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ISS最後の太陽電池アレイ設置へ、NASAが船外活動で取り付け機器を整備

STS-127ミッションで行われた5回目かつ最後の船外活動中に撮影された、地球の地平線と交差するように見える国際宇宙ステーション(ISS)の太陽電池パネル。7月24日、トム・マーシュバーン宇宙飛行士とクリストファー・キャシディ宇宙飛行士が船外でISSの作業を続ける間、STS-127とISS第20次長期滞在クルーは、このような眺めを楽しむことができた。当時、ほかの宇宙飛行士と宇宙飛行士(コスモノート)計11人は、ISSとドッキング中のスペースシャトル内にいた。(NASA.gov)[写真拡大]
NASAのジェシカ・メイア宇宙飛行士とアニル・メノン宇宙飛行士は、米国東部時間8月6日、国際宇宙ステーション(ISS)での船外活動を完了した。この活動では、ISSにとって7基目となる展開式太陽電池アレイ(iROSA)を取り付けるためのハードウェアを設置した。2026年後半に予定されているこのアレイの追加は、ISSの運用維持だけでなく、2030年に計画されている安全な軌道離脱に必要な電力を確保する上でも重要な役割を果たす。
■船外活動の概要と目的
NASAのジェシカ・メイア宇宙飛行士とアニル・メノン宇宙飛行士は、米国東部時間8月6日木曜日の午後3時(日本時間7日午前4時)、6時間27分にわたる国際宇宙ステーション(ISS)外での活動を終え、クエスト・エアロックを密閉した。この活動で、ISSが受け取る7基目にして最後となる展開式太陽電池アレイ(iROSA)を設置するための取り付け用ハードウェアを組み上げた。米国による96回目の船外活動(EVA-96)であり、ISSの組み立て、保守、アップグレードの歴史において281回目となる今回の活動により、3B電力チャンネルは、新しいウイングを受け入れるまでに必要な作業を、あと1回の機材搬入を残す段階まで進めた。その機材搬入は2026年後半に予定されており、完了すれば、NASAがISSを維持するためだけでなく、2030年に安全に軌道離脱させるために必要とする電力構成が整うことになる。
木曜日の船外活動は、メノン宇宙飛行士にとって初めてだった。彼は23日前にソユーズMS-29でISSに到着し、地球上では300ポンド(136キログラム)を超える質量を持つ6本の支柱と取り付け用ブラケットの部品が入った、長さ8フィート(約2.4メートル)のバッグの片端を抱えて、人生で初めて宇宙空間に出た。微小重力下でも質量が生み出す慣性は残るため、このバッグを取り回すのは容易ではなかった。メノン宇宙飛行士とメイア宇宙飛行士は、ピストルグリップ型工具を使ってブラケットを一から組み立て、将来のアレイから3Bチャンネルへ電力を送るためのケーブルを配線し、新たに設置した支柱を微小隕石の衝突から守るため、多層断熱材で覆った。このミッションはすべての主要目標を達成した。
これはISSで予定されている最後の船外活動ではなく、今月中にさらに2回の船外活動が計画されている。しかし、宇宙飛行士がISSの発電能力を追加することを主目的として船外に出るのは、今回が最後となる。ISSは、外部電力系統に対する最後の増強作業を進めながら、運用の最終段階に入る。
■展開式太陽電池アレイ技術の仕組み
最終的に3Bチャンネルに設置されるiROSAウイングは、2000年代初頭にISSが備えていた太陽電池アレイとは異なる。当初の太陽電池アレイウイングは、機械式ヒンジで折りたたむ剛性パネルを使用しており、重く、収納時の体積が大きく、機械的にも複雑だった。iROSAの設計は、そうした構造を不要にしている。
各iROSAウイングには、ボーイングの子会社Spectrolabが製造する、変換効率30.7%のXTJ Primeトリプルジャンクション(3接合)太陽電池セルが使われている。トリプルジャンクションとは、太陽光スペクトルの異なる帯域を吸収するよう調整された3つの光起電力半導体層を積層したセルを意味する。地上の太陽光発電設備の多くで使われる単接合型のシリコンセルは、入射する太陽エネルギーの約20~22%を取り込む。一方、トリプルジャンクションセルは、シリコンセルでは捉えられない光子も利用できる。最上層のリン化ガリウムインジウムは高エネルギーの青色光と紫外線の光子を受け持ち、中間層のヒ化ガリウムは可視光スペクトルのピークを捉え、最下層のゲルマニウムは上の2層を通過した赤外線の光子を捉える。3層を組み合わせることで、入射する太陽放射の約30.7%を電流に変換する。
