サンケイビルのTOB価格を大胆に勝って裏読みすると?=浅妻昭治

2012年1月23日 13:21

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

確か、昨年の大納会までは「復興消費」といっていたように記憶している。東日本大震災の被災地を営業地盤とする食品スーパー株やホームセンター株などが、自粛・低迷していた個人消費の復活をエンジン役に・・・。

確か、昨年の大納会までは「復興消費」といっていたように記憶している。東日本大震災の被災地を営業地盤とする食品スーパー株やホームセンター株などが、自粛・低迷していた個人消費の復活をエンジン役に・・・。[写真拡大]

【浅妻昭治(株式評論家・日本インタビュ新聞社記者)のマーケット・センサー】

■またまた「バブル」のカゲがチラチラ?!

  確か、昨年の大納会までは「復興消費」といっていたように記憶している。東日本大震災の被災地を営業地盤とする食品スーパー株やホームセンター株などが、自粛・低迷していた個人消費の復活をエンジン役に、生活必需品や防災商品、暑さ対策商品などの需要が再燃し、関連商品の販売増が続いて業績を相次いで上方修正し、株価も高値を追ったが、この市場トレンドを総称した相場テーマであった。

  ところが今年の大発会以来、この「復興消費」を「復興バブル」と言い換えている市場関係者が少なくないようである。折からの欧州ソブリンリスクの高まりで、為替相場は、急激な円高・ユーロ安となり、主力株が身動きを取れなくなった反動で、「理屈はあとから貨車でくる」とばかりに復興・内需関連の低値ごろ株を無差別買いして株価が急騰、短期売買のやり過ぎが目立ったから、早くも「バブル」と警戒感を強め、そう言い出したのである。

  さすがにこの「復興バルブ」も、前週末に米国企業の好決算をキッカケに主力株が出直り期待を強めてくると、何だか正念場を迎えるようなムードが漂ってきた。低位株への高値飛び付き買いを敢行した投資家も、急に手仕舞い売りのハシゴの心配をし始めたようである。

  ところが前週末20日に、「復興バブル」に続きまたまた「バブル」の萌芽を示唆するような株価急騰劇があった。日本の資産バブル崩壊、リーマン・ショック以来、グローバル経済は「バブルレス・エコノミー」化したと指摘する識者もいるようだが、どうしてどうして、伝説の大盗っ人・石川五右衛門ではないが、「世にバブルの種は尽きまじ」となるのかもしれない。

  20日に株価が急騰したのは、サンケイビル <8809> (東1・監理)である。親会社が、同社株の株式公開買い付け(TOB)を発表し、TOB価格740円にサヤ寄せし80円高のストップ高で比例配分で値をつけた。この日は、同社株のほかTAIYO <6252> (東2・監理)、ジャパンケアサービスグループ <7566> (JQS・監理)もTOBを発表、いずれもストップ高、1日に3銘柄もTOBとなるのは、それ自体、やや「バブル」っぽいが、問題は、サンケイビルのTOB価格の高プレミアムにある。

  TOB発表日の終値に対するTOB価格のプレミアムは、TAIYO、ジャパンケアが49~85%だったのに対して、サンケイビルは、実に2.49倍にも達しているのである。親会社は、第3者算定機関に株価価値算定を依頼、同機関は、3つの算定手法のうち、ディスカウンテッド・キャッシュ・フロー法で、551~808円と評価、この最も高価格の算定価値を受け入れて高プレミアムでTOB価格を決定した。同TOB価格は、同社のいわゆる解散価値といわれる1株純資産810円を下回るもので、このため、サンケイビルがストップ高となるとともに、PBR1倍割れの不動産株全般に関連思惑買いが波及、株価急騰が相次いだ。

  この不動産株の軒並み高は、かつての地上げが横行した前回の「資産バブル」や不動産投資信託(REIT)設定が引き金になった「REITバブル」を髣髴とさせるものがある。サンケイビルのTOB価格の高プレミアムを大胆・独断推理すると、にわかに「バブル」のカゲがチラチラと見え隠れして、バブル・マインドが抑えきれずに興味津々、リサーチ意欲を刺激してくることになる。(執筆者:浅妻昭治 株式評論家・日本インタビュ新聞 編集長)

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