生活家電は「スマート」よりも「操作性」

2013年2月17日 19:33

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記事提供元:エコノミックニュース

 2005年以降、7年連続で2桁成長を続けている「ホームベーカリー」市場。一時は家電業界のお荷物的存在であった時期もあったが、食物アレルギーへの関心や手作り志向の増加、加えてホームベーカリー機器自体の基本性能の改善や多機能化で人気が高まった。とくに2010年11月に三洋電機から、米からパンを作ることができる「GOPAN」が発売されたことで、20歳~59歳の女性の「欲しい家電」のトップに挙げられるほど人気が爆発。今や、年間20万台に届く規模にまで拡大しつつある。

 そんな中、今年4月にティファールが発売を予定しているホームベーカリー「マイブレッド」に注目が集まっている。「マイブレッド」は、同社が2011年秋に発売した「ブーランジェリー」以来、約1年半ぶりの新製品で、基本性能は従来機種と同じだが、付属のUSBメモリーを使って、専用ウェブサイトから欲しいレシピをダウンロードするという新機能が大きな特徴となっている。

 初期状態で本体に内蔵されている15のレシピのほかに、専用ウェブサイト上に掲載された70以上のレシピを付属のUSBメモリーにダウンロードし、操作パネルの左端にある差し込み口に接続して取り込む方式だ。レシピは毎月更新される予定という。

 しかしながら「最新機種なのにUSB?」と疑問に思う方も多いだろう。確かに、昨今の家電業界の最新機種では、USBではなくスマートフォンと連携した「スマート家電」と呼ばれる製品が続々と登場している中、USBメモリーでデータをやり取りするのは一世代前の方式のように思えなくもない。

 しかし、本当にスマート家電は「使いやすい家電」なのだろうか。アプリでレシピをチェックしたりダウンロードしたりして、タッチするだけでそのデータを機器に転送できるのは、確かに便利かもしれない。しかし、全ての人がスマートフォンを所有し、利用しているわけではない。現状の普及率を考えると、USBメモリーを介してパソコンからデータを入手する方が身近に感じられる人も多いだろう。とくに中高年の利用者にとっては、いかにシンプルに操作できるかが満足度を左右する。

 実際、ホームベーカリーのユーザーは主婦層が圧倒的に多い。最新のシステムを導入するよりも、馴染みのあるものの方が受け入れやすいだろう。また、「マイブレッド」の場合、手持ちのUSBメモリーを使用するのではなく、本体と統一感のある専用USBメモリーを利用するので、デザイン性も高い。

 ホームベーカリーに限らず、家電を購入する際に消費者が重視するポイントのうち、最も要望の多いのが「操作性」だ。いかに高機能の機器でも、操作が面倒だったり、使いにくかったりすれば、無用の長物、宝の持ち腐れだ。「マイブレッド」の場合、USBメモリーのほかに、画面を見ながら操作部の6つのボタンを順次押していく従来モデルの操作方式を一新、ボタンを思い切って1つにし、そのボタンを左右に回してメニューをスクロールさせる方式にしている。さらに材料やレシピ、手順もすべて画面に表示されるため、レシピブックが不要となっている。

 ティファールの「マイブレッド」を見ていると、「最新」が何でもかんでも良いというわけではないことを思い知らされる。とくに家電の場合、毎日使うものだから、技術の押し付けではなく、利用者の視点に立った製品開発が必要なのだろう。流行のスマートフォンじゃなく、あえてUSBメモリーを使い、それでレシピを入手して楽しむ程度が、今の「最新」とアナログのちょうど中間、いい塩梅なのかもしれない。(編集担当:樋口隆)

※この記事はエコノミックニュースから提供を受けて配信しています。

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