トップダウン活動とボトムアップ活動について

2012年4月11日 16:46

印刷

■能動的な組織にしたい
 当社のクライアント先の社長から、従業員の意識改革の為にボトムアップ活動を実施したいという依頼があった。この会社は経営方針発表を毎年、期初に実施し、会社の方針を各部門から個人目標まで落とし込むトップダウン活動を長年推進し、業績を伸ばしている。

 ただ、社長はこのトップダウン活動だけでは組織が受動的になり、活力がなくなるのではないかと心配をして、従業員が自立的に行動し、能動的な組織にできるボトムアップ活動を実施する意思決定をした。

■トップダウン・ボトムアップとは
 このトップダウン活動とボトムアップ活動を考えてみると、欧米流の経営はトップダウンが主体で、ボトムアップ活動は日本的経営の要素が強かった。

 典型的なトップダウン経営手法としてBSC(バランススコアカード)が有名で、最近は日本の大手企業もこの手法を取り入れているところが多い。経営の戦略課題を「財務の視点」「顧客の視点」「内部プロセスの視点」「学習と成長の視点」の4つの視点で抽出し、課題解決テーマを個人まで落し込み、課題解決に向けて活動する。

 この手法は経営の成果(財務の視点)を出すために顧客にどう向かうか(顧客の視点)、内部の業務プロセスをどう高度化するか(内部プロセスの視点)、人材をどう育成するか(学習と成長の視点)の視点でバランスのとれた戦略課題を抽出し解決していく。

 一方、ボトムアップ活動の典型的な手法は過去盛んに日本の企業で実施されたQCサークル活動、小集団活動がある。この手法は現場で起きている問題について、日々仕事をしている現場のメンバーが上司からいわれなくても、自ら問題提起をして、チーム活動で解決していく手法である。

 1980年代、日本製品が品質について世界で認められるようになった一つとしてこの手法が取り上げられ、欧米のメーカもこの小集団の改善活動をこぞって学んだ。ただ近年は、この小集団活動が報告を目的にした形骸化した活動になり、あまり実施されなくなった。
 
■現場では・・・
 我々のコンサルティング現場では、基本的には経営トップが実施したいテーマをトップダウン活動により推進する事が主体だが、活動の中では一人一人の自立的な意識改革を重要な要素としてとらえ、指導しており、トップダウン活動とボトムアップ活動を融合させながら活動している。

 トップダウン活動とボトムアップ活動をうまく組み合せた経営が、日本的経営の強みであり、欧米流のトップダウンが主体の経営がもてはやされている現状で再度、従業員の一人一人の自主性を尊重したボトムアップ活動を見直す必要があると考える。

 現在、先のクライアント先ではボトムアップ活動の為に、この活動のコアに成るキーマンを選出し、キーマンが各組織に仕掛けをして自立的なチーム活動を推進し始めている。社長はスポンサー的な立場で表舞台に出ず、我々コンサルタントも活動が円滑に進む潤滑剤的な役割として裏方的立場で動いている。

 まだ、この活動は緒についたばかりだが、ボトムアップ活動がうまく機能し、能動的組織体質が出来上がるようサポートを続けて行きたいと考える。

著者プロフィール

中山 幹男

中山 幹男(なかやま・みきお) 株式会社A&Mコンサルト 代表取締役

大阪大学工学部機械学科卒業後、大手自動車メーカにおいて商品企画、設計・開発、品質管理、環境対策業務等に従事。その後大手コンサルティングファームの経営コンサルタントとして7年間勤務。
韓国の大手家電メーカを手始めに製造業を中心としたコンサルティングを実施する。1997年に「現場主義を貫き、行動的に活動して成果を出す経営コンサルティング」を目指し、A&Mコンサルトを設立し現在に至る。激変の環境変化の中で、企業の永続的な存続を前提に戦略構築、仕組改革、組織風土改革のトライアングル視点で企業の体質強化を図る。
会社URL  http://www.a-and-m.biz

記事の先頭に戻る

関連記事