冥王星の窒素氷河で「底面融解」か、液体窒素が地表へ流出した可能性

2026年8月7日 20:41

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記事提供元:Tech Times

冥王星北部のスプートニク平原にある氷河を、NASAの探査機「ニュー・ホライズンズ」が撮影した画像から作成したカラーモザイクで示した。画像内には北の方角が示されており、表示範囲は約700km×350km。赤枠は、氷河の下で起きる「底面融解」によって生じた液体窒素が氷河を濡らした痕跡とされる暗い地形の大部分を囲むために追加された。(Johns Hopkins/NASA.gov)

冥王星北部のスプートニク平原にある氷河を、NASAの探査機「ニュー・ホライズンズ」が撮影した画像から作成したカラーモザイクで示した。画像内には北の方角が示されており、表示範囲は約700km×350km。赤枠は、氷河の下で起きる「底面融解」によって生じた液体窒素が氷河を濡らした痕跡とされる暗い地形の大部分を囲むために追加された。(Johns Hopkins/NASA.gov)[写真拡大]

NASAの探査機「ニュー・ホライズンズ」が冥王星をフライバイしてから11年、収集された画像の新たな解析により、氷河の下から液体窒素が湧き出ている可能性が示された。極寒の環境下でも氷河底面の圧力と地熱によって窒素が融解している可能性があり、太陽系外縁部の天体が地質学的に活動していることを示唆している。ただし、これは形態学的な証拠に基づく仮説であり、確定には将来の探査ミッションによる直接観測が必要となる。

■冥王星の表面を流れた液体窒素の可能性

NASAの探査機「ニュー・ホライズンズ」が冥王星系を短時間フライバイ(接近通過)してから11年、収集された画像の新たな解析により、惑星科学者が誰も予想していなかった可能性が浮上した。太陽系で最も有名なこの準惑星の表面を、固体の氷や希薄なガスだけでなく、液体窒素が比較的最近になって流れた可能性があるというのだ。冥王星の大気条件では液体窒素の雨が降ることは物理的に不可能であるため、空から降ってきたものではない。氷の内部深くにある圧力と熱によって、氷河の下から上向きに染み出した可能性がある。NASAは8月5日、同局のScienceウェブサイトに掲載したブログ記事で、この研究結果を確認した。7月31日付の『The Planetary Science Journal』誌に掲載された研究は、ニュー・ホライズンズ計画の主任研究員でもある、コロラド州ボルダーのサウスウエスト研究所(SwRI)のアラン・スターン博士が主導し、SwRI、SETI研究所、コロラド大学の研究者らが共同で実施した。

「冥王星は常に私たちを驚かせてくれます」と、スターン博士は今回の研究に関するSwRIのプレスリリースに添えられた声明で述べている。「この結果は、冥王星の表面に比較的最近、液体が現れた可能性を示唆するだけでなく、時間とともに変化する新たな種類の特徴が冥王星に存在する可能性も示しています」

この発見が発表される前日には、冥王星の大気が測定可能なほど収縮し始めていることを確認した別の2026年の研究をTechTimesが報じていた。これら2つの論文は、太陽から地球までの距離の約39倍離れた、約マイナス229度という極寒の環境下でも、変化を続け、液体が染み出す可能性のある世界の姿を描き出している。

■氷河の暗い模様が示す「底面融解」

証拠は、冥王星の特徴的なハート形の地形「トンボー地域」の明るい西側部分を形成する、巨大な窒素氷河「スプートニク平原」から得られた。差し渡し約1,000kmに及び、テキサス州とオクラホマ州を合わせた面積よりも広いスプートニク平原は、2015年7月14日のフライバイでニュー・ホライズンズがかつてないほど詳細に捉えて以来、太陽系外縁部で最も詳しく研究されてきた地形の一つである。

SwRIが主導する研究チームが、ニュー・ホライズンズの画像で氷河の最北部を調べたところ、容易には説明できない特徴が見つかった。氷河にある都市ほどの大きさの対流セルの間を縫うように走る、暗く細い線状の模様と、より広く拡散した暗い斑点である。これらの模様は、研究チームに加わった地球の氷河学者が、全く異なる環境で認識していたパターンと酷似していた。

チームは直接比較するため、NASAの地球観測衛星「ランドサット9号」が撮影したグリーンランド氷床の画像を入手した。グリーンランドでは、ほぼ同じ暗く細い模様が、液体の水が氷の下から表面に達した、または表面へ湧き出した場所に見られる。これは「底面融解」と呼ばれる現象によって生じることが確認されている。底面融解とは、表面が完全に凍りついたままでも、地熱と氷河の圧力によって氷河の最深部にある氷が融解するプロセスである。研究者らは、冥王星の特徴もこれと非常によく似ており、液体の水ではなく液体窒素である点を除けば、同じプロセスが起きた可能性があると結論づけた。