これらのセルは柔軟な基材に接着され、大工が使う巻き尺のように機能する複合材製ブームスパーの周囲に巻き付けられている。ブームスパーは機械的な張力をかけた状態で平らに収納され、拘束を解放すると外側へ伸びてアレイを展開する。展開にモーターやギア、電気式の駆動機構は必要ない。スパーには巻き取り工程で生じたひずみエネルギーが蓄えられており、それを解放することでアレイが自律的に展開する。このため、ISSが当初備えていた剛性型システムより可動部品が少なく、故障につながる要因も少ない。地球の影に入った際の約マイナス157度から、直射日光下の121度まで温度が変動する軌道環境では、可動部品が少ないことが重要になる。すべてのヒンジ、モーター、ギアの接続部が潜在的な故障箇所となるからだ。
その結果、各iROSAウイングは同等の電力を供給する剛性アレイより約20%軽く、収納時の体積も約4分の1に抑えられる。SpaceXの貨物宇宙船Dragonの非与圧トランクに収まるほど小さく、各ウイングは運用開始時に28キロワットを超える電力を生成する。
3B電力チャンネルの改修が必要になった背景には、もう一つの事情がある。iROSAウイングは、ISSの既存の太陽電池アレイを置き換えるものではない。既存アレイの前方にわずかに角度を付けて設置され、従来のパネルを撤去するのではなく、その発電能力を補強する。既存のパネルも、iROSAの陰にならない部分で発電を続ける。この構成では、3Bチャンネルの電力管理用電子機器を、単一の電源ではなく、劣化した既存アレイと新しいiROSAという2つの電源からの入力を同時に受け入れられるよう更新する必要がある。メイア宇宙飛行士とメノン宇宙飛行士が木曜日に設置した改修キットは、この2電源からの入力を可能にする電気的インターフェースである。
■5年間にわたる電力アップグレードとその終了の理由
iROSAプログラムは、広く把握されていた問題への直接的な対応として、2021年6月に始まった。ISSの8基の既存太陽電池アレイウイングは、運用寿命15年を想定して設計されていたが、2021年時点ですでに20年以上稼働していた。その出力は大幅に低下していた。NASAはボーイングと契約し、ボーイングはRedwireと契約して、DragonのトランクでISSへ輸送でき、既存の電力設備を撤去せずに船外活動で設置できる新世代のアレイを製造した。
最初の1対のウイングは2021年6月に打ち上げられ、3回の船外活動で設置された。2対目は2022年12月に続き、3対目は2023年に展開された。これにより、劣化した既存アレイだけで供給できる電力と比べ、合計発電能力は30%以上向上した。最初の6基のウイングは、ボーイングの既存のISSエンジニアリング契約に対する1億300万ドル(約162億7400万円、1ドル=158円換算)の契約変更を通じて調達された。7基目と8基目のウイングは4対目に当たり、2023年6月に3500万ドル強(約55億3000万円強、同換算)で契約され、2025年1月にRedwireからボーイングへ納入された。
木曜日の作業では、7基目のウイングを取り付ける架台を準備した。iROSAがまだ設置されていないもう一つのチャンネルである2A電力チャンネルも、8基目のウイングを設置する前に同様の改修が必要になる。本記事の公開時点では、その作業が8月の船外活動シリーズに含まれるとの発表はなかった。
■7基目のアレイが異なる理由
最初の6基のiROSAウイングは、低下したISSの発電能力を回復させるためのものだった。7基目のウイングには、より具体的な目的がある。NASAの制御軌道離脱計画に必要な電力の余裕を確保することだ。435トン(95万8000ポンド)の軌道上構造物を南太平洋上の正確な再突入経路へ誘導するには、数時間に及ぶ最終シーケンスを通じて、動力を使った姿勢制御、アビオニクスの稼働、SpaceXが製造する米国軌道離脱機(U.S. Deorbit Vehicle)との継続的な接続が必要になる。この一連の作業には電力が必要であり、7基目のiROSAがその電力を供給する。
