーマンショック前に記録した過去最高の水準には回復していない。広告宣伝などはアールーコアとの連携の下、通常モードに戻っているにもかかわらず、である。これは、顧客が成約に至るまでにどうしても時間がかかるうえ、成約から売上計上までにさらに時間を要するため。実際に成約高をみると、2011年度から急回復を示しており、ようやくそれら対策の効果が発現してきていることを示唆している。このことは、売上も今後増加していく余地が非常に大きいことを予想させるものである。換言すれば、この指標の低迷が長期間継続すれば、販社の販売力に何らかの翳りが出てきたことを懸念する必要が出てきたことになる。


株式会社エヌ・ジー・アイ・コンサルティング
長井 亨《FA》

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