「スプートニク平原の表面は非常に若く、表面の入れ替わりに関するモデルに基づけば、おそらく100万年未満です。したがって、私たちが調べているこれらの特徴は、それ以降に形成されたはずです」と、SwRIの主任科学者で本研究の共同著者でもあるケルシ・シンガー博士は述べている。「冥王星には太陽系の他のどこにも見られない独特な地形が数多くあり、スプートニク平原のこの一帯もその一つです」

■極寒の世界で液体窒素が存在するメカニズム

窒素は約マイナス210度で凍結する。冥王星の表面温度は平均して約マイナス229度であり、その温度を大きく下回っている。しかし、それはあくまで表面の話である。スプートニク平原の窒素氷河は数キロメートルの深さがあり、その深さでは圧力によって融解条件が変わる。

この原理は「圧力誘起融解」と呼ばれ、地球上でアイススケートの刃の下の氷が溶けるのと同じ物理現象である。深さと上から覆う氷の質量が増すにつれて、氷河底部の圧力が上昇し、固体窒素の融点を下げるのに十分な水準に達する。これに冥王星の岩石質の内部から上向きに伝わる残留地熱が組み合わさることで、十分に深い窒素氷河の底部は、窒素が液体として安定する条件に入り得る。表面温度だけを考えれば存在し得ない液体窒素が、氷河の底で生じる可能性があるということだ。地球の氷河における底面融解も、同じ基礎的な物理によって説明される。

SETI研究所の上級研究科学者で、本研究の共同著者でもあるオルカン・ウムルハン博士が開発したコンピュータモデルは、スプートニク平原の底部にある窒素氷が、このような融解条件に達し得ることを示している。液体が形成されると、浮力によって上方へ移動する。液体窒素は周囲の固体窒素氷よりも密度が低いため、氷河内の小さな亀裂や流路を通って上昇する。仕組みとしては、水が間欠泉の流路を上昇する現象や、溶岩が火山の管状の経路を移動する現象に似ている。地表近くに達した液体窒素は、極度の寒さとほぼ真空の大気によって凍結または蒸発するまでの間、斜面に沿って氷河上を流れるのに十分な時間、液体の状態を保てる可能性がある。

「これらの発見の大きな意義と、そこから浮かび上がる興味深い全体像は、極低温における固体窒素の物理をさらに調べる大きな動機になると思います」とウムルハン博士は述べている。「特に、応力やひずみを受け、それによって融解する可能性のある固体窒素物質の内部で起きる物理現象を調べることが重要です。こうしたプロセスは、実験室で本格的に詳しく研究されたことがありません」

論文のタイトルでは、この発見を「可能性のある(possible)」底面流動と表現している。証拠は液体窒素の直接的な分光検出ではなく、地形や模様の形態に基づくためだ。暗い浸潤模様は底面流動仮説と整合するが、現在運用中または資金を獲得しているミッションでは取得できない、より高解像度の追加データがなければ、別の説明を排除することはできない。

■太陽系外縁部の「寒すぎて不活発」という常識の見直し

この発見は、「極寒は地質学的な停滞を意味する」という長年の前提の見直しを迫るものである。氷河が十分に深く、何らかの内部熱源が存在するという条件のもとで、底面融解がマイナス229度の世界でも流動する液体窒素を生み出せるのであれば、このメカニズムは、十分に深い盆地に大量の窒素氷が堆積している太陽系外縁部の他の場所でも働く可能性がある。

この可能性は、長年にわたって積み重なってきた一連の観測結果とも一致する。NASAの探査機「ボイジャー2号」は、1989年のフライバイの際、海王星の衛星トリトンで少なくとも2つの活発な間欠泉状の噴流を記録した。その一つは高さ8kmに達し、風下へ150kmにわたって物質をたなびかせていた。トリトンは、冥王星と組成が似た、海王星に捕獲されたカイパーベルト天体と考えられており、窒素に富む表面を持つ。これらの噴流を説明する仮説には、長年にわたり、窒素の極冠における底面融解が含まれてきた。NASAのトリトン画像アーカイブにも記録されているこうした現象について、スターンらによる2026年のメカニズムは、底面融解説にこれまでで最も強い理論的な裏付けを与えるものとなる。

さらに遠方では、2024年にSwRIのクリストファー・グレイン博士が率いるチームが、NASAのジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡を使い、カイパーベルトにある2つの大型準惑星、エリスとマケマケの内部で熱水活動または変成活動が起きている証拠を発見した。メタン氷のD/H比(重水素と水素の比率)は、熱を生み出す内部の地球化学的プロセスと、その副産物として窒素が生じている可能性を示していた。「カイパーベルトには、私たちが想像していたよりもはるかに多くの動的な世界が存在し、ずっと活動的であることが分かりつつあります」と、グレイン博士は当時、SwRIのプレスリリースで述べている。ただし、すべての惑星科学者がこの解釈に納得しているわけではない。カリフォルニア工科大学のマイク・ブラウン氏は、カイパーベルト探査の展望を扱った幅広いレビューの中で、「誰もが天体に地質学的に活動していてほしいと考えている」と述べ、この解釈に一定の懐疑を示した。