ロスコスモスは今月、ロシアのプログレス補給船を使ったISSの軌道降下を2028年に開始し、2030年後半に米国軌道離脱機が最後の噴射を行って、ポイント・ネモ付近の人里離れた太平洋上の落下区域へISSを誘導する予定であることを確認した。木曜日のブラケット設置は、その最終シーケンスに向けた最初の船外作業となる。
■メイアとメノン:船外活動を行った宇宙飛行士
ジェシカ・メイア宇宙飛行士にとって、木曜日の活動は通算6回目の船外活動だった。その経歴は、メイア宇宙飛行士とクリスティーナ・コック宇宙飛行士が宇宙飛行史上初となる女性だけの船外活動を実施した2019年10月18日にさかのぼる。このとき2人は、7時間17分にわたる船外活動でISSの電力システムのバッテリー充放電ユニットを交換した。メイア宇宙飛行士は2026年2月、SpaceX Crew-12のコマンダーとして打ち上げられ、その後、自らが指揮するISSから5回の船外活動を実施した。累計船外活動時間は42時間33分となった。
アニル・メノン宇宙飛行士は、メイア宇宙飛行士とは異なる経歴を経てクエスト・エアロックにたどり着いた。ハーバード大学で神経生物学の学士号を、スタンフォード大学で機械工学の修士号と医学博士号を取得しており、米国宇宙軍の大佐も務めている。2021年のNASA宇宙飛行士候補者クラスに選ばれる前は、SpaceX初のフライトサージャンを務めた。フライトサージャンは、打ち上げクルーが医学的に飛行可能な状態であることを確認する医師である。メノン宇宙飛行士は同社の宇宙飛行医学プログラムを一から構築し、Dragonカプセルに初めて宇宙飛行士を乗せたDemo-2ミッションを含む5回の打ち上げで主任フライトサージャンを務めた。また、2010年のハイチ地震、2015年のネパール地震、2011年のリノ・エアショー事故の後には、緊急対応要員として活動した経験もある。
メノン宇宙飛行士のNASA公式経歴には記載されていない事実もある。妻のアンナ・メノン氏は、ジャレッド・アイザックマン氏とサラ・ギリス氏が史上初の民間商業船外活動を行った、2024年9月のPolaris Dawnミッションに搭乗した。木曜日にアニル・メノン宇宙飛行士が初めて船外へ出たことで、夫妻はいずれも宇宙飛行を経験したことになった。現時点では、ほかの家族にはない経歴だ。
船外活動中、メイア宇宙飛行士は作業場所から月が見えることに触れ、自分たちがISSをこれから進ませようとしている距離について語った。地球上空420キロメートル(261マイル)を周回する実験施設の外から月を眺めたメノン宇宙飛行士は、そこに将来の月面基地が見えると語った。
■8月の今後の予定
EVA-96は、8月に計画されている3回の米国船外活動の最初のものだった。米国による97回目の船外活動(EVA-97)は8月13日に予定されており、ISS外部にある宇宙・地上間通信アンテナを交換する。このアンテナは、NASAの追跡・データ中継衛星システムを介して、ISSのクルーとヒューストンのミッションコントロールとの間で音声、高精細映像、テレメトリを伝送する無線リンクを担う。
米国による98回目の船外活動(EVA-98)は8月25日に予定されている。継続的な保守作業の一環として電力ケーブルとデータケーブルを接続するほか、宇宙船の接近とドッキングに使用される、ハーモニー・モジュール前方のドッキングポートにある航法支援装置を交換する。本記事の公開時点で、NASAはこの2回の船外活動を担当するクルーを発表していなかった。
3回の船外活動はいずれも、同じ目標に向けたものだ。人類史上最も長く継続して有人運用されている前哨基地である、運用開始から26年を迎えた実験施設を、正常に機能し、十分な電力を持ち、計画どおりに軌道を離脱できる状態に保つことである。
■注目ポイントQ&A
●EVA-96でメイア宇宙飛行士とメノン宇宙飛行士は具体的に何を達成しましたか?
