Rocket Lab、Electron通算99回目の打ち上げ成功 QPS研究所「ワダツミ-Ⅱ」を軌道へ

(rocketlabcorp.com)[写真拡大]
Rocket Labは日本時間2026年11月3日午前1時41分、QPS研究所の小型SAR衛星QPS-SAR20号機「ワダツミ-Ⅱ」を搭載したElectronロケットを打ち上げた。同社の集計でElectron通算99回目、2026年の20回目のミッションとなり、通算100回まであと1回となった。
ニュージーランド・マヒア半島のLaunch Complex 1から飛行したミッションは「The Sea God Surveys(海の神が見渡す)」。QPS研究所は衛星の分離と初交信の成功を発表した。
■「ワダツミ-Ⅱ」を高度575kmの軌道へ
今回の打ち上げは、Rocket LabによるQPS研究所向けの10回目のミッションだ。衛星は高度575km、軌道傾斜角42度の低軌道に投入された。Rocket Labによると、アジア太平洋地域での再観測頻度を高めるために調整した軌道である。
QPS研究所によると、「ワダツミ-Ⅱ」は打ち上げから約50分後にロケットから分離し、その約30分後に初交信に成功した。各機器が正常に作動し、衛星の健康状態が良好であることを確認した。今後は調整を続け、アンテナの展開と初画像の取得を目指す。
20号機は、10号機「ワダツミ-Ⅰ」と同じ軌道面に加わる衛星である。衛星番号は打ち上げ契約手続きの順に付けられており、今回は16・17・19号機より先に打ち上げられた。
福岡市に拠点を置くQPS研究所は、合成開口レーダー(SAR)を搭載した小型衛星による観測網を構築している。ログミーファイナンスが公開した決算説明会の記録によると、同社グループは2026年10月14日時点で、初期運用段階を含め11機を軌道上で運用していた。
■100kg級の衛星で高精細なレーダー観測
QPS-SARの小型化を支えるのが、軽量で折り畳める大型アンテナだ。QPS研究所によると、直径3.6mのアンテナを、打ち上げ時には直径約80cm、高さ約15cmに収納できる。軌道上ではばねの力で展開し、100kg級の衛星でレーダー観測を行う。
同社の公開仕様では、使用する電波は9.6GHzのXバンドで、ピーク放射電力は2000Wだ。衛星から地表へ電波を照射し、戻ってきた反射波を受信する。太陽光を利用する光学式の観測と異なり、夜間や雲に覆われた地域でも地表の情報を取得できる。
合成開口処理では、衛星の移動に伴って異なる位置で受信した信号を組み合わせ、長いアンテナに相当する働きを得る。これにより、小さな実アンテナでも衛星の進行方向に高い分解能を実現する。SARの原理は、1951年にGoodyearのカール・ワイリーが提案した考え方にさかのぼる。
QPS研究所が示すスポットライトモードの分解能は0.46m×0.46m、撮影範囲は7km×7kmである。これらは高度525km、観測方向の鉛直からの角度30度、帯域幅600MHzという条件での解析値だ。広い範囲を撮るストリップマップモードでは、分解能1.8m×0.46m、撮影範囲14km×7kmとしている。
災害時の画像提供実績もある。QPS研究所は2024年の能登半島地震後、珠洲市や輪島市を観測した画像を公開した。輪島市の画像には日本時間1月5日午前1時10分に撮影したものがあり、夜間にも観測できるSARの特徴を示している。
■専用打ち上げで観測網の軌道を整える
衛星コンステレーションは、多数の衛星を組み合わせて一つの観測網として働かせる仕組みだ。特定地域を観測できる頻度は、衛星数に加え、高度、軌道傾斜角、軌道面の向き、各衛星の配置、センサーの観測範囲によって変わる。
軌道面の向きを表す要素の一つが昇交点赤経(RAAN)である。衛星が赤道面を南から北へ横切る地点の方向を示す角度で、軌道面を分散させて観測機会を確保する設計に関わる。同じ軌道面でも、衛星をどの位置に配置するかが観測の時間間隔に影響する。
Rocket Labは、QPS研究所が各ミッションの単独顧客となることで、相乗り打ち上げに比べて日程や軌道などを選びやすくなると説明している。専用打ち上げは、観測網の設計に合わせた軌道への投入を進める手段となる。
同社創業者兼CEOのピーター・ベック氏は2025年2月の契約発表で、「要望に合わせたスケジュールで正確にコンステレーションを構築することがElectronの強みだ」と述べた。今回の衛星分離には、Rocket Lab製のMotorized Lightbandが使われた。同社は打ち上げと衛星分離機構の双方を提供している。
■平均10分間隔の準リアルタイム観測を目指す
