“6重苦”を解消する製造業の海外展開について~グローバル展開の考え方~

2011年10月24日 13:17

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■6重苦に悩まされる日本経済
 10月3日の日本経済新聞の経営の視点に「6重苦解消、官頼みに限界」の記事が記載されていた。6重苦とは①円高 ②高い法人税 ③厳しい労働規制 ④温暖化ガス排出抑制 ⑤外国との経済連携の遅れ ⑥電力不足で、日本の企業はこの6つのハンディを克服しながら経営活動を続ける必要があるが、このハンディの解消を官頼みにしていても答えはなく、企業の愚直な自助努力で収益をあげる事が近道という記事内容である。

 当社のクライアント先でもこの6重苦、特に円高でコスト競争力が低下する、顧客が海外に生産拠点を移す等の影響で苦しんでいるところが多い。6年前から中国工場を展開している企業、最近、中国に販売会社を設立した企業、国内のみしか生産拠点が無い企業、様々であるが、いずれも今後の海外展開で悩みが多い。

 ご時勢ながら今年の8月後半に、台湾、ベトナムの工場にクライアント先の要請で指導に行ってきた。ベトナムは政府が工場のインフラ等を整え、積極的に日本の企業を誘致しており、これから展開を考えている企業にとってはチャンスと思う。

■海外展開の考え方
 今回は6重苦解消の為の海外展開を検討されている企業向けに、海外指導経験も含めて考え方をお伝えしたい。

1.海外展開の構想、意思決定段階
 まず、海外展開を実行する目的の明確化が必要で、意外とこの目的を明らかにせずに海外に工場を設立している企業が多い。コスト競争力を強化する為に海外工場を設立して、製品を日本への輸入をする為か、自動車メーカのように海外の販売市場に近いところで製品を製造、販売し、連結で売上を拡大する為なのか、あるいは海外で生産し、海外に販売しグローバル展開を図る為か、顧客が海外展開をするので、海外に出ないと売上が確保できず、海外展開をするのか。いずれの対応も国内生産は減る為、明確な目的、方針が必要と考える。

 目的の次に海外工場展開の複数案を検討して、目的に適合した手段を決定する。当然ながらメリット、デメリットを鑑みて対応策を決定するわけであるが、この際の視点としては着眼大局、着手小局の考え方が重要と思う。例えば、最初はレンタル工場から始めて手応えをつかんで本格進出を決める考え方のように。但し、この中で資本投資に対してよく合弁と独資が課題となるが、いままでの経験から独資が最適と考える。特に中国では資本家はあくまでも、如何に短期に投資回収をするかが重要であり、日本の中期的な経営感覚と会わない場合が非常に多い。結果として合弁解消の事例を多数見てきている。

2.海外展開の企画、設立段階
 次に企画段階では、日本の工場をマザー工場としての位置付けで、製品開発技術、生産技術、製造技術のブラッシュアップを図り、この技術を海外工場に移転する考え方をもつべきと考える。日本の製造業の優位性は品質の造り込みに対して設計⇒生産技術⇒製造の一気通貫の優位性のある仕組であり、この仕組の移転が重要である。

 また、組織体制は日本のマネジメント層、現地のマネジメント層、現地の操業のメンバーの人事構成をとり、決して、現地任せにならない体制が必要で、日本風土と現地風土の融合の考え方が必要と考える。

3.海外展開の運営段階
 国民性の違いにより日本では考えられない、色々なトラブルが発生するが、基本はPDCAのマネジメントサイクルを回す事と現場とのコミュニケーション、日本とのコミュニケーションをとる事が基本で、この考え方で運営すれば、ほとんどの問題が解決できると考える。

著者プロフィール

中山 幹男

中山 幹男(なかやま・みきお) 株式会社A&Mコンサルト 代表取締役

大阪大学工学部機械学科卒業後、大手自動車メーカにおいて商品企画、設計・開発、品質管理、環境対策業務等に従事。その後大手コンサルティングファームの経営コンサルタントとして7年間勤務。
韓国の大手家電メーカを手始めに製造業を中心としたコンサルティングを実施する。1997年に「現場主義を貫き、行動的に活動して成果を出す経営コンサルティング」を目指し、A&Mコンサルトを設立し現在に至る。激変の環境変化の中で、企業の永続的な存続を前提に戦略構築、仕組改革、組織風土改革のトライアングル視点で企業の体質強化を図る。
会社URL  http://www.a-and-m.biz

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