スターンらによる2026年の底面流動に関する研究結果は、エリスとマケマケの内部熱を示す証拠や、トリトンの間欠泉状噴流の記録と合わせると、太陽系外縁部が、その温度から想像されるよりもはるかに活動的である可能性を示す一貫した論拠となる。

■残された謎と将来の探査への課題

研究者らは、データに大きな空白があることを認めている。スプートニク平原の北部には、底面流動と整合する暗い浸潤模様が見られるが、冥王星の表面の半分以上は高解像度でマッピングされていない。これは、ニュー・ホライズンズが冥王星を近くから観測できたのが、たった一度の短時間のフライバイに限られていたためである。氷河の別の場所や、冥王星の全く異なる地域にも同様の特徴が存在するかどうかは分かっていない。

論文の形態学的証拠がいかに説得力を持つとしても、液体窒素の分光学的な直接検出に代わるものではない。そのような測定には、適切な観測機器を搭載して冥王星を再訪する探査機か、現在の地球からの観測能力を超える水準のリモートセンシングが必要となる。

現在、冥王星を再訪するミッションで資金提供を受けているものはない。冥王星オービター(周回探査機)の構想はSwRIによって幅広く検討され、早ければ2020年代後半に打ち上げ、2046年ごろに到着する案が提示されているが、承認または資金提供を受けた計画は一つもない。論文の著者らは、底面融解が局所的な現象なのか、それとも太陽系外縁部で広く起きるプロセスなのかを解明する第一歩として、冥王星と他のカイパーベルト天体をさらに高解像度でマッピングするよう求めている。

今のところ、ニュー・ホライズンズのデータセットは、探査機が冥王星を離れてから10年以上が経過した現在も、基礎的かつ重要な発見をもたらし続けている。「冥王星の北スプートニク平原の下におけるN₂底面流動の可能性を示す証拠(Evidence for Possible N₂ Basal Flow beneath Pluto's Northern Sputnik Planitia)」と題された論文は、スターン、ウムルハン、ゲイリー・D・クロウ、ロバート・S・アンダーソン、アラン・ハワード、ケルシ・N・シンガーによって執筆された。ニュー・ホライズンズはジョンズ・ホプキンス大学応用物理学研究所によって設計、製造、運用されており、ミッションはマーシャル宇宙飛行センターに置かれたNASAの惑星ミッションプログラムオフィスが監督している。

■注目ポイントQ&A

●科学者たちは冥王星の表面で何を発見したのですか?

冥王星の窒素氷河であるスプートニク平原の最北部で、地球のグリーンランド氷床において液体の水が下から表面へ達した場所に見られるパターンと酷似した、暗く細い線状の模様と広く拡散した斑点を発見しました。冥王星の環境では液体窒素の雨は物理的に不可能なため、数キロメートルの深さがある氷河の底で、圧力と地熱によって窒素が融解し、流路を通って上昇して表面を濡らす「底面融解」が、最も可能性の高い説明だと研究チームは考えています。ただし、これは形態学的な証拠に基づく「可能性」であり、液体窒素を直接検出したわけではありません。

●そのような極寒の世界で、なぜ液体窒素が存在できるのですか?

冥王星の表面温度である約マイナス229度は、窒素の凝固点である約マイナス210度を大きく下回っていますが、数キロメートルの深さがある氷河の底では条件が異なります。上を覆う大量の氷による圧力によって、固体窒素の融点が下がるためです。これは、氷点下でもスケート靴の刃の下で氷が溶けるのと同じ原理です。これに冥王星の岩石質の内部から伝わる残留地熱が加わることで、氷河底部が液体窒素の安定する条件に達し、生じた液体が氷の割れ目を通って浮力で上昇すると考えられています。

●この発見は、他の氷の天体に対する科学者の見方を変えるものですか?

はい、大きく変える可能性があります。マイナス229度前後の冥王星で底面融解が起こり得るなら、十分な氷の深さと何らかの内部熱がある他の天体でも、同じメカニズムが働く可能性があります。例えば、海王星の衛星トリトンで観測された間欠泉状の噴流についても、底面融解によるものだとする説明に強い理論的裏付けを与えます。また、カイパーベルトの準惑星であるエリスとマケマケでも、内部の地球化学的活動を示す証拠が見つかっています。これらを総合すると、太陽系外縁部の大型氷天体は「寒すぎて活動できない」という前提が、必ずしも成り立たない可能性があります。

●科学者たちはこの発見を確定させることができるのでしょうか?

近い将来の確定は難しく、新たな探査ミッションが必要です。ニュー・ホライズンズの画像から得られた形態学的証拠は示唆的ですが、決定的なものではありません。液体窒素の直接検出には、冥王星の表面により近い場所で観測できる機器が必要です。現在、冥王星を再訪するミッションで資金提供を受けているものはなく、こうした観測が可能な探査機が冥王星に到達するのは、早くても2040年代半ばになるとみられます。また、冥王星の表面の半分以上は高解像度でマッピングされていないため、底面流動とみられる特徴がどの程度広がっているかも分かっていません。

元記事: Pluto’s Glacier Is Leaking Liquid Nitrogen From Below, New Study Finds

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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