2人は、ISSのメイントラスの右舷端にあるS6セグメントの3Bマストキャニスターに、6本の支柱とブラケットで構成される取り付け用アセンブリ「3B改修キット」を組み立てて設置しました。このハードウェアは、2026年後半にDragon貨物宇宙船で到着する7基目のiROSAウイングを取り付けるためのものです。また、新しいアレイが展開された後に3Bチャンネルへ電力を供給できるよう電気ケーブルを配線し、新しいハードウェアを微小隕石の衝突から保護する多層断熱材を取り付けました。2人は6時間27分ですべての主要目標を達成しました。
●展開式太陽電池アレイはモーターなしでどのように展開するのですか?
iROSAは、炭素繊維複合材で作られた柔軟な棒状部材である複合材製ブームスパーを使用しています。打ち上げに向けてアレイを巻き取る際、ブームスパーには機械的な応力が加わります。スパーはその応力を、技術者がひずみエネルギーと呼ぶ形で蓄えます。これは基本的に、巻かれたばねと同じ物理的な仕組みです。軌道上で展開指令が出ると、巻かれたアレイを保持していた拘束が解除され、スパーに蓄えられたひずみエネルギーによってスパーが外側へ伸び、太陽電池ブランケットが自律的に展開します。展開を駆動するモーターはありません。ブランケット上にある変換効率30.7%のXTJ Primeトリプルジャンクションセルは、3つのスペクトル帯域から太陽エネルギーを同時に取り込めます。これにより、2000年代初頭の同等出力の剛性アレイより大幅に少ない質量と体積で、1ウイング当たり28キロワットを超える電力を生成できます。
●なぜ7基目のiROSAがISSの軌道離脱にとって特に重要なのですか?
NASAが2030年末に計画している制御軌道離脱では、ISSが自らの再突入を能動的に管理する必要があります。これには、姿勢制御の維持、アビオニクスの稼働、米国軌道離脱機がスラスター噴射を行う間の同機との電気的接続の維持が含まれます。これらの作業にはすべて電力が必要です。運用寿命15年として設計されたISSの既存太陽電池アレイウイングは、20年以上軌道上で稼働しており、発電能力が大幅に低下しています。7基目の設置と展開が完了すれば、7基のiROSAウイングによって、ISSが安全かつ正確に再突入するために必要な電力の余裕が回復します。十分な電力がなければ、人口の多い地域を破片から守るために計画された、南太平洋の人里離れた海域への制御軌道離脱を確実に実施することは著しく難しくなります。
●次のISS船外活動はいつですか?また、どこで視聴できますか?
米国による97回目の船外活動(EVA-97)は8月13日に予定されています。ISS外部の宇宙・地上間通信アンテナを交換する予定です。ライブ中継は、予定開始時刻の約1時間前からNASA+、Amazon Prime Video、NASAのYouTubeチャンネルで始まる見込みです。本記事の公開時点で、NASAはEVA-97またはEVA-98(8月25日)を担当する宇宙飛行士を発表していません。
元記事: ISS Spacewalk 96 Complete: Mounting Hardware Cleared for Final Solar Array
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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