[仕事術]仕事中の昼寝は生産性を上げる

2012年5月15日 20:19

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昔は、仕事中に昼寝をすると解雇されるか、少なくとも厳重な懲戒処分を受けたことでしょう。しかし、現代の職場ではそうとも限りません。

昔は、仕事中に昼寝をすると解雇されるか、少なくとも厳重な懲戒処分を受けたことでしょう。しかし、現代の職場ではそうとも限りません。[写真拡大]

 昔は、仕事中に昼寝をすると解雇されるか、少なくとも厳重な懲戒処分を受けたことでしょう。しかし、現代の職場ではそうとも限りません。

 米国では昼寝をほんの26分するだけで、業績が34%も上がり、集中力は54%も高まるという研究結果を受けて、雇用者の多くが従業員に十分休息をとってもらいたいと思うようになり、職場に昼寝指定スペースを設けました。(ただし、未だに机の下で昼寝するジョージ・コスタンザ・スタイルを取る人もいますが。)

 このことに関連して、Alissa Alvarez によるブログ記事の一部をご紹介します。記事には、昼寝休憩を毎日数分取らせてくれる企業のリストが掲載されています。すべての企業が挙げられているわけではありませんが、それを見ると、昼寝が仕事に与える効果の大きさについて、どれだけ多くの大手企業が認めているかがわかるでしょう。ここでは、従業員の力を最大限に引き出すのに昼寝が役に立つという考えから昼寝を取り入れている企業をいくつかご紹介しましょう。

■グーグル(Google)
 グーグルは有名な企業ですが、シリコンバレーのマウンテンビューにあるカリフォルニア・キャンパスでは社員が様々な特典が受けられることでも知られています。

 社内には、従業員が利用できるスポーツクラブや美容院、娯楽室やクリーニング店、グルメ志向の食事が食べられる食堂や診療所、マッサージ&瞑想室が備えられています。そして、もちろん昼寝装置もあります。

 この装置はエネルギー・ポッドと呼ばれ、へとへとになったグーグル社員が勤務時間中にちょっとした昼寝を楽しめるようになっています。その中に入ると光と音が遮断され、社員が起きる時間になると寝過ごし防止のためにアラームが鳴る仕組みになっています。

 このリストに載っている他の企業と同様に、グーグルも、昼寝をすると従業員がより生産的かつ創造的になると確信しています。グーグルのウェブアプリケーションがますます成長していることを見ても、その方針が社に何か悪影響をもたらしているようには思えません。

■ベン&ジェリーズ (Ben & Jerry’s)
 自然志向のアイスクリームを製造するベン&ジェリーズも、職場での昼寝を支持している企業です。この会社では、全従業員が幸せで健康でいられるように努めていて、昼寝は健康を考慮するうえで見過ごせない重要な手段のひとつなのです。

 本社には仮眠部屋があり、仮眠を必要とする人が静かな眠りを求めてやってきます。従業員の一人は、昼寝の特典について訊かれると、「とにかくその場を離れることができて、それから、戻ってきてすぐ続きに取り掛かれるのがいい」と言ったそうです。この仕事中の特典が気に入られるのも無理はないですね。

■ザッポス(Zappos)
 通販サイトを運営するザッポスは顧客サービスの素晴らしさで世界的に有名ですが、この会社が大事にしているのは客だけではありません。従業員にはランチやコーヒーを無料で提供し、健康保険料は全額給付しています。そこに新しく加わったのが、社内に設置された仮眠部屋です。

 ネバダ州にある本社では、従業員は数分間仕事を離れて仮眠部屋に行くことができます。そこには最初、長椅子が置かれていましたが、昼寝装置に改修されました。ところが、 社員たちは風変りな昼寝装置より長椅子のほうがリラックスできて心地よいことに気付き、自分たちの長椅子を戻すよう働きかけて取り戻しました。

■ナイキ(Nike)
 スポーツ関連用品を扱うこの大企業のオレゴンにあるオフィスでは、従業員のための素敵な特典がいくつかあります。

 スポーツクラブや保育施設が社内に設置されているといった素晴らしい福利厚生に加えて、ナイキの従業員は会社の防音室を利用することができ、そこで昼寝や瞑想をするのです。

 会社は昼寝のためだけに場所を提供したわけではありませんが、職場の生産性、健康、そして幸福感が向上することを目的として、睡眠不足の社員には積極的に昼寝を進めています。

■AOL-ハフィントン・ポスト(AOL-Huffington Post)
 ハフィントン・ポストの社名の元になったアリアナ・ハフィントン(Ariana Huffington)は職場での昼寝を熱心に支持していて、十分に休息することの価値について何回もの講演をしています。ですから、このインターネット新聞の大手とAOLの共同オフィスで、昼寝が許可されているだけでなく推奨されていることは、驚くには当たりません。