QPS研究所が目指すのは、世界中のほぼどこでも、特定地域を平均10分間隔で観測できる「準リアルタイムデータ提供サービス」だ。衛星を増やし、適切に配置することで観測機会を増やし、地表の変化をより短い間隔で捉える構想である。
同社は2028年5月末までに24機体制を構築し、2030年にはさらに機数を増やす方針を示している。従来の36機構想は、12の軌道面に各3機を配置するものだった。現在は、独自の傾斜軌道を軸に36機を超える観測網への拡張を進めるとしている。
観測間隔が短くなれば、災害発生後の状況把握や、船舶など移動する対象の変化を追う機会が増える。インフラや土地利用を継続的に調べる用途に加え、短時間で状況が変わる対象への対応が、衛星網を拡充する狙いとなる。
小型化による費用削減も、多数の衛星を配備するための柱だ。QPS研究所は、QPS-SARについて従来のSAR衛星の20分の1の質量、100分の1のコストを実現したと説明する。高精細な撮影能力と、衛星を増やして再観測頻度を高める計画を組み合わせている。
■拡大するSAR市場と日本企業の打ち上げ需要
調査会社Fortune Business Insightsは、世界の地球観測市場を2026年に76億8000万ドル(約1兆2100億円)と推計し、2034年には145億5000万ドル(約2兆3000億円)へ拡大すると予測している。これはSARだけでなく、地球観測全体を対象とした市場予測である。
商用SAR衛星網では、フィンランドのICEYEが世界最大規模のコンステレーションを運用すると公表している。米Capella Spaceは第3世代のAcadia衛星を配備している。米Umbraも高精細画像を提供しており、NASAは同社の画像について最高25cmの分解能を紹介している。
日本ではSynspectiveも、SAR衛星網の構築にElectronを利用する。同社とRocket Labは2026年9月末に20回分の追加打ち上げ契約を締結し、両社の契約累計は47回となった。Rocket Labは、この20回分の契約をElectron史上最大の商業打ち上げ契約としている。
QPS研究所も契約を積み重ねてきた。2024年の複数回契約に続き、2025年2月と10月、2026年4月と7月に追加契約が発表された。2026年7月の3回分の契約で累計18回となり、その後の8月の2回と今回を経て、契約済みの打ち上げは8回残る計算だ。
■通算100回へ、次もQPS研究所の衛星
Electronは2017年5月に初試験飛行を行い、2018年11月に最初の商業ミッションを実施した。Rocket Labは現在、専用小型ロケットで世界最多の打ち上げ実績を持つと説明している。今回の前には、10月の「We're Not Hawking Around」でHawkEye 360のHAWK衛星3機を軌道に投入した。
Rocket Labの2025年の年間打ち上げ実績は、Electronの軌道打ち上げ18回と、派生型HASTEの弾道飛行3回を合わせた21回だった。同社集計で2026年は今回が20回目となり、さらに2回実施すれば前年の年間実績を上回る。
QPS研究所は2005年、九州大学の名誉教授らによって設立された。現在の社長、大西俊輔氏は2013年に入社し、2014年に社長へ就任した。Rocket Labとの最初の打ち上げは2023年12月の「The Moon God Awakens」で、QPS-SAR5号機「ツクヨミ-Ⅰ」を軌道へ運んだ。
打ち上げを支えるLaunch Complex 1には、LC-1AとLC-1Bの二つの発射台がある。Rocket Labは米バージニア州ウォロップス島でもLaunch Complex 2を運用し、Electronのほか、極超音速技術の試験向けに開発したHASTEを飛行させている。同社はElectronの100号機が工場を出荷されたことも公表した。
次の「The Mountain God Rises(山の神が昇る)」では、QPS-SAR19号機「ヤマツミ-Ⅱ」を打ち上げる。11月3日時点の予定は11月14日以降で、Rocket Labは通算100回目のElectronミッションと位置付けている。19号機は11号機「ヤマツミ-Ⅰ」と同じ軌道面に投入され、QPS研究所の観測網をさらに拡充する予定だ。
元記事: Rocket Lab Targets 100th Electron Launch After iQPS Radar Mission Monday
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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