 従業員は、「NapQuest」ルームというグーグルにある昼寝装置と同じものが設置されている施設で、十分に休息を取ることができます。従業員によると、この仮眠部屋はとても人気があって、昼寝をする従業員で一日中ほとんど占領されているそうです。

■ピザハット (Pizza Hut)
 近所のピザハットであからさまに昼寝をしている店員を見かけることはまずないですが(誰も出くわしたいとも思わないでしょうが)、会社が職場で寝ることに難色を示しているわけではありません。

 昼寝賛成の立場をとる雇用者の数は増えていますが、ピザハットもその一つで、従業員が休憩時間に昼寝を取ることを無条件で認めています。

 他の会社が用意しているような手の込んだ仮眠部屋があるわけではないかもしれませんが、このファーストフードの巨大企業の従業員たちは仕事中に休息する時間と場所を見つけることができます。業績を向上させることに関して言えば、それが一番大事なのかもしれません。

■デロイト・コンサルティング (Deloitte Consulting)
 このコンサルティング会社の社員は真っ昼間にこっそり昼寝をしても問題にはなりません。それどころか、会社はその習慣を後押しし、社員のための仮眠部屋を何部屋か用意しました。快適な家具と遮光ブラインドが備え付けられているその部屋は、一般社員にだけでなく、管理職や上層部の人間にも人気があります。

 今でこそ本格的に使われていますが、社員たちによると、従業員の多くが昼寝のために持ち場を離れることに罪悪感を覚えたので、この考えが受け入れられるまでにはしばらくかかったということです。多くの社員が仮眠部屋を活用する上司の姿を見るにつれて、会社で昼寝をすることがどんどん一般的になり、最終収益にも損害を与えなさそうだということになったのでした。

■ブリティッシュ・エアウェイズ(British Airways)
 仕事中に居眠りをしてほしくない人がいるとしたら、それは誰でしょうか。パイロットです。そのため、旅行関連企業の多くは昼寝を許可していますが、ブリティッシュ・エアウェイズも、自由時間や誰か自分の代わりを務めてくれる人がいる時には社員が昼寝をしてもよいと認めている企業のひとつなのです。

 パイロットは、長時間の国際線フライトの途中、同僚が代わりに操縦を取っているあいだは、仮眠をとってもよいことになっています。しかし、国内線のフライトではアメリカ連邦航空局によって禁止されています。コンチネンタルのような他の航空会社でも、主な鉄道旅会社のほとんどでも、昼寝は認められています。こういった企業では、乗客が安心して旅行ができるようにするべきだからです。

■ワークマン・パブリッシング(Workman Publishing)
 ワークマン・パブリッシングの社員は、職場での昼寝に関して言えば、『となりのサインフェルド』のエピソードをそのまま真似しています。指定の仮眠エリアをこしらえるのではなく、自分のデスクの下やパーティションの後ろで寝るのです。幼稚園風に敷物を持参して床に引く人もいます。ワークマンのお偉方が是非を判断したわけでも推奨したわけでもなく、従業員がそうすることを選んだのです。

 スーザン・ボロティン編集長曰く、「とても好ましい効果が得られています。私はオフィス用に昼寝マットを常備していて、ときどき横になって安眠マスクをつけては、成り行きにまかせています」また、ボロティン氏は部下に安眠マスクを配り、自分が使っていないときには自身のオフィスの床を昼寝のために提供しています。

■ヤード・メタル(Yarde Metals)
 ヤード・メタルは勤務中の昼寝を推奨した最初の企業のひとつで、事業所内に仮眠部屋を造ったのはずっと以前の1995年のことです。当時、会社の規模は極めて小さく、社員は社長が認めた昼寝をどう受け取っていいのかわかりませんでした。しかし、事業が拡大するにつれて事情は変わり、今では大きくなった会社では、オフィスごとに仮眠部屋が完備されています。

 創業者のクレイグ・ヤードは昨今の労働文化における仮眠部屋の人気を笑って次のように言いました。「事の成り行きは面白い。まったく馬鹿げているとみなされたことが今や最先端をいっている。」

 職場に昼寝を取り入れることで生産性とやる気に何が起こったかを直接経験した今、ヤード氏は自らの決断を後悔することはありません。

 Alissa Alvarez氏の連絡を受け、Online MBAsに掲載している氏のブログから上記の記事を引用しました。

※この記事はKey Organization Systems提供の記事を財経新聞が日本向けに翻訳・編集したものです。

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